エピローグ 『闇』
灯りの消えた部屋。カーテンを閉め切り、扉の鍵も閉ざしたそこは閉じた楽園だった。
闇と同化したかのようなその部屋で唯一の光を放つパソコン。
少年はパソコンの前に座り、一心不乱にキーボードを打ち込んでいた。
「どいつもこいつも馬鹿にしやがってっ」
世間は彼を馬鹿だと笑った。両親も彼のことを屑だと罵った。
だがそれは間違いだ。
僕は才能に溢れている。ただ、それがこの世界では認識されないだけなのだ。
この世界の人間は、決して僕を認めようとはしないだろう。
だから僕はこの世界を捨てて、新しい世界へと旅立つ。
そこは、きっと僕の本当の才能を認めてくれるはずだから。
「今に見てろ、僕はこの世界を捨てて、妖精の国に行くんだ」
学校に行かなくなり、自分の部屋に閉じこもってはネットサーフィンを続ける日々。
そんな彼は、先日あるサイトを見つけた。
『妖精の島』
それは何の面白味もないサイトだった。
妖精の起源やイラストなどが掲載されているだけのサイト。
だがその中で少年の目を引いたのは、サイト下部にある質問文だった。
『生きていくことに苦しみを感じるあなた。
それはきっと生まれてくる世界を間違えてしまったからなのです。
妖精の国。そこではあなたは自由に生きられる。
あなたは今の世界を捨てて、妖精の国に行きたいですか? はい/いいえ』
『いいえ』を選択すると、ブラウザ画面に戻る設定になっていた。
そして『はい』を選択すると、画面は再び同じことを訪ねてくる。
妖精の国へ行きたいか?
その問いに、何度も、何十も、何百も『はい』を選び続けることで、このサイトは変化するのだ。
『妖精の遊戯台』
そこにはこの世界を捨てて、新しい世界へ行くための手助けをする準備があること。費用は一切かからないことなどが書かれている。
今いるこの世界はきっと僕を認めてくれない。それならば、僕を認めてくれる、新しい世界へ生まれ変わらなければならない。
さぁ、行こう。新世界へ。
少年は口元に笑みを浮かべながら、入力フォームに自身の情報を打ち込んでいった。
この小説を書き始めたのは、四年前だったりします。
二年にも及ぶ休止を挟みましたが、こうして無事完結することが出来ました。
ゲームの創作には実に長い時間を費やし、ノートに色々書き込んではああではない、こうではないと試行錯誤の日々。それもこうして無事終わりを迎えたのかと思うと、感無量の思いでいっぱいです。
私はこういう脱出ゲームや、ゲーム系のジャンルを読むのは好きなのですが、書くのは苦手でして。じゃあ、何で書き始めたんだって言われそうですが(笑)
至らない部分もあったかもしれませんし、上手く使いきれなかった伏線などもありますが、少しでもこの作品を読まれた方が楽しんでくれたのなら、書き手としても嬉しいです。
次は異世界戦記物を書こうかと思ってます。
作風がガラリと変わると思いますが、よければそちらにも遊びに来てくれると嬉しいです。
この作品における感想などいただけますと、次回作の励みとなりますので、よろしければお願いします。
読みたいエピソードなどもあれば、どうぞ。可能なら書かせていただきます。
それでは、最後までお付き合いいただきありがとございました。
また次回作でお会いできることを楽しみにしております。
ありがとうございました!