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07 遭遇~契約したのは内気な水精霊~

アンケ結果の精霊が登場しますよー。


・・・さて、内気な子に見えるだろうか凄い不安ですが・・・どうぞ。

レンのリリティアと暮らす一週間は、本当にいろんな意味で忙しいものだった。


リリティアの弱点が判明したその翌日は、リリティアが「えっちなことしたお返しだ」といって自分の胸にレンの顔を埋めて窒息させたり、どうにか顔を上げようとして胸を揉んでしまったり。


授業で言えばリリティアの甘えと内容の難しい授業の板挟みに遭い。



そんな一週間を乗り越えたレンは、学生寮食堂で朝食をとりつつリリティアに提案した。



「リリティア」

「んむ?」



ご飯をもきゅもきゅと食べるリリティアは、レンの呼び掛けに対し、口に含むものを飲みこむこともせず返事した。そんなリリティアが可愛いと思うレン。



「今日さ、精霊の森の近くにある家に行かない?」

「・・・(ゴクン)っ!・・・レンが前住んでた家?レンが来るまで私ずっとそこで住んでたよ?」

「だと思った。リリティアの私物を取りに行くことを考えてたんだ」



リリティアは一つ考える。自分の私物はなんだったかを。そして、それすら持ってくる暇もなかったことを。



「・・・レン、私の私物・・・見るの・・・?」

「いや、リリティアが見せたくないなら見ないけど」

「・・・だって、あるの私の下着と服だけだもん。ちっちゃくなっちゃったのは捨てちゃうけど・・・」



リリティアが珍しく顔を赤くして俯いているのを見て、真剣に考えるレン。



「・・・じゃあ、リリティアが荷物まとめ終わるまで家の前で待ってるね」

「う、うん・・・」



話の済んだ二人はそのまま朝食を済ませ、許可をもらって精霊の森に向かった。・・・精霊の森は通過地点ではあるが。


なお、教師からは「精霊からの四半契約に気をつけろ」と釘を刺されていた。







































「・・・久しぶりだなぁ・・・ここも」

「そうだね・・・」



レンとリリティアはある場所に来ていた。その場所とは、二人が知り合うきっかけになった場所。



「もう10年も前になるんだね、リリティアがここで傷ついて倒れてたのって」

「そうだね・・・あの時は・・・今もだけど、人間なんて信じられなかったから」

「・・・それもそう・・・だね。人間は精霊をパートナーや家族としてじゃなくて、奴隷とか道具とかとしか見てないから・・・、リリティアが人間を信じられないのは無理ない・・・かな」



リリティアの言葉にレンが俯いた状態で呟く。すかさずリリティアが弁明に入る。



「で、でも!レンやレンのお父さんとお母さんは信じてるよ!レンやレンのお父さん達がいなかったら私道具として扱われてたかもしれないし、それに・・・レンがいたから頑張ってこれたんだもん・・・」

「・・・ありがと」



周りからすれば「もう結婚しちまえよお前ら」と言われそうな雰囲気な二人。実際、周りにいる精霊達がそう思っていた。・・・ただ一人を除いて。


































「・・・」



木の陰から一人の少女がレンを見つめていた。



「・・・あの人・・・私を助けてくれた人・・・」



怨む目線ではなく、嫉妬の目線でもない。純粋に恋する乙女の視線であった。



































「・・・着いちゃったね」

「そりゃ着くよ。いつまでも森の中をふらふらと歩いているわけにはいかないからね」



二人が出会った場所から20分ほど歩いたところに、目的地はあった。元々レンや彼の両親・・・クロスフォード家が暮らしていて、少し前まではリリティアが一人レンを待ち、暮らし続けていた小さな家。かつて家族の温もりがあった、小さくも思い出深い家が。



「じゃあ外で色々見て回ってるから、終わったら呼んで?」

「うん」

「・・・流石にここなら僕が一緒にいなくても大丈夫でしょ?」

「・・・多分」



一抹の不安を感じながらも、リリティアが家の中に入っていったのを見届けたレン。



「・・・さてと。ちょっと前に気になったリリティアのラブレターのような石碑を撤去しなきゃ・・・」



レンは書置きを残し、石碑が置かれていた大樹の元へと向かった。書置きには『大樹の所に行って、石碑を持ってくるから』とだけ、書いてあった。


































「ふえぇ・・・」



その頃別の場所では、少女がおろおろしていた。



「あ、あの人、見失っちゃったよぉ・・・えうぅ・・・」



先程レンを恋する乙女の視線で見つめていた少女は、その相手を見失い、森の中をうろうろしていた。目は既に潤んでおり、決壊するのも時間の問題、といったところ。



「・・・ど、どこぉ・・・」



彼女の足は、無意識のうちに大樹の方へと向かっていた。・・・偶然にも、その探している相手のいる大樹へと。



































「ふぅ・・・着いた」



元の自宅から久しぶりに向かった大樹は、8年の間に大きく道が変わり、辿り着くまでに時間がかかった。



「・・・けど、本当にここって変わらないなぁ・・・」



改めて大樹を見上げると、懐かしいものがやはりあった。背比べをした、幹に刻まれた傷然り、太い枝に縛り付けて取れなくなった縄梯子然り。


人の手がつかなかった、というのが一番の理由だろうと思うレンであった。



「さてと・・・どこだったっけ?」



キョロキョロと目的の石碑を探していた時、何かがふと目に映る。



「・・・黒髪?」



映ったのは黒髪・・・そしてレンをじっと見つめている少女。



「誰だろ、精霊かな・・・」



さっきからぴょこぴょこ見える一本のアホ毛が妙に気になっているレン。



「・・・後で声、掛けてみるかな?」



とりあえずそう呟き、石碑に向かい、撤去しようとした。・・・が。



「・・・う、ぐ、ぐ・・・!お、重・・・い・・・!!」



はっきりと言えば石碑というには小さいものだったが、やけに重かったのだ。理由は・・・推して知るべし。



「・・・重いなぁ・・・これ、本当にリリティアが・・・?」



あまりの重さにレンは思わず石碑に腰を下ろしてしまった。




































(あの人・・・きっと精霊使いなのかなぁ・・・)



レンを見つめる少女はそう思っていた。



(は、半契約出来たら・・・四半契約でも・・・出来たら・・・ずっと一緒・・・)



そして一歩踏み出して・・・すぐにその一歩を引っ込めていた。それを延々と繰り返すだけとなっていた。




































「・・・あの子・・・本当になんなんだろ・・・」



さっきから一歩踏み出しては退いているという奇行を見せている少女をじーっと見ていたレン。



「さっきから動いたり引いたりしてるから・・・気になっちゃうんだよなぁ・・・」



彼女は恥ずかしがりなのだろうと推測したレンは、ちょっと考えてみた。彼女に下手に近づくと逆にびっくりしてしまうだろうし、かといってそのまま見てるだけだとリリティアが心配する(下手したら家の中でぐったりしている可能性が)。



「・・・しょうがない、声掛けてみようかな」



レンは石碑から腰を上げ、さっきからひょこひょこ顔を覗かせている少女の元へ歩み寄ってみた。



































「・・・ぁぅ・・・ぁぅ・・・」



相変わらず一歩が踏み出せず、行ったり来たりを繰り返す少女の足。顔も下を向いて、意識も『近づきたい、でも恥ずかしい』という考えで埋め尽くされていたため・・・



「・・・あの・・・どうしたの?」

「・・・ぴゃっ!?」



突然聞こえた声に裏返った声を出してしまった。



「えっと・・・さっきから僕のこと見てたみたいだけど・・・どうしたの?」

「えと、そにょ、あにょ、あうぅ・・・」



何かを言いたそうにしていたが、言葉は尻すぼみになってしまう。



「・・・?」



レンも何が言いたいのかさっぱり理解できず(「あの」「その」で理解できるわけがないが)、呆然と立っていた。



「あ、あにょ!わ、わたしと、け、けーやく、し、しちぇくだしゃい!!」

「・・・え」



突然叫ぶように告げた少女の口から聞こえた言葉に、レンは思わずギョッとした。なぜなら言葉に『契約』という言葉が含まれていたからだ。



































「はっ!?」



旧クロスフォード家自宅にて自分の私物を纏めていたリリティアは、直観的に何かに気付いた。証拠にアホ毛が直立した。



「レンに他の精霊が近づいてる!?」



自分の持っていた下着(上の方)を適当に鞄に突っ込み、高速靴履きをして外に出て、大樹の方に駆けていった(一瞬で書置きを見つけたからだ)。




































「け、契約!?ということは君精霊!?」

「は、はひ、み、水属性の、し、シルディア、でしゅ・・・」



水属性の精霊、シルディアは木の蔭に隠れ、言葉が途切れ途切れになりながらも名乗った。



「・・・うーん、契約っていってもね・・・」



レンはちらりとシルディアの方を見た時、一瞬契約してあげたいと思ってしまったが、すぐに首を振って考えを戻す。彼女の上目遣いが心にぐさりと刺さったような感じだったからだ。



「じ、自分は大切にしなきゃダメだよ」



とりあえずシルディアを諭し、面倒事(レン視点)を回避しようと試みた。



「・・・」



が、目は『契約して』と訴え続けており、涙を湛え始めていた。



「・・・けどなぁ・・・」



やっぱり契約するわけにもいかないレン。頭にはリリティアのことを思い浮かべていた。ちなみにレンの属性適性は闇・水なため、シルディアとの契約は実際には滞りなく行えたりする。



「・・・」



相変わらず涙を湛えた上目遣いで見つめてくるシルディア。レンも良心の呵責を覚え始めてきた頃だった。



〈レ~ン~っ!!」

「うわぁっ!?」



突然腰に感じた衝撃。そのままレンは横倒しになった。



「痛た・・・り、リリティア!?」

「何もされてない!?大丈夫!?ケガしてない!?襲われてない!?」



過保護レベルで、しかも矢継ぎ早に問いただしてくるため、レンも答える暇がなかった。



「・・・レンに何したの・・・」

「・・・っ!!」



リリティアの凄味のある声と明らかな敵視のオーラに気圧されたシルディアは何もしてないことを証明するため、木の陰に隠れながら首を横に振った。



「レン、戻ろ?もうちょっとで私の物鞄に全部入れ終わるから」

「あ、うん・・・」



リリティアに腕を引かれて歩こうとした時、不意にグイッと引っ張られる感じを覚えたレン。



「~~っ!」



シルディアが「行かないで」と言わんばかりに抱きついていた。



「・・・リリティア」

「なに?・・・レン、なんでその子抱きついてるの・・・?」

「・・・僕と契約したいって・・・」



一瞬リリティアは絶望感に染まりきった顔を見せた。が、ちょっと考えて告げた。



「・・・その子と契約しても・・・いいよ?」

「ほ、ホントに?」



リリティアの言葉に意外そうな顔をする連と、嬉しそうな顔をしたシルディア。



「・・・けど!」

「け、けど?」



不意に大きく声を上げたリリティアにびくっとしたレン&シルディア。



「し、真契約は私としてよ!」

「し、真契約?」



聞き慣れない言葉を聞いたレンは、思わず聞き返してしまった。リリティアはリリティアで顔を真っ赤にしていた。



「・・・私もしたいよぉ・・・ずるい・・・」



シルディアも顔を赤くして羨ましがっていた。



「し、真契約って何なの?」

「・・・た、多分講義で教えてもらえると思うからその時まで言いたくない・・・よ・・・」



最後は顔を俯かせてしまったため、尻すぼみになってしまったリリティア。



(・・・は、恥ずかしいことなのかな・・・)



レンは興味があるようなないような複雑な感じのまま取り合えず旧自宅へと向かった。シルディアはちゃんと付いてきていた。


































ちなみに半契約は教師立会いの元、体育館で行われた。リリティアはその光景を見ていた間物凄い不機嫌そうな顔をしており、それを鎮めるためにレンは彼女を思い切り抱きしめるという光景が見られた。

次回は予定としては08更新します。


内容は精霊による戦争勃発です(何の、とは言いません)





近いうちに用語解説とかやりますので(今回出てきた「四半契約」とか「半契約」とか、その辺の用語を解説する目的で)。

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