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ブレインキラー  作者:
36/80

???

 広間は熱気でむせ返るほどだった。

 肌にまとわりついてくるような濃厚な闇の中、蠢く人、人、人。

 広場の中央には三つの巨大なパネルが設置され、そこには現在ブレインキラーに参加しているプレイヤーたちの姿が映し出されていた。

 パネルの光に照らし出され、広場に蠢く人の姿が浮き彫りになる。

 彼ら、または彼女らは異様な風貌をしていた。この場にいる誰もが顔を隠す仮面をしているのだ。しかし彼らを包む衣装は傍目から見ても分かるほどに高額なもので、中には無数の宝石を散りばめたドレスを着ている婦人もいる。

 彼らが仮面をつけているのは彼らの正体が世に知れてはならないためであり、そのことからもこの広場で行われていることが合法のものではないことを示していた。

 囁きあう人の声には、誰が生き残るか、誰が死ぬか、そういう話題がちらほらと上がっている。

 男はそんな彼らを見下ろすようにして上階から広間を見下ろしていた。

 男がいるのは広場から一つ上のフロアーの一室、ゲームの管理を行う部屋だった。広場を見渡せるように、その部屋の半分は壁の代わりに強化ガラスで覆われている。


「ふん、屑共が……」


 忌々しげに吐き捨てた言葉には蔑みと憎悪がこもっていた。

 男はこのゲームの主催者だった。人の死がカジノのコインのように消費されていく閉じられた世界。そこでプレイヤーは愛や友情といった感情を頼りにゲームを進めていくが、いざ自分の命が危ないと思えば平気で仲間を裏切る。もしくは誰も信用せず、己が欲望のままに行動する。

 このゲームは人間の本質を映し出すゲームだった。

 そしてこの場に集まる者たちはそれを見て、賭け、興奮して盛り上がる。

 正直、ここまでこのゲームが評判を集めるとは思わなかった。

 ゲームの中で必死に足掻くプレイヤーたちを見て、階下の者たちは蔑み、嗤う。だが男からすれば、そんな彼らもまた愚かしく見える。


(人の皮を被った悪魔共め……)


 男は声には出さず呟いた。

 吐き気がするようなゲームだが、このゲームが作り出す利益は凄まじい。高額な参加費であるにも関わらず、多くの観客が集まる。定員は百名までだが、観覧に名乗りを上げる人数は千を超えるのだ。

 男の元には積みきれないほどの金が集まった。

 だが、そんなもので男の心が満たされるはずもなかった。心を占めるのは空しさと怒り。そして――


(もうすぐだ。もうすぐお前を引き摺り下ろしてやる。そのときこそ、俺の……俺達の……)


 ぎりっと握り締めた拳からは血が滴っていた。


「オーナー、そろそろ次のゲームを始めてはいかがでしょうか?」


 男の周りには彼のボディーガードとして集められた男たちがずらりと並んでいる。その中の一人が男へ囁いた。


「そうだな」


 男は鷹揚に頷きを返す。

 男がいる場所にも小型ではあるがモニターがあり、そこにはある人物が映し出されている。

 男はモニターの中の人物をじっと見つめた。


「まだゲームは終わらない。頑張って生き残れよ、純也」


 そう呟き、男――三笠拓哉は口元に薄い笑みを浮かべた。


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