第三ゲーム 『ロール』 その6
守衛室と呼ばれる部屋は狭かった。二畳ほどのスペースだろうか。隅に置かれた机の上には二枚のカードが置かれている。その奥にはエレベーターがぽつりと設置されていた。どうやらこれで上のフロアーへと上がるようだ。
純也は机の上のカードを一枚手に取り、端末に読み込ませる。
ピッと端末から音が鳴り、読み込み完了。
純也は第三ゲームの詳細を開いてみた。
『
第三ゲーム ロール
あなたの役職は【王】です。
詳細 圧政を強いる暴君。民からの反発も強いが、それを力で抑え込んでいる。
自身の地位に強く固執しており、王の座を奪いかねない王子と王女の存在を恐れている。
スキル 圧政
発動するスキルを一度だけ無効化出来る。
その際、スキル使用者を殺害出来る。
勝利条件 一 王子と王女の殺害
一 王の証を所持し、玉座への到達
残りターン 三十
次へ 』
表示されたのはこれだけだった。
「王……」
それが自分の役職。圧政を強いる暴君。
スキルが何を意味しているのかは不明だが、何より目を引くのは勝利条件のところだった。
「王子と王女の殺害……」
殺害とは何を意味しているのか。まさか本当の殺人を意味しているわけではないだろうが、物騒な言葉だった。
扉は九つある。つまり役職も各々違ったものになっている可能性がある。
王子と王女の役職は誰なのか。
次へ、と書かれたところを選択してみる。
すると画面がスクロールし、新たな説明文が表示される。
『 スキル一覧
【王】 圧政
発動するスキルを一度だけ無効化出来る。
その際、スキル使用者を殺害出来る。
【王子】 謀殺
隣接するエリア内に存在する役職を殺害出来る。
【王女】 聖女
指定した役職の死を自身が引き受ける。
【騎士】 忠誠
【王女】が指定した役職を自身の命を代償に殺害する。
【平民】 魔女狩り
【魔女】が同エリアに存在するとき【魔女】を殺害出来る。
【魔女】 身代わり
指定した役職の死を一度だけ無効化出来る。
【妖精】 悪戯
指定した役職を一度だけ入れ替える。
【狩人】 狩猟
【魔物】を殺害出来る。
【魔物】 悪意の牙
同エリア内にいる役職を殺害する。
』
表示されたのは各役職の持つスキル一覧だった。
王、王子、王女、騎士、平民、魔女、妖精、狩人、魔物。計九つの役職。
つまり【王】である純也を除けば、後の八人は【王】以外の役職のどれかについているということになる。
ざっと目を通し、スキルを把握した純也は、次にもう一枚のカードを端末に読み込ませる。
確認音の後、ソフトの項目欄に更新マークがついた。ソフトを選択すると、MAPの他に新たな項目が増えていた。
「メール?」
表示されていたのは、メールという項目。試しに項目を選択してみるが、条件を満たしていないため使用できませんの文字。
他にカードがないか探してみたが、この二枚以外には見つからず、純也は先に進むためにエレベーターのボタンを押した。
ポンという電子音がして、すぐにドアが開く。
中は人二人が並んで立てるかというほどの広さだ。階層を表すボタンのところには、守衛室と王国と書かれたボタンが上下に並んでいる。
王国と書かれたボタンを押すと、エレベーターが上昇を始める。
これから始まる第三のゲーム。他のメンバーはどんな役職に就き、どういう勝利条件を持っているのか。
やがてエレベーターの上昇が止まり、ドアが開かれる。
純也を出迎えたのは、正方形の形をした小さな部屋だった。
東西北にバルブのついたドアが設置されている。方角が分かるのは、ドアの上に方角を示すアルファベットが書かれているからだ。
『一ターン目です。プレイヤーは行動を選択してください』
やはり天井に設置されたスピーカーから、妖精の声が発せられる。
こうして、第三のデスゲームが幕を開けた。