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十二属性戦士物語【Ⅳ】――初代の戦い――  作者: YossiDragon
第二章:鎧の帝王の陰謀阻止篇
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第三十八話「融合! アラクネ・オルガルト」・3

「みんなっ!」


「目を覚ましたのね!」


「よかったぁ!」


「誠でございます!」


「お、お前ら・・・・・・」


「あの野郎は!?」


「俺達が倒した!」


「お前らだけで?」


「すごい!」


 斑希が歓喜に涙し、凛が嬉しそうに飛び跳ね、霧矛が笑顔で手を合わせ、癒宇も心底嬉しそうに言うのに対し、いまいち現状が理解できていないメンバーの妖燕は復活を喜ぶメンバーに感涙し、乱火がいきなり攻撃されたことに怒って周囲を見渡し、月牙がそれに答え、砕狼が信じられないという顔をし、砂唯が感心の声をあげる。

 と、そこに息を乱した水恋が駆け込んできた。


「た、大変なのですっ! ハァ、ハァ・・・・・・あ、暗冷・・・・・・君が、ふく、ぶ・・・・・・かん――っで・・・・・・ハァ」


「お、落ち着け水恋。な、何言ってるか分かんねぇよ!」


「す、すみません月牙さん! あ、あの・・・・・・水ありませんか?」


「お前、水属性だろ」


「あ・・・・・・そうでしたね」


 まるでコントの様な感じで会話をする月牙と水恋。その二人を横目で見ていた斑希は心底つまらなそうな顔をしていた。


「えと、それで暗冷君が大変なのです! オルガルトがついに本性を現して・・・・・・。それで葡豊さんの助けが必要なのですが・・・・・・」


「わ、私ですか?」


「は、はい! 急いできてください!」


 そう言って水恋が慌ただしい様子で葡豊の右手を手に取る。それを見た状況を知っている一部のメンバーが見て目を見開く。思ったのだ、義手とはいえつけたばかりでまだすぐに取れてしまうのではないかと。それにいち早く感づいた癒宇がいつもと違って声を荒げる。


「おやめくださいッ!」


「ひぇ!? ご、ごめんなさい・・・・・・え、あの。私、何か悪い事でもしました・・・・・・か?」


 涙目でうるうると瞳を潤ませ縮こまる水恋。まるで小動物のような仕草である。


「い、いえ・・・・・・申し訳ございません。しかし、葡豊はまだ回復したばかりでして・・・・・・その、歩くのは少し無理があると思うのでございます」


「で、でしたらお・・・・・・おぶっていきます!」


「そうなさってください」


 柔和な笑みを浮かべて癒宇はそう言った。その笑みがいつもなら普通に見えるのだが、水恋には何か別の物に見えたのだろう。苦笑いをしていた。


「月牙さん達も後からきてください! 敵は強すぎます! 皆で力を合わせないと・・・・・・」


 そう言い残して水恋は葡豊をおぶって行ってしまう。しかし、その既で慌てて月牙が水恋を止めた。


「これ持っていけ」


「は、はい」


 パワーストーンを水恋の分と暗冷の分と持って再び駆け出す水恋。それを見て彼女が姿を消したのを確認してから斑希が月牙の元に歩み寄り声をかける。


「月牙・・・・・・行くの?」


「もちろんだ。そのためにもまずは皆にここまでの状況説明をしないとな・・・・・・」


 そう言って月牙は十五人の伝説の戦士に状況説明を開始した。


――△▼△――


「く・・・・・・そ、体が動かねぇ。何でこんなことに」


【哀れなものよ・・・・・・伝説の戦士もここまでだ。諦めろ、貴様はここで終わるのだ。幼馴染に裏切られ、運命にも裏切られ・・・・・・。何もかもが信じられなくなる】


「い、言いたい放題・・・・・・言いやがって!」


 だんだんと声が掠れ始める暗冷。

 と、そこへ扉がバン!と開け放たれ水恋が駆け込んできた。


「す、水恋ッ!」


【な、何!?】


 驚愕するアラクネ・オルガルト。すると、水恋が葡豊を下ろし暗冷に言った。


「これ、暗冷君のパワーストーンです。これでもう大丈夫です! 葡豊さん、後は頼みますね」


「はい! 任せてください・・・・・・」


 葡豊は真剣な面持ちで治癒を始めた。


【おのれェ、させるかぁあああああ!!】


 歯軋りしたアラクネ・オルガルトはその大きな脚の一本を暗冷と葡豊に向けて振り下ろした。


ガキィィィンッ!!


 響き渡る金属音。見ると、そこには防御壁を張る水恋の姿があった。水を自分を囲う様に展開し防御した水恋は、武器を構えて口を開く。


「二人には手出しさせません! 覚悟しなさいオルガルト!」


【うぬぅぅぅ・・・・・・わしはもはやオルガルトなどではないッ! 鬼蜘蛛、デュオルグスだぁああああああ!!】


 二、三本の脚を振り下ろし攻撃するアラクネ・オルガルト。が――


ズシャァアアアアンッ!!


【ぐああぁああああ!! な、今度は何だァ!?】


 脚を切断されてバランスを崩しかけるアラクネ・オルガルト。そこに現れたのはゴウストと戦っていた伝説の戦士だった。


【くっ! おのれ・・・・・・おのれおのれおのれおのれおのれェェエェエエエ!!! 死に損ない共がァァァアア!!! ゴミは消え失せろォォォォォォ!!!】


 口元に魔力を集中させ、一気に蓄積させる。そして、それをレーザーの様にして放った。しかし、図体がでかい分動きがノロイため簡単に躱されてしまい、回復が完了した暗冷を含めた伝説の戦士三十一人の猛打撃が繰り広げられた。体中を切り刻まれ真っ赤な鮮血を飛び散らせるアラクネ・オルガルト。


【アガァアア、ウグォォォォ! グゥワァアアアア、お・・・・・・おのれェ・・・・・・伝説の戦士如きガァアァア!!】


 そう言ってアラクネ・オルガルトはバラバラに崩壊した。地面にボタボタと肉片が散乱し、血しぶきが雨になって降り注ぐ。その中心にはボロボロのオルガルト帝――デュオルグスが呆然と立ち尽くしていた。両腕を失った状態で。 

 伝説の戦士は今がチャンスとばかりに攻撃を仕掛けるが。瞬間、体の動きが止められる。


「な、何だ!?」


 驚愕する戦士たち。すると、デュオルグスの側に白衣を着た男が出現する。レイヴォルだ。


「あいつッ!」


「くく・・・・・・よぅ、ジジイ。また派手にやられたな」


「貴様・・・・・・、よくもノコノコと顔を出せた物だな、しくじりおって」


「ふ、何の話だ?」


「とぼけるなッ! 貴様がこやつらの力を奪っておかないからこのような事になったのだ!」


「くく・・・・・・まぁそう言うな。新しい腕をくれてやるよ」


 そう言ってレイヴォルは懐から二本の腕を取り出す。


「フンッ、人間の腕では神滅剣は持てぬ」


「ああ、無論これは神族の腕だ」


 その言葉に驚愕するオルガルト。まさかそんな奇跡が起こりうるのかと思ったのだろう。そして目の前の腕を見てそれに手を伸ばそうとした。


「まぁ、そうがっつくな。すぐに取り付けてやるさ」


 そう言ってすぐさま作業に取り掛かるレイヴォル。


「何で、何で動けないのよっ!」


 体を動かそうとするが、まるでゴーゴンに睨まれて石化したかのように動けない伝説の戦士。目の前に倒すべき敵がもう後一歩で倒せる相手がまた両腕を取り戻し神滅剣を握ろうとしている。これほどまでに歯痒く悔しい思いはない。

 そして、ついにデュオルグスが両腕を取り戻した。


「グフフフ、ついに・・・・・・手に入れた! くく、よく戻ってきたな我が両腕よ! いよいよだ。我が計画を発動せし時は今だッ!!」


 神滅剣を天高く掲げると同時に邪悪な魔力が渦巻き、周囲の雰囲気が重くなる。

 刹那――デュオルグスの背中から八本の蜘蛛の脚の様な物が生えた。


「うぇ、な・・・・・・何なんですのあれ、気持ち悪いですわ!」


 吐き気を催した靄花がそう口にする。


「貴様らはこの必要のない砦と共に瓦礫の下敷きになるがいいッ! グハハハハハハッ!!」


 そう言ってデュオルグスは紅蓮の双眸を不気味に光り輝かせ飛び立った。天井を突き破り何処かへと姿を消す。すると、同時に大轟音が聞こえた。恐らく、先程デュオルグスが言っていた台詞からこの砦を破壊しようとしているのだろう。このままでは本当に瓦礫の下敷きにされてしまう。


「くそっ! 鈴華がッ!」


 暗冷がそう口にするが、体が動かせないのではどうにもならない。すると、急に体の自由が取り戻された。


「あ、あれ?」


「ど、どうなってんだ?」


 突然の事に困惑する伝説の戦士だが、今は脱出が先だと入口を目指した。

 と、そこで水恋と暗冷が踵を返して鈴華の元に向かおうとする。それを見た月牙が二人を止めた。


「待て!」


「何すんだ!」


「早く鈴華さんを助けないとっ!」


「俺が行く! お前らは先に行けッ!」


 月牙に命令され二人は渋々入口へと向かった。すると月牙が鈴華の元へ走っていくのを見た斑希が声をあげた。


「ちょっ、月牙! 何してるの! 早くしないと崩れるわよ!」


「分かってる!」


 と、その時、斑希と月牙の間に大きな落石が落下した。


「きゃっ!」


「だ、大丈夫か斑希ッ!!」


「え、ええ・・・・・・私は平気。そっちは?」


「ああ、でも入口が・・・・・・」


「何とかならない?」


「方法はこっちで考える。とにかくお前は先に行け!」


「わ、分かった」


 斑希は少し心配しながらも月牙に言われて急いで他のメンバーに合流しに駆けていった・・・・・・。

というわけで、アラクネ・オルガルトVS伝説の戦士でした。そして、完全に暴走状態となったオルガルト帝は、鎧一族の砦から出て外へ向かいました。さらに、次回は間に鈴華視点の話を挟みます。まぁ、月牙が鈴華を助ける救出劇の話です。

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