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ブレインキラー  作者:
15/80

第二ゲーム 『フラッグ』 その7

 玲子たちとは簡単に合流出来た。

 純也は美耶子の怪我を治療するための救急箱を探していたとき、救急箱と一緒にマップのソフトを手に入れていたのだ。

 そしてマップを頼りに上階へと続く階段を目指した。

 玲子たちと出くわしたのは、ちょうど階段の手前辺り。

 純也たちはお互い無事であったことを喜び、そして再度チェックポイントの探索を開始した。

 それから二時間と少し。

 探索は順調とはいかないものの、それでもいくつかの未回収なチェックポイントを回ることは出来た。

 現在回収できたカードは純也が二つ、美耶子が三つ、玲子が四つ、庄之助が三つ。全員が規定枚数に達するためにはあと八枚のカードが必要となる。


「何だか随分簡単に進んでるわね」


 首を傾げながら玲子が言う。


「確かに簡単すぎる気がします。立ち入り禁止区域もそんなに数はありませんし」


 美耶子もそれに賛同した。

 ルールにあった立ち入り禁止区域。マップに表示された区域は三つだけ。それもチェックポイントとは無関係な場所にあったりする。

 トラップも大体見分けることが出来るようになってきた。

 足止めを喰らうようなトラップはあれど、命を奪う類のトラップは存在しておらず、注意深く辺りを見ていれば回避することは容易かったのだ。

 しかしだからこそ、純也は考え続けていた。

 このゲームには恐らく、隠されたルールが存在する。

 制限時間の多さ。

 とにかくこれが気になっていたのだ。

 何故、このゲームにこんなに多くの時間を使う必要があるのか。

 休憩を取ったりするのにある程度の時間は必要だが、それにしても長すぎる。

 最後の試験を解くための時間なのだろうか?

 そういえば、カードを回収することばかり考えて、最後に待ち受ける試験について純也は何ひとつ考えていなかった。

 試験を受けるには、カードを五枚集める必要がある。

 そしてカードは全員の分がちゃんと用意されている。

 だから全員が試験を受けることが出来るのだ。今回も上手くいけば、誰一人として犠牲者を出すことなくクリアー出来るかもしれない。

 と、そこまで考えて純也は自分の思考の中に何か違和感を感じた。

 何がおかしいというのか。

 純也はもう一度自分の思考を振り返ってみた。

 最後の試験を受けるにはカードを五枚回収していないといけない。

 そしてカードは全員分が用意されている。つまり十三人かける五つで六十五個だ。

 だから全員が試験を受けることが出来る。


「待て、それがそもそもおかしいんだ……」


 曖昧な形だった違和感が明確な形を帯びてくる。

 純也は端末を操作し、『フラッグ』のルールの項目を表示させた。


『  第二ゲーム フラッグ


 一 制限時間内に試験に合格し、次のフロアーへ上がってくださ

   い。


 一 試験を受けるには、チェックポイントに設置されたカードを

   端末に五枚以上読み込ませる必要があります。


 一 カードは一枚につき一つの端末にしか読み込ませることは出来

   ません。


 一 カードはチェックポイント一つにつき、一枚のみ配置していま

   す。


 一 試験に失敗した場合、読み込ませたカードの情報は無効となり

   ます


 一 このゲームから立ち入り禁止区域が発生します。

   立ち入り禁止区域に進入した場合、首輪の爆弾が爆発します。


 一 制限時間は六時間です。


                                            』


 表示された『フラッグ』のルール。その一部に純也の視点が止まった。


「あっ!」


 そして純也は気付いた。気付いてしまった。このゲームの隠されたルール、その悪意性に。

 急に声を上げた純也に美耶子たちは驚いたように純也の顔を見上げた。

 しかし純也はそれに答える余裕はなかった。

 もし自分の考えが当たっているとするならば、このゲームは全員がクリアーすることは可能かもしれないが、それはかなり低い確率になる。むしろ高確率で死者が出るはずだった。

 思い過ごしであって欲しい。そう思うが、純也は自分の考えを否定しきれない。

 そうこうしているうちに、純也たちは次のチェックポイントの場所までやって来てしまった。


「あっ、この部屋の中にチェックポイントがあるわ」


 玲子が言った部屋は、今までに何度も見てきた鉄製のドアがついた部屋だった。

 罠がないことを確認し、玲子はドアを開けようとする。

 だが何故か純也はこの部屋に入ってはいけないような気持ちに襲われた。

 何か邪悪なもの、いや精神を冒すものがこの部屋にはある。

 そんな薄気味悪い予感のようなものを感じたのだ。


「次は三笠君がインストールするといいわ。あなただけまだ二つだも……」


 唐突に玲子の言葉が止まる。部屋の中を見た玲子は魚のように口をパクパクと開閉させ、目を大きく見開いていた。

 ついで部屋の中を覗いた庄之助は蒼白な表情で言葉を失い、美耶子は悲鳴をあげ、瞳に涙を浮かべながら純也の腕にしがみついた。

 ああ、やはり……。

 部屋の中からあふれ出す濃厚な闇の気配に、純也は自分の考えが当たっていたことを実感した。


 薄暗い部屋。

 ベッドの上では、首にロープを巻きつけられた状態で羽山が死んでいた。


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