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十二属性戦士物語【Ⅳ】――初代の戦い――  作者: YossiDragon
第二章:鎧の帝王の陰謀阻止篇
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第三十五「リベンジ! 滅殺の騎士」・3

「いっつ・・・・・・」


「当然の報いよ。全く・・・・・・ホントに月牙は女の子の扱いがなってないわね」


「わ、悪かったな・・・・・・あ、いっつ~」


 腰に手を当て嘆息する斑希に、俺は半眼で返しながら赤く腫れ上がった頬を優しく撫でる。すると、葡豊が側に駆け寄り俺の頬に手を伸ばしてきた。


「な、何?」


「へ? ああ・・・・・・腫れ上がってるので治療してあげようと」


「あ、ありがとう」


「いいえ」


 俺は少し背を低くして葡豊が治療しやすいようにした。


「すみません」


「いや・・・・・・あれ? 薬箱とかは?」


「え? ああ、治療といっても私自身が治療するんですよ? こうやって・・・・・・」


 優しく俺の頬に触れ回復魔法をかけてくれる葡豊。何だかこう自然の中で体を清めている感じがする・・・・・・沐浴じゃないが。そして、少ししてもうすっかり痛みはひいていた。


「すげぇ! サンキュー葡豊!」


「いえ、礼には及びません」


 丁寧な挨拶をしてお辞儀した葡豊はまた駆けていった。


「ふぅ・・・・・・いつまで待たせる気だ? 茶番はそろそろ飽きたのだが?」


 その声に俺は一気に緊張感を漂わせた。声のする方に顔を向けるとそこにはファントムが退屈そうに欠伸なんかしている姿があった。


「悪かったな」


「いや、ただ・・・・・・お前が最低だという事が分かっただけでも十分な収穫だ。全く、思わず霧霊霜水恋に同情してしまうところであった」


「収穫ってなんだよ! ていうか、まさかそれであいつをそのまま通したのか?」


 腕組みをしているファントムに俺は詰問する。


「ああ、・・・・・・少しばかり哀れに思えてな。なぁに、僅かながらの昔の良心が芽生えただけだ。そんなものすぐ様かなぐり捨ててやった」


「それ、少し使い方間違ってない?」


「ふ、面白いことを言うな斑希」


 鼻で笑うファントムにムスッとして斑希は口を開いた。


「何よ! 私はただ指摘してあげただけで・・・・・・」


「はぁ・・・・・・随分と待ちくたびれた。どうやら、お前の仲間は相当優秀らしい。特に頭の回転がいいと見える」


「どういうことだ!」


 砕狼が声を荒げてファントムに訊く。その問いに彼は壁から背中を離しながら口を開いた。


「スパイダー、フェニックス・・・・・・俺の同胞はどちらも散っていったらしい」


「それって・・・・・・」


「つまり、どーゆーこと?」


 ファントムが顔を天井に向けて遠くを見つめているのを見て、雷落と光蘭が顔を見合わせ不思議そうな表情を浮かべる。


「じゃあ、あの二人は倒されたってこと?」


「ああ」


 斑希の言葉に静かにファントムは答えた。


「てことは、あと二人・・・・・・」


 俺は目の前の敵と未だにその実態が掴めていないゴウストという男の事を考える。すると、ファントムが急に視線をこちらにやって顔もこちらに向けてきた。


「お前たちに選択権をやろう」


 その言葉に俺達は言葉を失った。


「さぁ、選択肢は二つだ。一、全員で俺を殺る。二、二人を残して残った戦士を先に進ませる。さぁ、どちらだ?」


 突如与えられた選択権と選択肢。すると、猛辣が不気味な笑い声を立てて言った。


「ヒヒッ、どうやら選択しなければならないようだよ? どうするんだい月牙・・・・・・ヒヒッ! 私は面白くなる方に君が決めてくれる事を期待しているよ?」


「俺が決めるのか?」


「ああ・・・・・・」


 猛辣の言葉に俺は他のメンバーを見るが、皆完全に俺に一任していた。斑希を見ても大丈夫という視線を送ってくるだけで役に立たない。


「・・・・・・ニ」


「ほぅ・・・・・・全員で力を合わせ俺を殺す事を選ばず、仲間を二人その場に置いてでも仲間を先に進ませる方を選ぶか」


「ああ。ちなみにその二人は既に決めてある」


 俺の言葉にメンバーが目を見開く。まさか、そこまで考えているとは思っていなかったのだろう。


「残るのは・・・・・・俺と斑希だ!」


「え、わ、私!?」


 当人は自身を指差して驚いていた。他のメンバーも口々に言う。


「そんな! どうせ残るなら私が!」


「いや、俺が残るって!」


「静かにしろッ!」


 俺の叫び声に全員が閉口する。


「いいか? こいつとは俺と斑希で決着をつけないといけないんだ。だから、皆は先に進んでくれ。他の四天王は倒されたって言ってたから恐らく刻暗達もこっちに向かってるはずだ。合流して必ず追いかける! だから行ってくれ!」


 その言葉に皆は互いに顔を見合わせ、それから首肯して俺の方に向き直って頷くと駆け出した。全員が俺達に背を向けファントムの横を通り過ぎて奥の通路へと向かう。

 そして、この場には俺と斑希とファントムの三人が残された。


「・・・・・・運命とは、恐ろしいものだ。そうは思わんか、月牙?」


「運命?」


「そうだ。人との出会いは一期一会とも言う。だが、俺とお前達二人は何度も会っている・・・・・・何の因果か知れんが、それは俺にとっては喜ばしい事だ。実に喜ばしい・・・・・・しかし、お前達はあまりにも甘すぎて弱すぎる。だからこそ、今まではまともに相手にもしてこなかった」


 まさか、今までのあの攻撃が全て本気ではなかったというのか。

 俺と斑希は互いに息を飲んだ。


「・・・・・・時は人を成長させる。見事お前達は見違える程強くなった。だからこそ、熟した実を頂く時は今しかない。頃合を見失えば逆に味は変化し、不味くなる。それでは俺が待った意味がない。この時を逃すわけにはいかない。しかし、お前は馬鹿で最低な男だ月牙」


「何が言いたい!」


「お前が選んだ選択肢が間違いだと言っているのだ」


「間違い?」


 ファントムが言っている事が理解出来ず首を傾げる。すると、鼻を鳴らしてファントムが口を開いた。


「この先に待っているのは最後の四天王にして災厄の四天王・・・・・・ゴウストだ。やつは俺達とは桁違いの力と破壊力を兼ね備えている。そんなやつをお前達ではなく、あの者達だけで倒せると思っているのか? それは無謀というものだ。やはり判断が甘いな月牙。そして、それを止めなかった斑希・・・・・・お前も同罪だ」


「ど、同罪!? な、何で罪に問われなきゃいけないのよ!」


「お前達は仲間を集めこうして三十一人全員でここへやってきた。だが、それが全て無駄に終わるのだ。あのジジイはもう計画を最終段階にまで移行させている。このままではお前達が再び一つとなるのも時間の問題だ。そうなれば、世界は再び闇へと誘われ神と人との戦いが始まる。それが何を意味するのか、お前達にわかるか?」


「・・・・・・神人、戦争・・・・・・」


「ふっ、ご名答。それだけは褒めてやろう・・・・・・月牙。だが、もう時既に遅し。進んでしまった時は元には戻せない。お前達はここで後悔するがいい。あの者達が、仲間がお前達に裏切られ心を傷つけあの惨殺の騎士によって屠られるのをな・・・・・・ふふ、ふははははははは!!」


「くっ、くそぉぉぉぉおお!!」


 俺は自分の決めた事が間違いだったということに気づき、無我夢中で駆けた。しかし、目の前に瞬間移動したファントムの膝蹴りが俺の鳩尾にクリティカルヒットしてその場に蹲ってしまう。


「ふっ、諦めろ月牙。お前は成長しているようで成長しきれていない。まず、自身の正体も掴めていないのでは終わりだ。何のためにお前に幾つもの試練を与えたのか、これでは意味がないな」


「何を――」


「ここで、また選択権をやろう」


 まただ。こいつは何を考えているか分からない。それが、出会ってから今に至るまででどんどんその度合いを増している様な気がする。隣にいる斑希もこめかみから冷や汗を流している。


「俺は八魔剣の内の五本を持っている。魔神剣ゴドヴィシルン、魔皇剣ペルエテオン、魔覇剣ウェルヴデン、魔無剣インフィニティン、魔幻剣オートゥンの五本だ。さぁ、選択肢だ」


 ニヤリと笑みを浮かべるファントム。やはり、この男は俺たちの行動と動きを見て楽しんでいるらしい。


「一、魔剣五本全てで戦う。二、魔剣一本だけで戦う。さぁ、どちらだ?」


「もちろん二で――」


「一だッ!!」


「えええええっ!? ど、どうして? どうして二じゃないのよ月牙! 明らかに一の方が・・・・・・」


 斑希が文句を言うのも無理はない。どう考えても五本より一本の方が戦いやすいに決まっている。だが、一を選んだのには理由があった。


「馬鹿にしてんのか、ファントム! 一本だけで俺たちと戦う? なめるなッ! 俺たちはな、弱気のお前とじゃなく本気のお前と決着をつけにきたんだ! なのに、本気で戦わなくて何が決着だ!! ふざけんなッ!!」


 その言葉に何を思ったのか、ファントムは意外そうな顔を浮かべた後ニヤリと笑みを浮かべて俺に言った。


「ほぅ・・・・・・この俺の思いやりを無にしたか。だが、やはりお前達は面白い」


「え? 達? 私何も・・・・・・」


「いいだろう、お前達のその勇気と覚悟を買って五本の魔剣で戦ってやる。光栄に思えッ!!」


 左右の腰にさげている二本ずつの鞘から各々一振りずつ魔剣を取り出すファントム。


「魔神剣ゴドヴィシルン、魔皇剣ペルエテオン・・・・・・。まずはこの二振りでお相手しよう。せいぜい抗って俺を楽しませてくれよ月牙、斑希! 元冥霊族にして滅殺の騎士ロルトス=ファントム、いざ参らんッ!!!」


 こうして俺と斑希対、不死身の鎧騎士ファントムとの決着の戦いが始まった・・・・・・。

というわけで、ファントムとの戦闘が始まりました。にしても、相変わらずこの男は何を考えているかわからない部分がありますね。二人を強くしているようにも見えなくもないし、と。で、さらにここで八魔剣の残り五本が全て出てきました。元々スパイダーが持っていたのに奪われてます。ちなみに、海底神殿で使っていたのもこれです。ようやく名称が明らかになりましたね。

そして、ここでファントムの言葉により伝説の戦士の一部が、オルガルト帝の企むものを感づきはじめました。神人戦争。プロローグで度々見かけるのではないでしょうか? あれです。あれが再び起ころうとしてるんです。

そりゃあ止めなけりゃならないでしょう!

てなわけで、次回三十六話はファントムと決着をつけて、ゴウスト――神崎斬覇と戦います。

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