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ブレインキラー  作者:
4/80

第一ゲーム 『ロジックキューブ』 その4

 鍵は手に入れた。

 残るは南京錠のダイヤルの番号だけだ。

 純也はドアの前へと移動した。

 一度、鍵が入るかどうか試してみたが、やはりダイヤルを正しい数字に合わせなければ鍵は差し込めないようになっていた。

 純也はドアに書かれた数字の羅列へと視線を向ける。

 恐らくこの中にダイヤルの番号が隠されているはずだ。

 そしてそのヒントとなるのが、まだ解読できていない二つの暗号。


 文1

   妖精は双子

   双子は忌子

   弟を殺され

   兄は世界を憎む


 妖精。他の暗号では妖精とはこの部屋のことを指していた。

 部屋が双子? そして忌子?

 意味が分からない。もしかしたらこの中で書かれている妖精とは、部屋のことを指しているのではないのかもしれない。

 だが、そうなるとこの『妖精』とは何を意味しているのか?

 純也は頭を切り替え、もう一つの暗号について考える。


 文2

   アリス

   鏡の町へと迷い込み

   悪戯好きの妖精に出会う

   妖精は鏡に細工し

   アリスはもうお家に帰れない

   ずっと鏡の中


 アリスが何を指しているかは分からない。

 しかし気になる単語があった。

 『鏡』

 文中に何度も使われているのは、それを強調したいからではないのか?

 では『鏡』とは何なのか?

 純也はじっと数字の羅列を見つめる。


「何だろう、何かすっきりしない……」


 全体を見たとき、何故か心に引っかかるものがあった。

 そう、何かが気になるのだ。

 だが、考えている間にも時間は無情に過ぎていく。

 残り時間が六分を切ったとき、純也の心に変化が生じた。

 もし時間切れになってしまったら?

 そんな想像が一瞬とはいえ、頭をよぎったのだ。

 途端にはっきりしていた頭がグルグルと渦を巻き始め、思考があやふやになってくる。

 焦り。ゆっくりと減っていく残り時間の数字が純也の心を蝕んでいく。


「お、落ち着け! 落ち着け!」


 鍵は見つけた。もう少しで解けるはずだ。

 そう何度も言い聞かせるが、焦りは心にべったりとこべりつき、剥がれようとはしない。

 それでもなんとか目の前の数字について考える。

 無秩序に並んでいるかのように見える数字の羅列。

 そして『鏡』。

 全体を見たときの心の引っかかり。


「一つ一つを見るんじゃない……全体を見るんだ……」


 純也は数字が全て視界に収まる位置まで下がった。


「あっ!」


 途端に閃くものがあった。


「そうか! そういうことだったのか!」


 ヒントはやはり文の中にあった。

 この数字の羅列はある規則によって並んでいた。それを「妖精の悪戯」によって歪められたのだ。


「そうだ、『妖精』は部屋のことを指しているんじゃない!」


 頭の中でばらばらだったピースが音を立てて組み合されていく。

 暗号で書かれていた『アリス』とは、ある規則に従った数字の並びのことを指している。そしてその規則性、それは『鏡』だ。


 13254872

 23947265

 56275982

 96845231


 この数字の羅列を上下で半分に割る。

 すると、


 13254872

 23947265


 56275982

 96845231


 となる。

 元々『アリス』とは上の二段の数字の羅列を意味していた。

 しかしそこに『鏡』の世界が現れた。鏡は対象を逆に映し出す。

 だから下の二段は『アリス』と全てが上下左右対称でなければならない。だが『妖精の悪戯』により、この羅列は完全な対称とはなっていないのだ。

 そして『妖精の悪戯』によって変えられた数字の組み合わせとは、

 7、6

 2、9 

 3、8

 4、5

 この四つの組み合わせのことだ。

 そして最初の暗号に書かれた『妖精は双子』で『双子は忌子』であるということ。これは双子ではまずいから一人を間引いたということになる。

 つまり双子である『偶数』は駄目なのだ。

 この四つの組み合わせから、それぞれ偶数を排除する。

 そうすると、

 7、9、3、5

 この四つの数字が残る。これがダイヤルの数字なのだ。

 そしてこの数字の位置する場所、それはそのままダイヤルの位置と重なる。

 つまりダイヤルの番号は上から7、3、5、9となる。

 残り時間はもう二分を切っている。

 純也は震える手でなんとかダイヤルを合わせると、鍵を差し込んだ。


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