第四十一話「大切な人」・1
神力の暴走を引き起こした天垣天照は、目から光を失ったまま突貫し、オドゥルヴィアに向かって攻撃した。しかし、そんな分かりやすい攻撃をよけられないわけがなく、案の定天照の攻撃はいとも容易く躱されてしまい、その上背後に回られて純白の羽を鷲掴みにされた。
【アグゥッ!? 離セェ、離せェエエエエエッ!!!】
普段の天然っ気溢れるあの天真爛漫な天照はどこへやら。今の彼女は完全に別人と化していた。
「貴様にこのような羽はいるまい? 高みを目指すもののみが羽を持つことを許されるのだ。即ち、貴様には必要のない物……我に寄越せ」
そう言ってオドゥルヴィアは紅蓮の双眸を妖しく光らせると、力いっぱいに羽を引っ張った。片方の手を天照の肩に置き、もう片方の手で両翼一気にむしり取ろうという考えだ。
【イ、痛イッ! 離せェエェエッ!!】
悲痛な叫び声をあげて天照が暴れる。しかし、それを許さんが如くオドゥルヴィアは天照の体をうつ伏せの格好で押さえつけた。背中を足で押し起き上がれないようにする。これでもう逃げられない。そう考えると、天使とは無力なものだった。禍々しいオーラは未だに溢れ出ているものの、相手を怯えさせる他何らこれといった効果はない。触れれば体が焼け爛れて皮膚がずり落ちるなどといったこともない。
つまり、一言で言えばこけ脅しだ。
だが、ここで一つ奇跡が起きた。天照の悲鳴に颯爽と駆けつけるヒーローの如くそれはやってくる。
ドギュルッ!
何とも奇妙な音を立てて何かがめり込む。拘束されたままでいる伝説の戦士の目に映ったのは、オドゥルヴィアの顔面に一発の膝蹴りが繰り出されている光景だった。そして、それを行っている人物は、豪地彪岩だった。しかも、神力の暴走を引き起こした状態で……。まさか自分の意志で行動しているのかとも一瞬考えたが、それは違うようだった。その証拠に、彪岩はオドゥルヴィアを蹴り飛ばすと一瞬標的を見失ったかのように周囲を見渡したからだ。しかも、明らかにこちらにも敵意の眼差しを向けていた。あの感じは攻撃すれば倍返しで返すという顔だと砕狼が口にする。
しかし、どうしてまた突然神力の暴走を引き起こしたのだろうか? 知る限り、彪岩が覚醒する瞬間を誰も目撃していない。
すると、砕狼が再び声をあげた。
「もしかすると、彪兄ぃは鋼兄ぃがやられたからキレて覚醒したのかもしれねぇ」
「なるほど恨みによる覚醒か。ありえるな、今のところ暴走を引き起こすきっかけはどうやら、絆の深い関係にある人物が極度まで追い詰められるかみたいだからな。だが、そうなるとどうして凛と霧矛は神力の暴走を引き起こさないんだ?」
砕狼の言葉に一つの仮説を作り出し、そうなると一つの疑問が生まれて月牙が唸る。すると、その言葉に聞き捨てならないとばかりに凛と霧矛が声をあげた。
「ちょっと待ちなさいよ、駄犬! それだと私達に神力の暴走を引き起こしてほしいみたいじゃない! あんた、遠まわしに死ねって言ってるわけ?」
「わたしも思った。月牙さん、ひどい」
「ち、違うって! ただ疑問に思ってそう言っただけだって!」
誤解を招いてしまったようなので慌てて弁解する月牙。すると、その会話に嘆息して斑希が言った。
「ちょっとあなた達! 今はそんなことやってる場合じゃないのよ? 急いでこれから脱出しないと!」
「てか、乱火と妖燕の炎で焼きゃあいいんじゃね?」
ふとそう口にする暗冷。その言葉に当人二人はヒラメキ豆電球をピカンッ!と光らせて納得の声をあげた。
「なるほど」
「その手があったな!」
乱火と妖燕の言葉に伝説の戦士は苦笑した。
そして、二人がここぞとばかりに炎を作り出して蔓を焼く。バチバチと火花を散らせて蔓は真っ黒になり、粉状になって最後には見えなくなった。それによって他の戦士も救出された。
「よっしゃ! ようやく動ける!」
月牙が拘束されて赤くなった跡をかきながら言った。
「ええ、今度はこちらから行かせてもらうわ!」
「でも、天照さんはどうするんですか?」
葡豊がふとそんな疑問を口にする。その言葉にみんなも唸った。それに、神力の暴走を引き起こしたのは天照だけでなく彪岩もだ。前回は癒宇一人だからまだ何とかなったものの、今回は二人。もしかすると、それ以上増える可能性だってありえる。そうなる前に止めなければならないが、方法は二つしかない。
一つは魔力が尽きるまで暴れさせて自然に暴走を鎮める方法。だが、これにはデメリットがあり、魔力が尽きれば次は生命力を根こそぎ奪っていくため、死ぬ事が多い。なので、出来ればこの方法は取りたくない。
もう一つは、月牙と斑希の二人がもしもの時のためにと母親のルナーとフィーレに手渡されていた『鎮静せし神聖の鼓動』を使用することだ。これを使うと神力の暴走を引き起こした対象者を鎮めることが出来るのだ。だが、これにもデメリットがあり、使用者は長い詠唱を行うために隙を見せてしまう。そのため、それを守る人物が最低でも一人以上は必要なのだ。さらに、これには莫大な魔力を必要とする。いくら伝説の戦士が特別な力を持つ者で多大な魔力を持っていたとしてもそれは同じことで、使用したらもうその人物は戦えない。なので、慎重な選択が必要だった。例え戦力を減らしてでも仲間を助けるか、脅威となる対象――オドゥルヴィアを倒してからにするかのどちらか。
しかし、早く決めなければ敵はますます隙を与えなくなるに違いない。動きもさっきから徐々に早まってきていて、これ以上早くなられるとさすがに目で追うことができなくなる。それに、神力の暴走を引き起こしている伝説の戦士を助けることもできなくなるだろう。
「イチかバチか、やってみよう」
「やるって?」
「言い方は悪いかもしれないが、もうこれしかない。神力の暴走によって得られる極限状態の力を逆に利用するんだ」
月牙の言葉に、正気のままでいる伝説の戦士が驚愕の表情を浮かべた。
「そ、そんなことができるの?」
凛がありえないと言わんばかりの表情を浮かべて訊く。さらに、その言葉に続くように霧矛も声をあげた。
「それに、それをやったらおねえちゃん達がただじゃすまないんじゃ……?」
そこで皆も一気に表情を曇らせた。それは、この提案を全員に持ちかけた月牙も同じだった。
そう、力を借りるということは神力の暴走を引き起こした状態で戦わせるということ。自我を失った状態で魔力の使用量の限界などもロクに考えていない状態で大技などを使いまくられたりでもしたら、確実にその戦士は死んでしまうことだろう。仲間の伝説の戦士はそのことを心配していたのだ。
と、その時また一つ大きな禍々しいオーラが発生した。その方を見ると、七発の銃弾で撃ち抜かれた翡翠の体からそのオーラがジワジワと溢れ出ていた。
「な、何で!?」
「このようなことがありえるのか!?」
乱火と妖燕がこめかみから冷や汗を垂らしながら後ずさる。無理もない、翡翠は先程オドゥルヴィアの攻撃で瀕死の重傷に陥り倒れてしまったのだから。それなのになぜここで神力の暴走を引き起こしたのだろうか? 理由がいまいち分からなかった。だが、それだけでは終わらない。
「まさか、この子が暴走し始めているということは他の子も――」
そう言いかけて紫音が振り返ると、眼前に鋼鉄の姿があった。血まみれの肉体に血走った双眸を妖しく光らせる鋼鉄はその拳を紫音の顔面に向かって振りかぶった。
「くっ!?」
間一髪でその攻撃を躱す紫音。暗殺者としての防衛本能が上手く働いてくれたからよかったものの、もしあそこでしくじれば今自分の顔面は崩壊していたことだろう。なにせ、あの巨大な鉄のかたまりをぶん回すほどの豪腕の持ち主のパンチだ。ひとたまりもないことくらい想像に難くなかった。
「鋼兄ぃ!?」
そう声をあげたのは従弟である砕狼だった。驚いているのだろう。先程あんな猛攻撃を受けたのに生きていたことに。だが、生きているといってもあれではただの死に損ないの獣に過ぎない。体はボロボロで既に立てる状態ではないはず。それを無理やり動かしているのがあの神力の暴走なのだろう。
だとすると、沸々と砕狼の心の中にも闇が渦巻き始めた。こんなことにした目の前の男を――オドゥルヴィアを許せない、憎いと激しく心の中で闇を蠢かせた。だが、そこで斑希が声をあげる。
「しっかりして砕狼! 闇に呑まれてはダメよ!」
「ふ、斑希……」
危なかった。自分でも気づかぬうちに闇に囚われていたらしい。ふと見ると足元に漆黒のモヤがかかっていた。どうやら先程の感覚はこの闇のオーラのせいらしい。しかし、どこからこれが漂ってきているのか、その発生源を目をこすって確認する。
すると、遠くの森の木々が薙ぎ倒された場所付近に何やら漆黒に輝く門があり、そこの扉の隙間から真っ黒な何かが溢れ出してきているのが見えた。
「あれは、何だ?」
砕狼の言葉に他のメンバーもそちらに視線を向ける。
「漆黒の……門?」
雪羅が小首を傾げながらそう口にする。すると、月牙が少し焦燥感に狩られながら母親のルナーに訊いた。
「あれは何なんだ母さん?」
「あれはその名のとおり、漆黒の門です。大昔、ある悪しき者達を閉じ込めた門なんですが、どうやらデュオルグスはあれを破壊し中に封印されているものを解き放つのが目的だったようです」
淡々とそう説明してくれるルナー。しかし、その中身について何も知らされていない伝説の戦士はちんぷんかんぷんで頭上に疑問符を浮かべて仕方なく納得するしかなかった。
すると、隙を狙って鋼鉄と翡翠が神力の暴走を引き起こした状態で襲いかかってきた。その攻撃を慌てて躱すが、そこに向かって翡翠の銀色の銃の弾丸が直撃する。
「危ねッ!」
危うく足を打ち抜かれる所だった暗冷は、額に滲む冷や汗を腕で拭いながら目の前にいる翡翠を見た。その焦点は合っておらず、ただただ恨みなどの負の感情に包まれている。
「何とかして二人を鎮めないと、ただでさえ大怪我してるんだから集結多量で死んじゃうわ!」
斑希が目尻に涙を浮かべながら言った。もしも自分があちらの立場だった場合の事を考えてしまったのだろう。月牙はその涙声を聞いて拳を震わせてオドゥルヴィアを睨んだ。あちらもあちらで、神力の暴走を引き起こしている彪岩と天照の相手をしているが、先程までの余裕の表情は少し失われていた。さすがに分が悪いのだろうか?
しかし、こちらも緊急事態が起きていた。どうにも先程から月牙の近くにいる風浮と、凛の近くにいる霧矛と、そこからちょっと離れた所にいる靄花の様子がおかしいのだ。
不審に思った月牙はふと声をかけた。
「なぁ、お前ら大丈夫か?」
だが、声をかけても返事はなかった。その表情は明らかに何かを見据えている。視線の先を見ると、そこにはうつ伏せになったまま動かない水恋のボロボロな姿があった。それを見て納得する。
――そうか、風浮はよく水恋と話したり遊んでたしな。霧矛は水恋の従妹だし、それによく泣きじゃくってた時とかにも甘えてたって言ってたし。靄花もああは言っても結構水恋のよきライバル……みたいな感じだったからな。ショックが強いんだろうな。でも、待てよ? この感じ……何か嫌な予感が。
そう月牙が内心で思ったその時、嫌な予感は的中してしまった。
「うわぁあああああああああ!!!」
突然絶叫めいた声をあげたかと思うと、風浮が頭を抱えてその場に蹲ったのだ。それを見て、同年代である慧が慌てて駆けつける。
「だ、大丈夫? 風浮く――」
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥウッ!!!
慧が声をかけようとした刹那――巨大な旋風が風浮を中心に出現する。その強風に煽られた慧は、小柄な体のために耐えることが出来ず、そのまま後方に吹き飛ばされた。それをその場にいた俊龍と聖龍が受け止める。
「大丈夫か、赤星慧よ」
「どこか怪我はないかい?」
「う、うん……。ありがとう、ふたりとも」
慧は少しビックリしたままの表情で二人の心配する声に応えた。
一方で風浮は声を荒げ続けていた。声が枯れてしまうのではと一瞬そう心配させるくらいの絶叫。その現状は既に何度も先程から網膜に焼き付けられている。嫌が応にも――。
「くっ! まさか、風浮まで神力の暴走を」
「どうして? なんでこんなことに……」
悲壮感に打ちひしがれる斑希。横目でチラリと見やると、その瞳は涙に濡れていた。余程悲しいのだろう。今まで頑張って仲間にしてきた大事な――大切な人達を次々に傷つけられて暴走に持っていかれる。これほどまでに辛いことはないだろう。月牙もその気持ちは同じだった。だが、ここで動揺すれば敵に大きな隙を与えてしまうことになりかねない。だからこそ、ここは耐えていた。耐えて耐えて耐え抜いて、その怒りを全て敵にぶつける。
そう決めた。
「オドゥルヴィア……ッ!!」
目の前に立つ男を激しく睨む月牙。その視線に気づいたのか、オドゥルヴィアはニヤと笑み、それから視線を側にいる水恋に向け声を発した。
「……まったく、心底情けない帝族の娘だ。クックック、こんな者と同じ帝族だったとは我が片割れの父が弱いのも当然だな。フンッ、伝説の戦士の一人が聞いて呆れるわ」
「……(ピクッ)」
オドゥルヴィアの貶す言葉に反応する人物が二人いた。霧矛と靄花だ。凛も少なからず反応を示すが、月牙の手の甲の皮膚を抓ることで耐えていた。だが、無論その痛みは明らかなるいい迷惑のようなもので、月牙は突如起こる手の甲への激しい痛みに悶絶した。
「いってッ!! 何すんだ凛ッ!!」
「ふんっ、少しはスッキリしたわ」
いけすかないという顔で鼻を鳴らした凛はそう言って踵を返した。これ以上オドゥルヴィアの近くにいると、自身の従姉を貶す言葉を聴き続けて耐えられなくなり暴走することを理解したのだろう。だが、その域に達しなかった霧矛と靄花は耐えられるはずもなく――。
「くぅっ! おねえちゃんを馬鹿にするなぁあああああああああっ!!!」
「私のライバルをコケにしたこと、後悔させてあげますわっ!!」
そう言って二人は神力の暴走を引き起こした。邪悪なオーラが渦巻き、やや透明の壁に囲まれて閉じ込められた状態にある伝説の戦士とオドゥルヴィアのいる空間に充満していく。
「フンッ、面白い。さらなる神力の暴走か。どんどん増えろ……そして我に挑むがいいッ!! 返り討ちにして自らの弱さを痛感させてくれようッ!!」
そう言ってオドゥルヴィアは指の関節をボキボキと鳴らして腕を回してウォーミングアップすると、片足を強く踏み込み風浮めがけて突貫した。
「風浮、危ないッ!!」
月牙が声をあげるが――。
ドゴォォォォォンッ!!!
舞い上がる砂煙。二人がどうなったのかは誰にも分からない。
しばらくして煙が晴れる。そこには、当たり前だが風浮とオドゥルヴィアがいた。だが、風浮はやられていない。どちらかといえば、むしろオドゥルヴィアの方がダメージを受けていた。
まるで何か刃物のような物でたくさん傷つけられたみたいな切り傷を作っているオドゥルヴィアは、頬や腕から血を流しながらその目を揺らがせていた。明らかな動揺が見られる。
「あ、ありえん……! このようなことが、あってなるものか……。しかも、よりにもよってこのような十歳の餓鬼などにッ!?」
信じられない、まさにそんな顔だった。険しい形相を浮かべるオドゥルヴィアの顔はまさに鬼神とも魔神ともいえない顔つきで、それを見たら幼い子供はすぐに号泣するだろう。だが、十歳という年齢でまだ恐怖の対象もあるであろう風浮はその顔を見ても何とも思っていないようで、ケロッとしている。
【ォ~、ヨクモォ~すいチャンヲォォォォ!! 許サナイッ! 許サナイゾ! 許スモンカァァァァァァァ!!! 消エロ! 消エロ消エロ消エロ消エロォォォォッ!! 僕ガ殺ス! 殺シテヤルゥゥゥゥゥッ!!!】
激しい怨念、怒り。その全てが風浮の小さな体からにじみ出ているようだった。その量は凄まじく、完全に目の色が真っ赤な血の色になっていた。
すると、オドゥルヴィアの左右から攻撃が飛んできた。雨の槍と濃霧だ。
「何だこれはッ!?」
視界を奪われたところに雨の槍の攻撃はなかなか堪えるらしく、防御もままならず雨の槍の何本かをその体に受けていた。
「ぐふぁッ!!! くそ、馬鹿な……伝説の戦士が、成り上がりの戦士如きがここまでの力を発揮……だとォ!? ありえないッ! くそ、レイヴォルぅ……ど、どうなっているんだッ!!」
自分だけでは脳の処理が追いつかないのか、オドゥルヴィアは苦痛の声をあげながら片割れの父に訊いた。だが、答えはない。無理もない、今現在レイヴォルことその体を借りているバルトゥアスはルナーとフィーレの神族二人に取り押さえられているのだから。
「くそッ、レイヴォル……やられたのか? まぁいい、こうなれば我だけでもこの者達を亡びの力で滅してくれようッ!!」
両手に漆黒の炎を纏わせるオドゥルヴィア。そして、それを濃霧にぶつけて振り払った。そこから発生源へと滑空し、標的を見つけて首を片手で鷲掴みにする。
「貴様かッ! 貴様がやったのだなぁッ!! ならば、貴様から滅ぼしてくれようッ! さぁッ、苦悶と悲痛の声を漏らし、嗚咽しながらその存在をこの世から滅するがいいッ!!」
刹那――首を掴んでいる腕から真っ黒な炎が吹き出し、それが霧矛の顔面を覆う。
「霧矛ぅぅぅぅぅぅぅ!!」
凛が声を張り上げて従妹の名を叫んだ。その名前を叫ぶ声に一瞬、水恋の腕がピクリと動いたが、誰もそのことに気づかない。
【ク、苦シィ……デモ、オネエチャン……ノ痛ミニ比ベレバ、コノクライ……! 殺ス! 殺シテヤルゥゥゥゥッ! オネエチャンノ、仇ィィイィィィィィイィッ!!!】
その声がどこから漏れているのかは分からない。というのも、口から発せられているにしては、やけに心の奥底に響き渡るような声なのだ。なんとも形容し難いのだが、いうなればテレパシーのような感じだ。声が震え、それが体の内側に聞こえてくるような感じ。
全く持って摩訶不思議で仕方がない現象だ。すると、今度は靄花が声をあげた。
【今マデ私ハ、コノ方トクダラナイ言イ争イヲシテイマシタ。ガ、ソレモ全テハ……争イタイガ故、仕方ガナカッタ……。ダカラコソ、ソノ……ライバルガ貶サレル事は許シテオケマセンノ!! ヨクモ、ヨクモ水恋サンヲッ!! ソウ安々トハ殺シテ差シ上ゲマセンワヨ!?】
そう言っていつも常備している傘を開いて先端部分をオドゥルヴィアの方へ向けると、それを思い切り回転させた。同時、そこから水が発生して渦潮のようにオドゥルヴィアへ向かって放たれる。
というわけで、久しぶりの投稿です。後一話となりましたが、今回の四十一話はすごい展開になります。
前回に引き続き、次々と神力の暴走を引き起こす伝説の戦士。果たしてこのまま全員神力の暴走に陥りBADENDになってしまうのでしょうか?
てなわけで、今回も四部構成でお送りします。