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第三十二話「ついに集結! 伝説の戦士」・2




 それから互いの自己紹介が終わり、月牙と斑希の提案により伝説の戦士の団結式を行う事を踏まえて友好関係を築こうと、今日一日は鎧一族の砦近くにある小さな町――『ディトゥナーヴ』に留まることにした。


「よっ、と……木材はこれくらいでいいよな?」


「はい、十分です。あっ、お兄ちゃん。それはこっちに置いてください……」


「かしこまりました」


 植物と対話する力を持つ『草壁(くさかべ) 葡豊(ぽぽ)』の指示の元、頭に火を灯す『炎耀燐(えんようりん) 乱火(らか)』がキャンプの焚き火に使用する木材の置き場所の確認を行い、それに葡豊の従兄である冥霊寺の住職の『大森(おおもり) 癒宇(ゆう)』も加勢する。


「うぉおおおりゃッ!」


「おうおう、精が出るなぁ~! おれも手伝おう!」


「いや、こいつはオレ一人で大丈夫だ。兄貴は他の場所を頼む。力仕事で男手が足りないんだとよ」


 薪割りを行う短髪の青年、『金井(かない) 鋼鉄(めたる)』にそう頼まれ、従兄である『豪地(ごうち) 彪岩(ひょうが)』は渋々了解した。

 その一方で、茶髪の少年『崖淵(がけぶち) 砕狼(がろう)』がスコップ型の武器で巨大な穴を掘り進めていた。なぜこんな事をしているのかと言うと――。


「これは何をしてるの?」


「ふぃー。あ? こいつは温泉を掘ってんのさ! 兄貴にだけは負けられねぇからな! 俺も活躍しとかねぇと! それに、結構いい運動になるんだよな、これが!」


「あはは、わたしにはよくわかんないや……」


 会話が終わり、再び掘り始める砕狼を眺めつつ、頬をかきながらその場を離れるボブヘアーの少女、『石吹(いしぶき) 砂唯(さゆ)』。


「モグモグモグ……」


「はぁ~、あのね……さっきから聞いてんのあんた! ちょっと、無視しないでよ! コラッ!」


「あん、オレか?」


「そうよ、あんたよ! よくもまぁ私を無視し続けてくれたわね! って、それはいいとして……。少しは準備を手伝いなさいよ! 斑希さん達だって困ってるでしょ?」


 斑希を労わりながらそう諭す白衣姿の金髪少女、『鳴崎(なるさき) 雷落(らいら)』。そのすぐ後ろには、いつも明るいムードメーカーの光属性戦士である『明見(あけみ) 光蘭(こうらん)』がいる。


「お姉ちゃん、ひさめお兄さんには言っても効果ないと思うよ? 代わりにせつらちゃんに頼もう?」


「そうね、その方が早いかも……」


 義理の妹ということになっている光蘭にそう提案され、なるほどと顎に手をやり当人と話そうとした雷落は、未だに沈黙のまま暴食している『氷威(ひょうい) 氷雨(ひさめ)』の義理の妹の『氷威(ひょうい) 雪羅(せつら)』を目で探した。すると、割と近くに雪羅らしき後ろ姿を発見した。


「あっ、雪羅ー! ちょっと来てくれない?」


「へ? な、何ですかぁー?」


 体質が低体温のため、マフラーや手袋などの防寒具を常備している雪羅。そんな彼女は少々小走りでこちらへと走ってきた。


「ねぇ、あなたのお兄ちゃんがさ……私達がせこせこ働いてるのに、手伝ってくれないのよ? 酷いと思わない? だからその、何とか手伝ってもらえるように頼んでもらえないかな?」


「うん、分かった!」


 あっさりと了承してくれる雪羅に、雷落と光蘭は目を見合わせた。

 雪羅はスタスタと義兄の氷雨の元へ近づいていく。


「ン? 何だゆきじゃねぇか。どうかしたのか?」


 お菓子を頬張り一言呟く氷雨。その菓子クズがポロポロとこぼれ落ち、地面を汚していた。その情けない光景を見た雪羅は文字通りぷーっと頬を真っ赤に膨らませ氷雨に文句を一言。


「もうっ、お兄ちゃん! ちゃんと仕事手伝わなきゃダメだよ! どうしてそんな自分勝手なことばっかするの? ゆき、そんなお兄ちゃん嫌いだよ?」


「ぐはッ! き、嫌い……だと? な、何故だ……り、理由は何なんだ!?」


 あくまでも自分は悪気があってやっているつもりがない氷雨は、可愛い可愛い義理の妹が怒って自分を嫌っている理由が分からず、傍から見ても誰もがああこいつ焦ってるな、と分かる程のリアクションをとっていた。


「ゆきは真面目なお兄ちゃんが好きなの。ちゃんとこーらんちゃん達の仕事手伝わなかったらお兄ちゃんのこと、本当に嫌いになっちゃうから」


「うぐぅッ! わ、分かった! 手伝う、手伝うからオレを嫌いにならないでくれェ!」


「うん、わかった。じゃあお仕事頑張ってね、お兄ちゃん?」


 氷雨が雪羅の両腕をガシリと掴みそう懇願すると、それを聞いた雪羅は納得したように大きく頷き満面の笑みを見せた。それを見た氷雨は、歓喜と安堵の表情を浮かべ、まるで昇天して天国へ向かっている様な顔つきだった。


「ありがとう、雪羅。おかげで助かったわ! さ、氷雨……早く仕事手伝って?」


「けッ、しょーがねぇな。ドレだよ? ちゃっちゃと終わらせるぜ!」


 腕まくりなんかしてやる気十分と妹の手前アピールする氷雨。しかし、肝心の雪羅はそんなこと気にも留めておらず、歳が近い光蘭と仲良く談笑していた。


「やっぱり子供は遊んでるのが一番だな……」


 そう言って相棒ヘルファイア・エクスプレスの車窓から伝説の戦士を見下ろしているのは、メンバー内で最年長の『炎耀燐(えんようりん) 妖燕(ようえん)』。名字からも分かる通り、乱火とは従兄弟である。

 そんな妖燕は何をしているかというと、相棒のメンテナンスを今しがた終わらせ、その休憩がてら仲間の様子を確認していたのだ。斑希もそこそこ頼りにしていて、仲間の大半からは親しみを込めて“おやかた”と呼ばれている。その親方という呼び名も元々は従兄弟の乱火に呼ばれたことが発端。


「ふぅ……問題はやはりあの二人、龍族と竜族だな。神族の関係者だけあって他のやつらに打ち解けきれてない。やはり、まだ抵抗があるのかもしれんな」


 斑希がその二人を仲間にすると言っていた時からこの事態を危惧していた妖燕は、出来ることならば自分の杞憂で終わって欲しいと思っていたが、その懇願も虚しく二人は最悪の事態に直面していた。


「はぁ……あのお嬢ちゃん、どうするつもりかね……」


 頬杖をつき嘆息した妖燕は、ふと斑希の事を心配した。自分よりも若いのにこれほどまでに重大な責任を持っているのは大変なのだろうと、密かに妖燕も理解しているのだ。そのため、人柄の良い妖燕は協力せずにはいられなかった。


「ん? ありゃ――」


 ふと視野に映った光景に視線を注げば、そこには妖燕の話題になっていた龍族竜族の二人が、あろうことか『赤星(あかぼし) (けい)』と親しげに会話しているのが見えた。


「俺の目の錯覚か? いや、違う。ありゃ間違いなく星の小僧にあの双子龍だ。珍しいこともあるもんだなぁ……」


 感心するように腕組をする妖燕。ちなみに妖燕の言う星の小僧とは慧のこと、双子龍というのは龍族の『鱗堂(りんどう) 聖龍(せいりゅう)』と竜族の『鱗堂(りんどう) 俊龍(しゅんりゅう)』を表している。このように妖燕は仲間を何かと別の言葉に例えることが多い。

 そしてそれから数時間が過ぎ、日は陰り空には星々が煌きだしていた。すると、ふとその星空を眺めながら斑希が月牙に言った。


「ねえ月牙。私達……またこうして会えたわよね?」


「ん? ああ、そうだな。だが、それがどうかしたのか?」


「また、会えるかしら?」


 ふと疑問符を浮かべる月牙に斑希は続ける。


「私、怖いのよ。だってこれからついに敵の親玉と戦うわけじゃない? 今までだって幾度も危機を乗り越えてきたけれど、ここから先でもそれが通用するか分からない。だから……私、不安で――」


「心配すんな。お前には俺や仲間がいるだろ? 仲間を信じるんだ! 必ず三十一人全員で敵に打ち勝ち、この国の平和を取り戻そうぜ?」


 体を震わせる斑希に何を感じたのか、月牙はそっと斑希の肩を自身の方に抱き寄せて抱擁する。その温もりに少々安心感を覚えたのか、斑希は口元に柔らかい笑みを見せていた。


「ヒューヒュー、お二人さん熱いねぇ~。これじゃあ俺たちが入るのは野暮ってもんだな」


「けっ、これから戦いだってのに色恋なんかに手ぇ出してんじゃねぇよ!」


 そう言って背後から冷やかしの声をかけてきたのは、メンバー内で最年長である妖燕と珍しいコンビで鋼鉄球を自由自在に操る鋼鉄だった。月牙と斑希がやけに親しくそして何やらいい雰囲気を醸し出していたのを少し離れた所で見ていた妖燕は斑希に一つ話さなければならない事があり、一方で鋼鉄は今後の戦いで少し気になる事がありここへ来た次第であった。


「お嬢ちゃん、ちょっといいか?」


「は、はい……じゃあね、月牙」


「あ、ああ」


「悪いな、坊主。ちょっと借りるぞ?」


 斑希の肩に手を回し半ば強引に体を引き寄せる妖燕に少々イラつく月牙だったが、返す言葉が見つからずそのまま二人の背中を見るしか出来なかった。


「……。あっ、そうだ。で、お前は俺に用があるんだっけか?」


「おう、そういやよ……これからの戦いでさらにツエーやつと戦うんだろ?」


 腕組をしてそう尋ねる鋼鉄に、月牙は肯定の頷きをする。すると、それを確認した鋼鉄が続けた。


「今後の戦い、作戦はもう決まってんのか?」


「いや、まだ相手の出方がわからないからな……。でも、何でまた俺に? お前は元々斑希が仲間にしたメンバーなんだから、あいつに相談すりゃあいいのに」


 少し訝しげに首を傾げる月牙に鼻で笑った鋼鉄が口を開く。


「そりゃお前、あいつが女でお前が男だからだよ。オレは女から指図なんか受けたくねぇ」


「おいおい、そんなんでよく今まで斑希についてたな」


 斑希も厄介なやつをメンバーに迎えたものだ、と同情する月牙。


「しょうがねぇだろ、あいつについとかねぇと先へ進めねぇからよ!」


 仲間になっていた理由も単純に最もらしい理由を用いた利用そのものだった。これでは少々斑希が居た堪れないと想いながら、月牙は作戦について少しだけ考えていた事を鋼鉄に話し始めた。


「まずはこれから戦う相手の把握だ。俺たちが戦わないといけない相手、それはまず鎧一族だ! これをまず念頭に置いておかないとな。それから次に、その一族に力を貸してる謂わば協力体制状態にある科学秘密結社クロノスの幹部達だ。こいつらを倒すにも相当骨が折れると思うんだ」


「鎧一族は確かに大変そうだが、そのクロノスはそうでもなくねぇか? 脅威になりそうなのはたかだか発明品……それも壊しちまえば意味がなくなる。それなのに危険視するのか?」


 確かに一般的に見たらそうなんだろうが、無属性者のクロノスの人間に対して自分達有属性者の伝説の戦士の方が強いことは明白。だが、相手の発明品の威力の恐ろしさ。それは誰よりも鋼鉄がわかっているはずだった。


「お前自身がその身で体験しただろ、奴らの恐ろしさを。どうだったんだよ? 実際、俺たちの方では鎧一族のメンツと戦ったが、クロノスのメンツとは戦うどころか顔すら見てないからな」


「そういやそうだったな。見た目はそうでもないんだが、実際戦ってみると相当厄介な相手ばかりだ。特にリーダーのレイヴォルって男は要注意だな。何を考えてるかよく分からない人物で、何よりも仲間にも時折不審がられてるらしいからな」


 珍しく色んな情報を与えてくれる鋼鉄に、月牙は一つの質問をした。


「ところで、そんな情報どこから得たんだ?」


「ああ、あの科学者娘だ」


 科学者娘とは雷落のことである。確かに雷落ならばメンバー内では誰よりもクロノスについて情報を持っているはずだ。しかし、それでも上層部と下層部では得られる情報にも限りがある。幹部クラスとなると恐らく上層部か、それ以上。それに対して雷落はただの下っ端の研究員の一人でしかない。珍しい事といったら髪の毛の色が金髪であることくらい。


「しかし、よく教えてくれたなぁ。結構気難しそうなタイプだと思ったんだが」


「ああ、修行の際にちょっとな……」


「そういや、斑希達に修行をつけてくれたんだって? サンキューな」


 交流の際に色々と互いに情報を交わしあった双方。その際に鋼鉄から以前そんな話をちょっとだけ聴いていたのだ。なので、ここで詳しい話を聞いておこうと思った月牙はその話題を振った。

というわけで、互いに自己紹介しあい仲を深める月牙チームと斑希チームですが、ここで敵側の情報の交換です。んでもって作戦を考えるわけですが、その途中で月牙は鋼鉄と修行の話をして光蘭の話になるわけです。

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