第三ゲーム 『ロール』 その12
H5へと移動した純也はF5にいる誰かからメールを受け取った。
文面には短く、
『純也はいるか?』
と書かれていた。この文面から相手が伊月だと予測した純也は、すかさず返事を送る。
『はい。そちらは伊月さんですね』
『F4で全員と合流することになっている』
『分かりました。向かいます。G4、G5にいるのは美耶子さんと荻野さんです』
『了解した』
メールでのやり取りを終え、純也は美里にF4を目指すことを告げた。
「またみんな一緒ですね」
無邪気に喜ぶ美里だが、純也は素直に喜ぶことは出来なかった。
純也の勝利条件の一つに、美耶子の殺害が設定されているからだ。頼みの綱は【妖精】のスキルである悪戯だけだが、これには妖精を説得する必要がある。そしていまだ全員の勝利条件が明らかになっていない以上、うかつにスキルを使うことは出来ない。
伊月も移動したらしく、光点の位置が変化していた。
現在の光点は、D6、E4、E5、F4、F5、G4、H5に存在していた。
「ん?」
純也はある部分に目を止め、眉をひそめた。
伊月はF4で全員と合流すると、そう言っていた。そして伊月はF4に到達し、誰かと合流を果たしている。他の光点たちもF4へと近づくような移動をしている。だが、一人だけこのターンに行動を選択していない人物がいた。
「G4……荻野さんか?」
G3にいた美耶子が移動し、現在G4には二つの光点が点灯している。
てっきり純也は荻野もF4へと移動するだろうと思っていた。しかし荻野は動かない。まだ行動を選択していないのか。
『全員の行動が終了しました。スキルを使用しますか?』
荻野は待機を選択していた。
「何故合流しない……」
何かあったのだろうか。荻野と同エリアーにいる美耶子は大丈夫だろうか。
そんな純也の不安を後押しするかのように、スピーカーの音声は語る。
『スキルの使用はなし。六ターン目に入ります。各プレイヤーは行動を開始してください』