08 戦争~2精霊の言い合い戦争、加速するレンの心労~
リリティアとシルディアの言い合い戦争、勃発。
ちょっと新キャラ追加してますので。
あと、後書きでまたプチアンケ取りますので。
「・・・あれ?」
昨日の騒動のせいで、レンは部屋に戻ってすぐベッドに倒れ伏して眠ってしまった。その時はうつ伏せで着替えることもしなかったはずだ、とレンは思った。
なのに、今起きたばかりのレンはどうか。寝間着に着替えられており、仰向けできちんとベッドに寝転がっていた。さらに体も洗われているようで、汗臭さを一切感じなかった。
「・・・何でだろ?・・・シルディアはさすがにこんなことしないだろうし、リリティアは・・・するかも」
原因=リリティアと結論付け、起きあがろうとした時。
「・・・あれ?」
本日二度目の「あれ?」を言う。両腕を抑えつけられており、体が起きあがらない。というか、何者かが抱きついていて起きあがれない。
「・・・はぁ、これ絶対リリティアとシルディアだよね・・・」
右側をちらりと見たら、やはりリリティアがいた。レンに抱きついており、腕は彼女の胸の間へと沈んでいた。ちなみに服もちょっと肌蹴ていたり。
「・・・ということは・・・」
左側を見たら、やっぱりという感じでシルディアが抱きついて眠っていた。彼女からすれば頑張って抱きついたのだろう、リリティアよりも力が入っており、かといってリリティアのような状況はなかった(ちなみにシルディアは多少あるがリリティアに比べると小さいものである。そのため埋もれてはいないもののぷにっとした感覚がレンを襲っていた)。
「・・・ふぅ、二人を起こさなきゃ・・・」
とりあえず自分の体を左右に揺すって二人を起こそうとしてみた。
「リリティア、シルディア、起きて!」
「・・・うに・・・やぁ・・・」
「・・・んみゅ・・・?」
リリティアは寝ぼけてさらに体を押し付けてきて、シルディアはうっすらと目を開けた。
「・・・ぁ・・・ぁぅ・・・」
目を覚ましたシルディアは、レンと目を合わせた瞬間、顔を煙が出るほど真っ赤に染めてしまった。
「お、おはようございましゅ・・・ごしゅじんしゃま・・・」
ぷしゅー、と音が聞こえてきそうなほど顔を真っ赤に染めたシルディアが、レンに対し「ご主人様」と(ちゃんと言えてなかったが)言いながら挨拶をした。その恥ずかしがりがちょっと可愛いと思えたレンであった。丁度その時、リリティアが体を起こした。
ちなみにレンの腕からはもう離れている。
「・・・れん~・・・」
起きあがったと思ったリリティアが突然レンにしなだれかかってきた。まだ寝ぼけているようである。
「り、リリティア!起きて!」
「うにぃ~・・・やぁ~・・・」
抱きついているため自分を揺することで体を揺らすことの代替としたレンは、どうにかしてでもリリティアを起こそうとした。・・・が。
「うにゅ~・・・あとごふん~・・・」
かえって逆効果だった。逆にむぎゅっと抱きつく力を強める結果になってしまった。
「・・・ぁぅ・・・」
そしてその横ではシルディアが顔を赤くして俯いていた。
「え、えと、その、き、気をつけて、ください・・・ご、ご主人様・・・」
「あ、うん。ありがとね、シルディア」
「・・・ぁぅ~・・・」
規則に則り、シルディアは待機。ちなみにリリティアとは違い、シルディアは下位の水精霊なため、リリティアほど警戒する心配が無いのだ(リリティアが異常だっただけ)。
「むー・・・」
そしてリリティアは膨れっ面。シルディアに優しく接しているレンが羨ましくて仕方がないのだ。
「レン!行こ!」
「わ、わぁっ!?」
嫉妬され引っ張られたレンは、まるでドナドナが聞こえてくるような感じだった。
「よう、レン・・・ってなんかお前死にそうだな」
「アッシュ・・・色々・・・あったから・・・あはは・・・」
リリティアは左腕に抱きつかれた状態で机に突っ伏すレンに、彼の親友、アッシュが声をかけた。
「顔真っ青だしな・・・。・・・えーと、リリティアだっけか?少しくらい休ませてやれよ?」
「煩い黙れ」
少しくらいレンのことを思いやれ、とリリティアに意見してみたアッシュであったが、「煩い黙れ」の一言であえなく撃沈した。
「ちょっと!アッシュに黙れなんて言わないでよ!」
「・・・なに?下級の光属性如きが私に文句?」
アッシュが使役する光精霊がリリティアに対し文句を言うが、リリティアは既に臨戦態勢。
「・・・ネフィ、多分考えてくれるはずだ。落ち着け」
「・・・アッシュがそういうなら・・・♪」
「・・・尻軽」
「なんですってぇっ!?」
結局この二人の言い争いは、それぞれの使役者が叱ることで終息した。
「・・・ご主人様に何かできること・・・ないかなぁ・・・」
規則に則ったため、部屋に一人残ったシルディア。部屋の中をきょろきょろ見回してやれることを探した。
「・・・お洗濯でもしようかな・・・」
シルディアは昨日レンが眠った後着替えさせた服+下着の入ったかごを持ち、外に出た。
ちなみにレンを着替えさせたのはリリティアで、シルディアは恥ずかしがって顔を伏せながらも隙間からちらちらと見ていたりしていた。
講義を受けているレンはというと。
「・・・すぅ・・・」
眠っていた。その横ではリリティアが珍しくレンに抱きついておらず、彼のノートに板書をしていた。・・・それ以外のことでちゃんと書かないといけないことも書いていた。
何故レンが眠りリリティアが板書をしているのか。それは先程のアッシュの言葉を受けてリリティアが行動をとったのだ。単純に『寝ててもいいよ、私が板書してあげる』と言って。
リリティアの文字は誰が見ても達筆と言っていいほどの綺麗な文字で、傍から見れば非常に読みやすいものだった。女の子独特の丸文字だ、とか変に適当に書かれた、というものでもない。
「最上位の精霊は今現在通説なら6属性・・・火・水・土・風の四属性と光・闇の二対反属性だ。だが最近、その通説が破られるようになってきている」
最前列で教鞭を執る人間(リリティア的に)の話に対し頭の中の引き出しを漁りながらいろいろと書いていた。
(・・・最近最上位属性で出現したのは確か氷属性だったような・・・。私は準最上位って言われてるだけだからよく分からないけど・・・)
リリティアはその情報を詳しくノートに記しておいた。
『第7の最上位精霊 属性氷 生息地:霊峰マリュート』と。
「ふぅ・・・」
外に出てきたシルディア。目の前にあるのは物干し竿。
「洗剤はちゃんと持ってきた・・・水は大丈夫・・・よ、よし!」
シルディアは物干し竿も木も壁もない場所に立つ。
「えっと・・・うぉ、『ウォーターボール』!」
シルディアが宙空に向けて叫んだ時、中途半端に大きい水の塊が出来た。
「ここに洗濯物を入れて・・・洗剤をちょっとだけ入れて・・・回って!」
シルディアの言葉に従うように、水の塊はぐるぐると回り始めた。一定方向に回り、止まって回転の向きを変えて、また止まって・・・を繰り返す形で。
そして、その行動が終わった時、シルディアはかごを塊の下に置いた。直後、塊からばちゃばちゃと音を立てて洗濯物が落ちてきた。全てかごの中に入っていた。
「あとは・・・これを・・・干して・・・」
ちゃんと干すべき所に干し、ちゃんと伸ばして仕事を終わらせた。
(・・・ご主人様、褒めてくれるといいなぁ・・・えへへ・・・)
講義も終わり、部屋に戻ってきた時、二人の戦いのゴングが鳴った。
「レン、私のノートどうだった?」
「うん、凄く見やすかった。それに必要なことがちゃんとまとめられてたから後で見直す時に助かるよ」
リリティアに、自分が書いたノートのことを聞かれ、率直な意見をいったレン。すると右腕の裾をくいくいと引っ張られる感じを覚えた。
「シルディア?」
「あ、あの、そにょ、ぁぅ・・・」
顔を真っ赤にして「あうあう」いい始めたシルディア。・・・が、レンはなんとなく意味を察した。帰って来た時に感じた違和感の理由が分かったからだ。
「ひょっとして・・・洗濯してくれたのってシルディア?」
「・・・っ!・・・っ!!」
顔を縦にぶんぶんと振って肯定の意を示すシルディア。
「ありがとね」
「~~~~~っ!!」
頭に手をポン、と置いた時、シルディアは恥ずかしさと嬉しさが混ざったよく分からない感情に声の出ない悲鳴を上げていた。
「・・・むー・・・」
しかしそれが面白くないのがリリティアである。
「レン、私の方が頑張ってるよね?」
「えっ!?」
急に声を荒げたリリティアに思わず声を上ずらせるレン。
「・・・ぅ・・・」
シルディアも裾を握る力を強めた。対抗心の現れである。
「私だよね!?」
「私・・・ですよね・・・?」
二方向からの突きささる視線。レンはそれに必死に耐える。・・・が。
『・・・』
断続的に突きささる視線。それにレンは堪えられなくなり・・・
「ふ、二人とも頑張ってた・・・ということでいいかな?」
という妥協案を提案してみた。・・・が。
「どっちかにして!それで私を選んで!!」
「う~・・・」
また刺さる視線。しかも鋭くなったような感じ。
「ただ洗濯したあなたとはやってることが違うの!私はレンの代わりに役に立つノートを作ってたんだから!!」
「わ、私だって、頑張ってお洗濯したもん・・・・!」
レンを挟んで二人の精霊が言い合いを始めた。・・・とはいえシルディアがかなり押されているが。
「・・・頼むから仲良くしてよ・・・ね・・・?」
この時点でレンの心労はかなり加速していた・・・
プチアンケですが・・・
今回は
「レンが契約する精霊はリリティア・シルディア以外にもいるべきかいざるべきか」
です。言い換えれば「これ以上レンに心労をかけるべきかかけざるべきか」とも。
期間は5月9日までです。プチアンケなので期間は短め。
感想、待ってます。