『――Immortalgirl・Metntalbreak――』
注:地の文がほぼ平仮名なので大変読みにくいです。あらかじめご了承ください。
ひめはまっくらなばしょをあるいていた。あいするひとといっしょに。なまえは“すずか”というらしい。このひととてをつないでいるとこころがやすらぐ。あんしんできる。
でも、それだけじゃない。なにかべつの、むねのあたりにからんでくるふしぎなおもいが、からだをポカポカさせていた。ひめはまだうまれたばかりでちしきがとぼしいためロクなことばがいえないけど、これだけははっきりとわかる。
ひめは“すずか”がすきだということだ。でも、いまのすずかはふしぎといやなかんじがした。てをひっぱってそのばにとどまろうとしても、すずかがひめのてをひっぱるため、とまることができない。
まるでどこかにつれていかれてるようなかんかく。そーいえば、あのとき、ふしぎなとうめいなつつからでたときにわかれたレイヴォルが、なんだかこわいかおをしていた。まるで、うまくいかなかったことにムカムカしているような……そんなかんじ。
ひめは、しばらくすずかにひっぱられてどこかひろいばしょにでた。そこは、いままでとちがってすこしひらけたばしょで、しゅういがまっくら――というよりかは、うすぐらいくらいのあかるさになった。
そのちゅーしんふきんにたって、すずかがたちどまる。ひめもつられてそのばにたちどまった。でも、どーしてこんなまんなかでとまるひつよーがあるんだろ?
ふしぎなおもい。あたまのなかがグルグルしてちんぷんかんぷんなじょーたい。
そーしていると、すずかがくちをひらいた。
「ここで待ってて」
そーいってすずかは、ひめのてをはなした。
――いやだ! こんなうすぐらくてぶきみなトコにいたくない!! ひとりなんていやだよ!!
ひめのこころはそれだけでいっぱいになり、おもわず、すずかのあしにとびついてうごけないようにした。
「お願い、聞き分けて妃愛?」
すずかはひめとおなじしせんにあわせるようにそのばにしゃがんで、あたまをナデナデしてくれる。ココロがポカポカする。でも、いまはそれよりもふあんなおもいのほーがつよかった。
「いやだよぅ、すずか」
「……ごめんね?」
「え?」
ちいさなこえでなにかをつぶやいたすずか。でも、それがひめにはうまくききとれなかった。もーいちど、いってほしい。でも、いってくれない。ひめはどーしてもはなれたくなかった。しかし、そーするとすずかはきゅーにさっきまでのあかるいえがおをけして、つめたいかおになると、ひめのてをごーいんにふりはらい、そのばにスックとたちあがると、はやあしでそのばからかけだした。
「ま、まって、すずかっ!!」
ひめはひっしについていこうとした。みどりいろのえきたいからでて、すずかみたいにぬのをきてなかったから、レイヴォルにもらった“はくい”というものをきていた。でも、それでもどこからかふいてくるかぜが、ひめのいろんなところをすりぬけていくため、とてもさむかった。さらにひめは、しんちょーがたりないためにひきずってしまうはくいにあしをつまづかせ、そのばでコケてしまった。
「す――」
すずかはとまってはくれなかった。このばしょをあんないしてくれるといって、すぐさまそのばにコケたひめをやさしくなきやませてくれた、あのココロやさしいすずかのすがたは、どこにもない。
――ココロが、いたい。これは、なに? ちしきのすくないひめには、わからなかった。ひとつわかるのは、こきゅーができないくらいクルシイことだった。これは、哀しい? 悲しい? わからない。でも、それをはきだそうとすると、目からあついなにかが、ひめのほっぺをながれた。口もとにまでながれてきたそれをなめると、すこし、しょっぱかった。
――それは涙だ。
――あのオトコ――レイヴォルのこえ!?
とつぜんきこえてきたテレパシーに、ひめはふりかえる。そこには、はくいに体をつつんだ、レイヴォルがたっていた。顔はよくみえないけど、なんだか、わらっているようにみえる。ひめは、ふしぎでいっぱいだった。いったいなにが、ひめとすずかのあいだにおこったのか。でも、このあとすぐ、ひめはわかることになる。あらゆるちしき、カンジから、コトバまですべてのジョーシキなどの、それらすべてを、えることになるのだ。
ジャラジャララララララ! ガッガッガッガッガッガッガ……ヒュルルル、ガダンッ!!! ビュンビュンビュン!! ガチン! ガチン! ガチン!
ガチン!
ひめのしゅーいにえんをかくようにおちてくるテツのカゴ――。さらに、なにかがうえにもちあげられて、いっきにひめをとりかこんでにげられないようにするかのようにおちてくるテツのカゴ。するとこんどは、みっつのくろいかわがひめのちっちゃなカラダをギュウギュウしめつけてきた。
ひめのカラダはすごくかるいので、そのままかわにひっぱられて、カゴのちゅーしんのトゲトゲがついたはしらに、しばりつけられた。手足はうごく。トゲトゲがささりはしないものの、背中やふとももにチクチクとあたってイタイ。もうイタイのはいやだ。でも、この“いたい”はすずかとおわかれしたときの“いたい”とはちがった。
しばらくして、ついにはひめのほそい手足も、テツのちいさなつつにからまれてうごかせなくなった。
レイヴォルは、そのすべてをさっきのえみをうかべたまま、ながめていた。
「レイヴォル……これはなに? なんで、こんなことをするの? すずかは、どこにいったの?」
「くく……鈴華か? ここにいるぞ?」
そーいってレイヴォルは、なにかをひっぱる。さっきうえからおちてきたテツのヒモよりすこしちいさい。それにひっぱられて、すずかがすこしくびのあたりをくるしそうにしながらあらわれる。
「すずかっ!!」
ひめは、なんとかしてうごこうとするけど、カラダじゅーがイタくてうごけない。
「……ひ、め」
かろーじてちいさくてヨワヨワしいこえだったけど、たしかにすずかのこえがきこえた。これだけで、ひめはまだがんばれるきがした。
「ほぅ? 末恐ろしいやつだ。この首輪の威力に対抗するとは。だが――」
ビリリ……バチバチバチチチッ!!!
「ひぐぅうぅぅぅうっ!?」
あおいヒカリがうすぐらいへやをあかるくてらしだす。そのヒカリは、すずかのカラダふきんをヒカると、きえた。とーめいのつつからでたときにもみた。たしか、でんげきというやつだ。
「やめて! すずかにヒドイことしないで!!」
「こいつは傑作だな。本当にお前は優しい心を持って産まれたようだ。やはりこの手を使うしかなくなったか。にしても、また随分な信頼感を抱いたものだ。こいつは本当の母親じゃないのにな?」
「え?」
「そう言っただろう? お前の母親はまだお前に会える状態ではない――とな。お前はこいつに母親の姿を映して見ていたかもしれないが」
ひめのココロのナカで、なにかがこみあげてくるのをかんじた。ココロのおくそこからイカリがこみあげてくる。これがニクシミというものなのだろうか? でも、いまのひめは、ゼッタイにレイヴォルをゆるさない。それだけはたしかだった。なみだというものをりょーほうの目からながしながら、ひめはさけぶ。
「レイヴォル、あなたをゆるさないっ! すずかをはなして!! いますぐっ!!」
「くく、それは無理な相談だ。この女は重要なキーアイテムだからな。お前も同様だ。だからこそ、お前を用意したのさ。第一、こいつはお前を生み出しただけだぞ? 本当の母親ではないと言っているだろう。なぜそこまで心入れする?」
「そんなのどうでもいい! すずかは、ひめのことをだいじにしてくれた! ホンのすこしのあいだだったけど、わかる! ひめは、すずかのそのやさしいココロをうけついだの!!」
と、そのときだった。ココロのもっとおくから、なにかあかるいヒカリをかんじた。ふしぎなかんじのするななつのヒカリ。それぞれがことなるいろをしていて、それぞれあたたかみや感じるものがちがった。
ひめは、それをつよくココロのなかでおもいうかべた。すると、目のまえにいたレイヴォルが、目をみひらいてひめをみていた。どうかしたんだろうか?
そーおもっていると、レイヴォルが口をひらく。
「ま、まさか……七力を使えるようになったのか!?」
――しちりき。これはしちりきっていうんだ。
左右をみて、ひめのしゅーいをかいてんしているななつのヒカリのしょーたいがそれなのだとりかいする。
「すずかをはなさないと、これをつかってあなたをやっつけるよ?」
「ま、まて、はやまるな! はなせばわかる――とでもいうとおもったか?」
「え?」
てっきり、これですずかをたすけられるとおもっていた。ひめは、かんぜんにゆだんしていたのだ。どーしてこんな大きなテツのカゴにひめがとらわれ、その上レイヴォルは、そのナカにはいってこないのか……。よくかんがえれば、わかりやすいこたえだった。
ビチッ……ビリリ。バチバチ、ビシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
「きゃぁああああああぁぁあぁぁああああぁああああああああっ!!!!!!?」」
すさまじいものが、ひめのカラダをながれた。カラダがふるえて、チカラがはいらない。ぜんしんからチカラがぬけていくかんじ。いしきがとおのき、目のまえにうつるえいぞーがボヤける。しかし、それをゆるさないかのように、ふたたびそのあおじろいヒカリが、ひめをおそった。
バチッ……ビリ、ビシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!
「ぐぁあっ、アガッ……うぁああぁあああああああっ!!!」
ヒドイいたみ。きをうしないたくても、それをゆるさないあおじろいヒカリ。すると、ぼぉーっとするいしきのナカで、レイヴォルがひめにかたりかけてきた。
「お前の持つその心は、俺たちにとってあまりにも邪魔な物なんだ。だから、取り除かせてもらう」
「こ、ココロを……と、とりのぞ――く?」
口もふるえてうまくしゃべることができない。レイヴォルのいうことも、よくわからなかった。ただわかるのは、いまのひめには、すずかをたすけることはできないということだった。しちりきとかいうのもすがたをけして、ひめのまわりにはなにもない。ただいまは、ひめをしばりつけるこのくろいかわと、手足をうごかすことをゆるさない、とてもつめたいヒンヤリとしたきんぞくのわっかだけが、ひめにまとわりついていた。
「さてと……時間がない。あの計画は迅速かつ速やかに行わなければならない! ゴルキス、準備は?」
「うむ、完了している。いつでも命令してくれさえすれば、儂がこのレバーを下げることは造作もない」
「よし、ヴィンセント……電圧は最高になっているな?」
「は、はいッス! 電圧は最高の数値を示してるッス。これならいつでもいけるッスよ?」
きょだいなそーちのいちぶにとりつけられたすーちをしめすキカイをみてノイズ=ヴィンセントがへんじをする。
「……さらばだ妃愛。この『大黒籠鉄檻回転台』別名『心崩壊別離装置』……まぁ我々は『精神崩壊』と呼んでいるが……これでお前の心を葬ってやる。だが安心しろ、心を破壊するまではしない。既に一度試して後悔している部分があるのでな。まぁせいぜい心を失って暴れ回るがいい。お前の持つ力の真の使い方を学べば、俺たちは確実に神を超越する新たな者へと変貌を遂げられるッ!」
「そ……そんなものに、なりたくなんか――」
ビシャアァアアアアアンッ!!!
「ぐぁあああぁあッ……あがァアアァア!!?」
とてもクルシイ。さんどめのヒカリで、もうこえがでない。このキモチをつたえられない。……すずか、さいごに、これだけはいいたかった。
――ありがとう。
それだけのこして、ひめのいしきはとおざかり、目のまえがまっくらになった。
「おやおや、どうやら失神してしまったようだよ?」
「おっと、少しばかりやりすぎたか? だがその方が都合がいい。オルグロス、さがっていろ。ゴルキス、出番だ!!」
「ようやく、命令か」
ガゴンッ!! ガッタン……ガッガッガッガッガ!! ビュンビュンビュン
ビュン!!
おかしい。いしきはとうになくなったはずなのに、なぜかレイヴォルたちの声がきこえる。なんだろう、カラダがふりまわされるかんじ……。きぶんがわるくなってきた。どうしよう。でも、うごけない。
すると、コトバにならないイタミが、ゲキツウが、さっきとはくらべものにならないくらいカラダのナカにながれこんできた。うちがわからこうげきされてるかんじ。とてつもなくイタイ! とくに胸のあたりがズキズキする。むりやり何かをひきはがされるような――。
「ぐっ……ガッ……あぁ、あァあああぁあああ、あがあぁああぁああっ!!!」
ゲキツウが胸から全身へとつたわる。手足の指先までとどくこのかんかくは、きをぬけばにどめのきぜつをひきおこしそうなものだった。
「……うっ」
ひめはもうゲンカイにあった。なにかをぬきとられて、ポッカリあながあいたかんかく。なんだろう、なにか暖かいものがひきぬかれたようなかんじ。これが、めんたる・ぶれいく? でも、カラダはわりとかるくかんじる。
ココロがなくなったせいだろうか? でも、どーじにひめの頭には、激しい頭痛がしていた。メンタル・ブレイクとどうじに、代償であるかのように多大な知識をうめこまれたのだ。これで少しは、ましな言葉が話せるだろう。
でも、同時に心を抜かれて感情は失くしたはずなのに、まだ自分の内部を何か黒い物が蠢いていた。強いて言うなら、負の感情だ。怒り、悲しみ、憎しみ。目の前にいる白衣を身にまとった男たちへの激しい殺意。自分でも怖いくらい、妃愛はその感情に飲み込まれていた。
しかし、既の所でなんとかそれを抑えることが出来た。すずかを視界に捉えたからだ。何故か鈴華を見た瞬間、あらゆる感情の中にポツンとはぐれた感情があった。これは多分……そう、哀しみだ。妃愛と同様、たくさんの電撃攻撃を己の体に受け続けてきたのか、すずかの体は服を含めてボロボロの状態だった。あれと同じく精神も限界だろう。それなのに、すずかは妃愛を助けてくれた。優しく接してくれた。なぜか心を失くしても、この思いだけは失くせなかった。それが、妃愛には不思議に感じられた。
「……れ、いヴぉ……る」
まだ舌が痺れて呂律が回らない。でも、それも少し時間が経てば治るだろう。それよりも今は、この状況の打開策を考えることだ。その中で妃愛は、レイヴォルは馬鹿ではないのかと内心で罵った。というのも、妃愛は先程の精神崩壊と同時に知識授与を受けたために様々なパターンを脳内で一瞬の内にシミュレーションし、どの作戦が目の前の男たちに通じるかを確認していた。まるで、妃愛自身が一つのスーパーコンピュータになった様なものだ。
そして、妃愛はまだ僅かながらに、本当に米粒程度に感情を残していた。でも、それを相手に勘ぐられれば、それこそ終わりのようなものだった。だって、感情がなくなればそれは、自我がなくなるのと同様に、妃愛はレイヴォルのただの操り人形――マリオネットになるのだから。
それだけはどうしても我慢ならない。ただでさえ妃愛の大事な人を傷つけたんだ。これ以上被害を出さないためにも、この男の言いなりになるわけにはいかない。
「どうした、妃愛。そんな所でぼーっとしてないで、今持っているお前の力を全て見せてみろ! その体内に宿した膨大な魔力をこの場で使って見せろ!!」
命令される筋合いはない。でも、逆らえばレイヴォルが片手に持っている鎖の先にあるすずかの首輪が電気を流し、再びすずかを苦しめることになる。それだけは避けたい。屈辱的ではあるが、妃愛はそれを相手に悟られないためにもこれからは脱出の機会を窺うまでの間、感情を潜めることに決めた。
「言われなくても……その、つもりっ!!」
妃愛は怒りを魔力に乗せて目の前にいるレイヴォルに向けて放とうとした。しかし、そこでさっきまで抑制されていた負の感情が暴発する。
「ぐうっ!!? ぐっ、ぐぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!」
「な、何だ!?」
突然の出来事にレイヴォルも驚いているようだが、当人である妃愛も驚いていた。自分の体を操れない。このままだと負の感情に己の残った心を食い尽くされて、ただの化け物になってしまう。それだけは嫌だ。特に、側にいるすずかを巻き込みたくない。でも、妃愛の負の感情はそれを許さなかった。
ピィィィィィイイイイイイイイッ!!!
高音質の衝撃波が口の周りから生まれて真上に向けてそれを放つ。衝撃波は凄まじい威力を誇り、そのまま直進して天井やら壁やらを破壊した。妃愛を取り押さえていた拘束具もギシギシと悲鳴をあげている。そして、ついにその黒革も手錠も全て壊れ、妃愛は晴れて自由の身となった。まだ幼い女の身でありながらここまでの力を秘めているのには自分でも内心驚愕していた。でも、今はその力のおかげでこうして開放感に浸れる。と言っても、今現在妃愛の体は負の感情に乗っ取られているため、そこまで安心してはいられないが。
「許さない、全て、破壊してやるぅぅぅうっ!!!」
口からピンク色のレーザー光線を放ち、周囲にあるもの全てを破壊し尽くす。崩壊した天井から幾つもの障害物が降ってくるが、妃愛の魔力の前にはそれも意味を成さず、妃愛の真上に向けて落下してきた落石が、妃愛の周囲にいつの間にか張られた防御結界によって粉塵と化す。
「お前ら皆、ぶっ殺してやるぅぅぅっ!!!」
今の妃愛がどんな表情を浮かべているかは分からないが、恐らく目を見開き血走った双眸で、目の前にいる五人の白衣を身につけた研究者を睨みつけているだろう。その表情は鬼の形相かもしれないし、憤怒に満ち満ちているかもしれない。でも、それほどまでに妃愛の中にある負の念は強かったのだ。同様に、すずかや自分が傷つけられたのが憎かった。
「死ねぇぇえええぇえぇぇぇぇええぇええっ!!!」
妃愛が目の前にいる五人に向かってレーザー光を放とうとしたその瞬間、第三者からの攻撃を、妃愛はモロに受けた。
ピィュゥゥゥゥウウウウウウウウンッ!!! チュドォォオォオオオオオオォォオオオンッ!!!
直撃だった。しかし、妃愛は不死身の人間……神王族の二代目帝王としてこの場に生を成したのだ。今の妃愛には誰も勝つことは出来ない。それが妃愛の強みだった。そう、不死身である妃愛にはこんな普通なら即死の攻撃も、取るに足らない代物でしかないのだ。
「う……うぅぅ。じゃ、邪魔を……するなぁああああぁあああああああああっ!!!」
ピッガァァァァァァアァアアアアアッ!!!! ッドォオオオォォォォオオオオオンッ!!!
妃愛が放ったレーザー光も、見えない敵に直撃したようだった。手応えは確かに感じたからだ。でも、相手は防御結界を張ったままこちらに向けて第二波を繰り出してきていた。今度は圧縮された魔力弾だった。こちらも負けじと同等の物を生成しようと力を溜めるが、そこで邪魔が入った。そう、レイヴォルだ。この男はどこまでも妃愛の邪魔をする。本当に許しておけない。妃愛を生み出したのだって、何か自分だけが得る利益のために違いない。
「観念しろ、神崎妃愛っ!!」
カチャッ!!
ひんやりとして冷たい物が妃愛の首につけられる。そう、すずかと同様の首輪だった。先ほど得た知識で知ったが、これは『奴隷の首輪』というらしい。こんなペットの様な物をつけられるのは非常に神王族二代目王として辱められた気分だったが、どこを見てるかも分からないすずかの姿を一瞥して、チラリと視界に捉えた首輪が自分と同じものだったのを視認して、少し嬉しいという感情も芽生えた。
しかし、これではまるで自分がMのようではないかと首を激しく振った。首輪を外そうとするも外れず、だったら破壊しようと攻撃を仕掛けるが――。
バチッ!!! ビリリリリリリッ!!!
「ぐぁあっ……ガッ!! くっ、また……しても。ゆ、許さない! れ、れい……ヴォ―――」
妃愛は今度こそ失神してしまった。もうそれ以上は何も考えられなかった。ただ分かるのは、妃愛はいいようにレイヴォルに作り出され、その後もすずかが今まで強いられてきた様に、今あるこのたくさんの力を悪しきことに無理やり遣わされるのだろうということだけだった……。
――▽▲▽――
倒れた妃愛をお姫様抱っこの様に抱きかかえながら、レイヴォルは妃愛の寝顔を舌なめずりしながら見ていた。するとそこへ、鈍い足音を立てながら何者かがやってきた。
「レイヴォル、ここで何をしている?」
「おや? これはこれは、自称皇帝殿?」
「何だ、その態度は?」
「くく……何を言う。俺はいつもこうだろう?」
皮肉な笑みを浮かべて目の前にいる老いた男――オルガルトに言うレイヴォル。その手に抱かれていた幼女を目にして、オルガルトが片眉を吊り上げ問い詰める。
「何だ、その娘は?」
「ああ、これは俺のおもちゃだ」
「ふんッ、シラを切りおって! そやつは先ほど、わしのいる部屋まで波動攻撃を放ったやつであろう? 一体何を作り出した?」
鋭い洞察力にレイヴォルも思わず口篭る。しかし、ここであの計画について気取られるわけにはいかなかった。それを知っていた他の研究員が説明しようとアダムが前へ進み出た。
「じ、実はだなオルガルト帝。この娘は、ミ――鈴華姫のクローンなのだ!」
「何? この娘が? ふん、確かに七力の力を感じる……。だが、髪の毛の色が違うようだが?」
これでもまだ怪しむオルガルトに、今度はゴルキスが言う。
「クローン製作中に不慮の事故があり、この様な結果を生み出してしまいおったのだ」
「なるほど……それならば、髪の毛の色やその容姿にも説明がいくな。だが、今の波動攻撃は、巫女族及びハーフ巫女には使えぬはずだが?」
「それは七力の力の合わせ技による効果ッスよ?」
半ば無理な言い訳で何とかごまかすノイズに、オルガルトは少し目を細めて五人のクロノスメンバーを一瞥したが、これ以上問い詰めても何も出てこないと、踏ん切りをつけてその場をあとにすることにした。
「わしの城をこれ以上破壊することは許さんぞ? よいな?」
とだけ念を押して、オルガルトは踵を返してその場から姿を消した。
「な、何とか帰ったみだいだね」
ほっと安堵のため息をつくアルフレッドに、レイヴォルは言う。
「くく……あの装置は後で直す必要があるな。まぁいい、これで準備しなければならない駒は残り一つか?」
そう言ってレイヴォルは、心を失った状態の鈴華に妃愛をおぶらせてクロノスのGAUNメンバーを引き連れ、崩壊した広間を歩いて行った……。
というわけで、今回は妃愛視点でお送りしましたが、ほぼ平仮名で大変申し訳ありません。まぁ、後半からは知識を無理やり与えられたため、漢字使いまくりですが。ここからどんどん妃愛はいろんなことを覚えていきます。さらに、メッチャ強くなります。
また、今回もまたクロノスのGAUNが出てきました。精神崩壊させるための機械を使って妃愛の心を抜き取ったのですが、どうやら一部残っていたようです。そして、この一部が妃愛の強みになります。
さらに、今回覚醒して七力が目覚めました。鈴華の体を媒介にして産まれたので、七力も全部受け継ぎました。
てなわけで、最後にレイヴォルが駒はあと一つと口にしていましたが、それが誰なのかはさておき、二十九話を次やります。




