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十二属性戦士物語【Ⅳ】――初代の戦い――  作者: YossiDragon
第二章:鎧の帝王の陰謀阻止篇
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第三十八話「融合! アラクネ・オルガルト」・1

「はぁはぁ、この奥から鈴華さんの魔力を微弱ながら感じます!」


「よっしゃ!」


 青髪の少女の言葉に、黒髪の少年が示されたドアを蹴破る。伝説の戦士にして四帝族の一つ、霧霊霜一族の現当主霧霊霜水恋と、四帝族の一つ、嵐一族の現当主嵐暗冷の二人だ。その先にはボロボロの巫女装束を身に付け首に首輪をつけた赤髪の少女がいた。彼女こそ、四帝族の一つ鳳凰一族の現当主、鳳凰鈴華である。


「す、鈴華ッ!」


「鈴華さん!」


 二人が慌ててその場に駆けつけようとすると、二人の行く手を阻む様に上空から大男が落ちてきた。ドスンッ!と荒々しい音を立てて着地したその男は体中に鎧を身につけていて顔にもそれを着けているため素顔が伺えなかった。だが、その見た目だけで何者なのかが分かる水恋と暗冷の二人は、激しくその人物を睨みつけた。そう、この男こそ今回の一連の事件の発端者にして恐ろしい計画を企てているという四帝族の一つ、鎧一族の現当主オメガ=アーマー=オルガルトである。

 オルガルト帝はニタリと笑みを浮かべて口を開いた。


「グフフ・・・・・・ようやく来たか。待ち侘びたわ、伝説の戦士にして帝族共よ・・・・・・」


「ケッ、テメェだって同じだろが!」


「鈴華さんを返してください!」


 舌打ちしてさらに強く睨みつける暗冷と、胸の前に手を添え頼み込む水恋。すると、その二人を見てオルガルト帝はマントを翻すと同時に踵を返し、高らかに笑って言った。


「まぁ、そう焦るでない。貴様らはここまでやってきた・・・・・・謂わばここが最終地点、ゴールなのだ。そこへやってきた貴様らには褒美をやらねばな」


「褒美・・・・・・だと? だったら鈴華を返せッ!」


「くッ、ええぃ黙れェェェ!!!」


 怒声をあげるオルガルト帝。その低い声音が今いるこの場全てを震わす。そして揺れが終わったと思うとオルガルト帝が口を開く。


「貴様らは分かっていない。今のわしはこのウロボロスで最強の男・・・・・・このわしが今や新たな神となるのだ。それなのに、その神に向かって命令とはまさに愚の骨頂! 畏れを知らぬ愚か者共めがッ!! 少しは立場をわきまえろ!この偉大なるわしに跪くのだッ!!」


 そう言って二人に向かってその紅蓮の双眸を見せ輝きを見せる。次の瞬間、水恋と暗冷の体が突然動かなくなった。


「うっ、何だよこりゃ!?」


「う、動けません!」


「クックック、無駄なことよ。わしの瞳を見たからには貴様らは動けぬ。さぁ、我に跪けッ!」


 ズシャ!


 オルガルト帝が片手をふりかざすと同時に、二人が頭を地面にぶつけた。


『ぐッ!?』


 二人共自分の身に何が起きたのか分かっていない様子だった。無理もない、突然自身の体の制御が効かなくなったかと思うといつの間にか地面に頭をぶつけていたのだから。

 水恋と暗冷は地面に跪かされながらオルガルト帝に怒りを見せた。


「ほぅ、生意気な顔だ。だが、すぐにその表情も変化する。絶望の表情にな・・・・・・。貴様らに聞かせてやろう、わしの崇仰なる計画をな・・・・・・」


「計画・・・・・・だと?」


「そんな物、発動させたり・・・・・・しません!」


 動けず声がはっきりと出せない二人は、何とか声を振り絞ってそう叫ぶ。すると、それを聴いたオルガルト帝がガハハと笑いながら計画の全貌を話しだした。


「ある日のことだった、わしは魔界にて最強の地位を手に入れるために最大にして天敵である別の種族の者と戦っていた。そんな時、神界からやってきた神族共にわしは封印された。そして永遠の眠りに就くことになった。だが、神はわしを見放そうと世界はわしを見放さなかった。そこで、わしは出会ったのだこの男にな」


 それを聞いて二人はきょとんとした顔になった。こいつは一体何の話をしているんだろう? そう思ったのだ。


「何、言ってんだテメェ。テメェはテメェじゃねぇのか?」


「クック・・・・・・やはり気づかぬか。このオーラを放っていても尚・・・・・・はぁ。分からぬならば分からせてやろう! わしの名はオルガルト帝などではない。あやつはわしと契約して肉体を差し出した男・・・・・・わしの真の名はデュオルグス・・・・・・。デュオルグス=オビヒリンだ!」


 その名前に水恋が驚愕する。


「ま、まさかあの最強の鬼神族・・・・・・デュオルグス=オビリヒンだというのですか?」


 水恋の言葉に隣にいた暗冷が尋ねる。


「誰だそいつ」


「知らないのですか!? 鬼蜘蛛デュオルグスといえば最強の魔神族である魔剣士バルトゥアス=オヴァハランと対になる存在で、物凄く強い力を持った怪物ですよ?」


「ほぅ、わしの事を知っているとは、貴様・・・・・・なかなか賢いな。そうだ、わしこそ最強の鬼神族デュオルグスだ。しかし、封印されてしまいこの有様・・・・・・全く持って歯痒い限りだ。神族、特に天使九階級だけは生かしてはおけんッ!」


「て、天使九階級!?」


「それって確か・・・・・・」


 オルガルト帝が口にしたその言葉に水恋と暗冷が反応する。二人とも実際この目で見たわけではないが、斑希の説明で天使九階級に一度あったという話を聞いていたのだ。


「知っているのか、貴様ら」


 突然目つきを変貌させるオルガルト帝に二人が警戒する。すると、さらにその瞳の光を増幅させた。


「うぐッ!」


「くぅ!」


 水恋と暗冷はさらに強く地面にねじ伏せられ苦しそうに声をあげる。


「なるほど・・・・・・やつらはまだこの近くにいるのか。クックック、それはよい」


 そう言って何かを顕現させたデュオルグス。それは一本の剣だった。黄金色に光り輝き神々しいオーラを放っている。


「何だそれは、という顔だな。教えてやろう、これは神滅剣。あの憎き神々を葬り去れる事の出来る唯一無二の剣だ」


「そのような剣、いったいどうやって!?」


 俄かには信じられないという顔で訊く水恋にオルガルト帝がにやりと不気味な笑みを浮かべて言った。


「わしは神の力を得たのだ。今やわしの体の中には元神族である神崎斬覇の力が流れている」


「神崎?」


「それは神王一族の?」


 神崎という姓を聞いてそう尋ねる水恋。すると、オルガルト帝は口を開いた。


「フッ、違うな。神崎斬覇は神崎王都の父だ」


『えっ!?』


 二人同時に驚愕する。神崎王都といえば第一次神人戦争の英雄。仲介役となり神族と人族の戦いを止めた人物だ。だが、その後突如としてその姿を消して今や夢鏡王国の上空に浮かんでいた第五の帝国ハルムルクヘヴンもその姿を確認されていない。噂によれば神王一族は何者かの襲撃を受けて滅んだとされている。しかし、事実はまだちゃんと分かっていない。伝説の戦士がおとぎ話として語られだしたのもその辺りだった。争いを繰り返す二つの勢力を止めた十二人の神王一族。そして、その中心にいた一人の帝王。それが神崎王都だという。


「そして、この神滅剣はその神崎王都が身につけていたとされる七つの秘宝の一つ、黄金の自由武器オーラム・オーダーメイドを使って作り出した物だ。これさえあれば、簡単に神を殺せる」


 神滅剣をじっと見つめまるで何かの欲望に駆られた様な雰囲気を醸し出すオルガルト帝。すると、水恋が口を開いた。


「一体、神族を殺して何をしようとしているのですか!?」


「いい質問だ。わしが天使九階級に封印されたことは知っておろう? その時わしは恨んだのだ。神を、そしてこんな事にした運命をな・・・・・・。だからこそ、運命を全て捻じ曲げると言われている世界の理をわしは恨んだ」


「世界の・・・・・・理?」


 聞いたことのない言葉に首を傾げる水恋と暗冷。互いに顔を見るが、知らないと首を振る。


「その昔、世界を創造したのは神ではなくその世界の理だと言われている。だが、その全貌を知る者は誰一人としていない。しかし、神族の中にそれを知っているものがいるという。わしはそやつに聞いて世界の理を破壊しようと考えている。そうすれば、この腐った世界を改革する事が出来る! わしが負ける運命などそれはわしの望んだ世界などではないッ! 神族や人族が蔓延るこの様な腐りきった世界など必要ないッ!! だからわしは考えたのだ。ならば、この世界をもう一度暗黒に染めてやろうではないか、とな・・・・・・」


「世界を暗黒に?」


「どういうこった?」


「第二次神人戦争・・・・・・それがわしの考えている物よ。神族と人族を戦わせ人々の心を闇に堕とす。そうすればこの世界に闇が増幅する。そうなれば、大昔第一次光闇戦争の際に封印された闇の戦士を復活させることも可能。そうなれば、いよいよこの世界は終わるッ! そして、わしはこれに伴い二つの計画を立案した。それが神抹殺計画と不死身軍隊製造計画だ」


「何だ、それは?」


「神を抹殺? 不死身の軍隊・・・・・・?」


 オルガルト帝の考えている事がいまいち理解できない二人はこめかみから冷や汗を流した。ただ、この男がとんでもない計画を立てていることだけは理解出来た。


「神抹殺計画とは神族を殺しその力を全てわしの物にするというものだ。だが、そのためにはわしが神滅剣を持たねばならない。そこで問題が起こった。神滅剣は神族にしか扱えぬというのだ。わしも神族の端くれではあるが、元々ならずものの神族によって構成された魔族にはその資格がなかったのであろう。わしには扱えないらしい。だからこそわしは、元神族であるゴウストを殺した。ちなみに教えてやろう、そのゴウストこそ神崎斬覇・・・・・・神崎王都の父親なのだ」


「あ、あの男が!?」


「そ、そんな・・・・・・!」


 二人は衝撃を受けた。無理もない、まさかあの伝説の英雄神崎王都の父親がこんな近場にいたとは二人も思わなかったのだ。


「そしてわしは見事神の力を得た。さて、では見せてやろう。この神滅剣の切れ味をな・・・・・・」


 そう言ってオルガルト帝は二人の拘束を解いた。


「う、動ける!」


「反撃です!」


 動けると分かった途端二人はその場に立ち上がり、武器を構えてオルガルト帝に向かって突っ込んだ。


「愚かな・・・・・・」


 オルガルト帝は顔を伏せたかと思うと、目をギラリと光らせ手をかざした。瞬間、その手のひらが光る。


「まずいッ!」


「避けてくださいっ!」


 水恋と暗冷はギリギリのところでそれを躱す。暗冷は髪の毛が短いのでそこまで影響はなかったが、水恋の長い青髪が少々オルガルト帝の放った砲撃で焼き切れた。


「あぁっ!?」


 涙を浮かべて髪の毛に触れる水恋。


「だから長い髪の毛は邪魔だっつってんのに」


「だ、だって~!」


 駄々をこねるように水恋が悲壮感に打ちひしがれる。すると、オルガルト帝がそんな二人に向かって第二撃を放とうと構えた。


「やばいッ!」


「くぅ、髪の毛の恨み!」


 二人は砲撃を上手く躱しながら敵の懐に接近し攻撃を繰り出す。だが、オルガルト帝の身につけている鎧が頑丈のようで簡単に跳ね返される。

というわけで、三十八話です。とうとうオルガルト帝と初めての対戦です。水恋と暗冷は、同じ帝族であるオルガルト帝を倒せるのでしょうか?

今回は三部構成でお送りします。

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