第二ゲーム 『フラッグ』 その15
みんなが集まる先、試験場へ入るための扉の横には端末を読み込ませる部分がある。そしてその横に何か文章の書かれた石碑のようなものが埋め込まれていた。
「どうやらここに試験のルールが書かれているみたいだね。試験がどういうものかは分からないが、先にルールを確認しておくべきだと私は思う。また何か隠れたルールがあるのかもしれないしね」
留美の言葉に全員が頷く。
そして石碑を見る。
だが、その内容に全員が首を捻らざるを得なかった。
内容は以下の通り。
『 この部屋は妖精の集まる広場
貴方はこの部屋で正しい選択をしなければなりません
この部屋には
嘘が一つ
真実が一つ
嘘か真実が一つ
存在します
制限時間は十分
さぁ、虚実に惑わされず、正しい答えを示しなさい 』
「どういう意味なんでしょうか?」
美耶子が首を傾げる。
「おそらくこの部屋の中に、試験をクリアーするために必要な答えがいくつか提示されているんだと思う。それらの情報の正否を考えながら正解を探すってことだろうね。まぁ、確率論の問題ってことになるのかな」
顎に手を当てて、留美が呟く。
「なるほど、確かにそういう風に取れますね」
純也が納得いったように頷き、じっと睨むように石碑を見つめる。
「でもそれだけなんでしょうか? 他にも何か隠されているのかも。それに何かこの文章、変な感じが……」
しかし純也の言葉を遮るかのように、
ピッ
短い電子音が鳴り、試験場へ続くドアのロックが解除される。
全員の視線がドアへと向けられる。
池沢は出てこない。つまり、池沢もクリアーしたのだ。
そして全員がお互いの顔を見合わせる。
意味するところは一つ。次は誰が試験を受けるのかということだ。
この試験、後になればなるほど有利になる。
最初の一人目は何の情報もないままに試験を受けることとなる。
だがもし一人目が試験に落ちれば、試験の内容を他のメンバーに教えることが出来る。
そうなると、後で試験を受ける方は情報が多くなり、有利となる。
そしてこの場にいる全員は保険が利かない。つまり、失敗すればそれは死に繋がるのだ。そして最初に試験を受ける人は最も死に近いと言える。
だからこそ、誰が最初に試験を受けるかを決めかねるのだ。
誰か立候補しないかとお互いの顔を見合わせ、相手と目が合えばさっと視線を逸らす。
誰もが最初は不安なのだ。
「俺が、行くよ」
おずおずと、純也が手を上げる。
「先に約束する。もし俺が試験に落ちても、ちゃんと試験の内容をみんなに話すよ」
「純也さん……」
不安そうな美耶子に純也は微笑みかけ、自分の端末を読み込ませた。
ドアが開き、純也は固い表情をしながら試験場へと足を踏み入れていった。