25 緊急~精霊姫と呼ばれる光の最上位~
今回新キャラ!今までとは一風変わったキャラが出ます。
ついでに激戦。さてどうなるやら(特に建物)?
「・・・ふぅん」
国の国境付近にあるとある神殿。そこで1人の少女が新聞を読んでいた。
「人間如きが最上位精霊を3人、希少の龍を従える、か。・・・人間語と時に媚び諂う等とは・・・」
苦虫を噛み潰した顔で記事を読む少女。彼女もまた、精霊である。読んでいるのが精霊用の新聞であるのがその証明だ。
「一度顔を見に行くべきか。情けない最上位精霊共の」
精霊少女は座りこんでいた窓際から飛び降りた。そのまま空を駆けるように走り出した。
「・・・暑い・・・」
夏真っ盛り・・・そんな朝。ベッドにはレン以外にも住人がいた。・・・彼と契約を果たした精霊たちである。
「ふにぃ・・・」
「・・・んっ・・・ぁ・・・」
「ちょ、誰!?なんか手に柔らかいもの当たってるけど!?」
朝から精霊達に抱きつかれ、誰かの胸に手が当たるラッキースケベ発動状態。ちなみにその中にいないのは・・・
「あの、シルディアさん、にんじんはこれでよかったですか?」
「んー・・・もうちょっと厚くても大丈夫じゃないかと」
シルディアとノエルだけ既に起きて、朝食の準備を進めていた。
「・・・んぅ、レン・・・もっと好きにしてもいいのよ?」
「この柔らかいのシンシアだったの!?って、ちょ、シエル!?んむぅっ!?」
「んー・・・」
ベッドの上は相変わらず戦争状態となっていたが、キッチンは平和だった。
「あ、ご飯炊けました」
「・・・うあー・・・」
「あの、ご主人様?さ、さすがに恥ずかしいのと怖いのとで辛いのですが・・・」
「・・・ごめん、シルディアに抱きついていたりすると落ち着くんだ・・・。・・・今まで癒しの存在でもあったから・・・」
レンは絶賛シルディアの膝に頭をのせリラックス状態になっていた。シルディアとしては頼ってくれてたりしている部分には嬉しいのだが、よくよく考えるとレンを独占しているという状況であり、睨まれていたり嫉妬の目線を向けられていたりで辛かったりもした。
「えぅ〜・・・皆さん目線が怖いですよぉ・・・」
「・・・ここが人間共が私達精霊を使役する等と大層な事をぬかすよう仕向ける所か」
精霊少女は養成所の前にいた。
「さて、件の人間を探すとするか」
少女は新聞の切り抜きを改めて見る。
「・・・あのー・・・何か当養成所にご用でしょうか?」
「・・・む」
入り口前だったため、養成所の入口にある詰所の女性に聞かれた。
「レン・クロスフォードという人間を探しているんだが」
「・・・はぁ、クロスフォード君ですか・・・」
女性は名前を聞かれ、詰所の通行記録を見漁った。
「今日はまだ寮の方にいますね。多分今日は寮に居続けるんじゃないかと」
「寮?」
「寮はあっちです」
示された方へと少女は歩き出した。
「・・・まったく、面倒な作りをしている」
「・・・っ!?」
唐突にシンシアが過剰反応をした。
「どうしたのシンシア?」
「・・・何かしら、とてつもなく強い力を感じたの・・・」
「強い力?」
レンが聞き返した時、今度はリリティアも反応した。
「これ・・・二対反!!」
「に、二対反!?ということはリリティアの逆だから・・・光!」
ぽかんとしているルナーリアとノエル以外は慌て始めたのだ。リリティアも反応する、強い光の力。それが意味することはつまり・・・
「・・・最上位級が・・・『精霊姫』が近付いて来てる・・・!?」
・・・この事実だけだった。
数分後には、この事態は急展開を迎えるのだった・・・
「・・・で、何のために来たのかしら?『精霊姫』さん?」
「理由も分からないなんて、落ちぶれたものだな。・・・『魔女』よ」
寮の食堂、そこではかなり緊迫した空気が張り詰めていた。シンシアと『精霊姫』、2人の精霊が席を共にしている時点でも恐怖ものだが、互いに牽制しあう目線だったのが拍車をかけていた。
「・・・なに、お前と雑談するつもりで来たわけではない」
「なら、何の目的で来たのかしら?」
「・・・やはり人間と共生する精霊は・・・例え最上位と言えど愚かになるものか」
「・・・何が言いたいのかしら?私達を『解放』するとでも?」
シンシアが言った言葉に、『精霊姫』はふん、と言ってシンシアを見た。
「その通りだ。お前のような最上位が軟弱な人間に飼い馴らされていいものか?」
「軟弱・・・!?」
思わず立ち上がってしまうシンシア。
「そうだ。・・・まあ、そこの人間は最上位3人、準最上位1人と龍属性1人・・・少しはやるようだが、どうせそこいらの有象無象と変わらんだろう」
シンシアは『精霊姫』を睨みつけた。『精霊姫』は完全に人間を見下し、認めようとしていない。
「・・・私は貴女の考えには賛同できないわ」
「そうか。お前も堕ちたものだな、そんな人間如きに好き好んでつこうとは」
『精霊姫』がそう言った瞬間、シンシアが思い切り机を叩いた。
「私の・・・私の初めての想い人をそんな等と言わないで頂戴!!」
「・・・ほう、想い人、か。人と精霊、結ばれる事などないだろうに」
「・・・そんなことっ!!」
シンシアが噛みつくように言うが、『精霊姫』はどこ吹く風。しかし、それをよしとしない精霊がいた。
「レンの事悪く言うのは許さない!!」
「・・・いくら最上位と言えど・・・許しません!!」
リリティアとシルディアが、怒り心頭と言わんばかりにシンシアの横にいた。最上位4人が睨みあうという異常事態に、食堂はある意味封鎖されたようなものになっていた。
「・・・そうか。闇、水、氷・・・3つの最上位が人間に狂わされたか」
『精霊姫』がそう言った瞬間、シンシアが口を開いた。
「・・・決闘よ」
「・・・ほう?」
開いた口からは決闘を望む声が。
「私と戦うと言うか。お前たちじゃ勝ち目がないと知っていてもか?」
「高を括っていたら足元を掬われるわよ?」
『精霊姫』はシンシアの言葉に眉をひそめたが、すぐに口を開いた。
「・・・ならばその決闘、私が勝った場合はその人間との契約、全ての精霊に切ってもらうぞ」
「そうね・・・逆に私達が勝った場合、レンに謝罪してもらうわよ」
正に一触即発と言わんばかりに立ち睨みあう4人。ノエルとナジャだけは震えてその場を見ていたのだった・・・
「決着は戦闘不能になるか降参を告げるか。どちらかを満たした場合よ」
「いいだろう、どうせ降参するのはお前たちだ。3人まとめて来るといい」
その言葉にシンシアはいきなり無詠唱で剣を作る。
「嘗めていられるのも・・・今のうちよ!!」
「どうかなっ!!」
2つの最上位精霊が同時に作り上げた刀を手に衝突した。傍らではシルディアが・・・
「総てを見護りし命の礎よ、その礎を以て我が仇に重き一撃を与えよ・・・『水機関銃』!!シンシアさん、避けてください!!」
シルディアが告げた瞬間、シンシアは鍔迫り合い状態を回避して一歩下がる。その刹那、シルディアが形成した『水機関銃』が『精霊姫』に対し火を噴いた。
「くっ、『光防御・騎士鎧』っ!!」
『精霊姫』は直撃するまでの一瞬で防御鎧を纏い、全弾防御に成功した。
「・・・まさかコンビネーションで決めてくるとはな。だが・・・甘いっ!」
甘い、ただその一言の間に鎧を掻き消し、改めて攻撃態勢に入った。
「・・・流石。稀代の最上位と言われるだけあるわね、フィエルディア!」
「嘗めないでもらいたいものだな!シンシアっ!!」
再び鍔迫り合いに突入した2人。しかし僅かにシンシアが競り負けていた。
「く、うっ!」
「魔女も・・・落魄れたものだなっ!!」
「あっ!ぐぅっ!?」
剣を弾かれ、腹へと重い一撃。吹き飛ばされたシンシアは壁に思いきり叩きつけられる。
「シンシア!」
「くぅっ・・・へ、平気、よ・・・!」
レンは思わず声を上げるが、よろめきながら立ち上がる。
「・・・私が戦う」
今まで手を出していなかったリリティアがついに声を出す。
「ほう?ひよっこ最上位が私に挑むのか?」
「・・・挑む。私達が負けたら・・・レンと離れ離れになるから」
リリティアは『精霊姫』―――フィエルディアと対峙した後、レンを見た。
「・・・レン、私、絶対負けない。ずっとレンを待ってたんだもん、絶対別れたくないんだ」
リリティアはレンに固く誓って、フィエルディアに向き直った。
「本気で来い。さもなくば・・・貴様を苦しめることになるぞ」
「・・・本気だから」
フィエルディアの挑発に、リリティアは前に手をかざすことで応える。
「・・・世に眠りし数多なる闇の眷属よ・・・我が声の元に集いその姿を具現せよ・・・!」
(禁術!?こいつ、闇の禁術を扱えるとでも言うのか!?)
唱えられた言葉に驚くフィエルディア。咄嗟にフィエルディアも応対する。
「総ての礎たる創世の光よ、我が声の元永久より目覚めよ!」
対抗する形で早口で詠唱する。リリティアの詠唱より先に詠唱しきるつもりで。
「『闇の眷属』!」
「『光の使者』!!」
ほぼ同じタイミングで発動し、リリティアの周りには相変わらずの黒い異形が、フィエルディアの周りには、強い光を放つ塊が浮かんでいた。
「き、禁術・・・!フィエルディア・・・貴女も禁術を・・・!?」
想定外の禁術。フィエルディアが禁術を使ったという事態に焦りを隠せないシンシア。
「行けぇっ!!」
「行って!・・・一部は自分の盾とする・・・眷属よ、その身を我が盾とせよ!」
全弾攻撃に回したフィエルディアと、一部を盾として回したリリティア。
「・・・このままじゃリリティアが競り負ける・・・」
「お姉ちゃん!?」
「・・・だって、あの光属性の精霊の周り・・・見て」
シエルが感じたリリティアの敗北。理由は・・・
「なに、あの弾幕・・・」
リリティアの異形たちが対応できないレベルの光の塊が弾幕となって盾を襲っていた。
「・・・私が援護にいk「来ないで!」リリティア!?」
援護に向かおうとしたシエラを声だけで制したリリティア。どうして、と思うシエラだったが・・・
「・・・放っておいてもリリティアが勝つわ」
「そう、ですね・・・。リリティアさんが勝つと私も思います」
シンシアとシルディアが同時に「リリティアが勝つ」と断言したのだ。
「ど、どうして!?このままだとあの盾が破られてリリティアが!」
「・・・フィエルディアを見なさい」
「・・・え?」
シンシアに言われ、シエラはフィエルディアを見た。そしてリリティアも見て、両者を見比べる形になった。
「・・・あの人、汗掻いてる!?」
「そう。おそらくフィエルディアは禁術を無理に使ってる。リリティアはどういう理由でかは知らないけれど、あの術を効率よく扱ってる。それに比べてフィエルディアは・・・効率無視で発動してるのよ。言っている意味、分かるかしら?」
「えー・・・っと?リリティアは効率よく術を発動してて、あの人は効率無視で使ってる・・・」
「簡単に言うと、先に力を使い果たすのは・・・ふぃえ、る・・・えっと?」
「フィエルディア、よ。見れば分かるけど、彼女は今最大火力で術を発動しているの。いくら精霊力の総量が相手に勝っていたとしても、枯渇するのはどちらが先だと思う?」
「・・・あ!」
シエラはシンシアの説明で完全に理解した。リリティアとフィエルディアでは、(ある部分のサイズを見れば)フィエルディアの方が部がある事は分かる。が、先にどちらの精霊力が尽きるのか、と問われた場合、この場合は・・・フィエルディアの方となるのだ。が。
「・・・あのね?」
今までぽかんとしてた組だったルナーリアが不意に声を発したのだ。
「リリティアとあの人のおっぱい、そんなに大きさ変わらなかったような気がするよ?」
ルナーリアの一言の刹那、弾幕を張るフィエルディアと防ぐリリティア、ぽかんとしてるノエル以外、全員が固まった。
「・・・る、ルナーリア?」
「さっきから2人とも動いてないけど、横から見たら変わらない気がするもん。リリティア、一気におっきくなったーって言ってた」
「まさか・・・リリティアは!?」
シンシアはその一瞬で頭の中に結論が浮かぶ。
「この勝負・・・リリティアが絶対勝つ・・・!」
数十分後、フィエルディアの周囲に浮かぶ光球が消えた。同時にフィエルディアは膝を着く。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「今度は私の番っ!!」
リリティアはフィエルディアに向けて、唐突に肉弾戦を吹っ掛けた。咄嗟に反応するフィエルディア。が、できたのは『リリティアを視認すること』だけだった。
「っ!は、や・・・っ」
「ぁああっ!!」
リリティアは拳をフィエルディアの腹へと振り抜いた。綺麗に決まったリリティアのストレートは・・・
「か、は・・・っ・・・、う、く・・・」
たった一撃でフィエルディアを悶えさせるのに十分だった。フィエルディアは腹を押さえながらも立ち上がろうとしたが・・・
「・・・私の勝ちで、いいよね」
「・・・っ・・・ぁ・・・」
首へと一撃、手刀を決めたのだ。疲弊していたフィエルディアはそのまま気を失ってしまった。
「・・・ここは・・・」
「気がついたんだ」
フィエルディアが目を覚ました時、目の前にはレンがいた。
「貴様・・・」
「何もしてないよ。したとすれば介抱したくらいかな」
額に乗せていたタオルを取り、使わなくなったタオルも絞って置いた。
「本当なら僕が君と戦った方が良かったのかもしれないけど、ね」
レンは苦笑しながら洗面器を風呂場へと持っていった。
「・・・少し、考えを改めるべきなのかもな」
フィエルディアは誰もいなくなった部屋で、1人呟いたのだった。
「さあ?今ここで盛大に謝ってもらおうかしら、フィ、エ、ル、ディ、ア?」
「ぐっ・・・」
リリティアが勝敗を着けただけであり、実際自分は負けかけていたシンシアが、珍しくつけ上がる形でフィエルディアに言葉を発した。
「し、シンシアさん、それ言えるのはリリティアさんだけですよ?」
「・・・シンシア、彼女の事は許してあげてくれないかな?」
『っ!』
レンが言った一言にその場の殆どが固まった。フィエルディアも固まった。それほど大きな衝撃となったのだ。
「な、なんで・・・?」
「なんで!?レン、貴方はフィエルディアに侮辱されたのよ!?」
「そうよ!軟弱だとか言われてるのに!」
困惑するフィエルディアの横でシンシア、シエラが珍しく噛みついた。が、レンは2人を宥めて口を開いた。
「・・・仕方ないと思うんだ。元々精霊と人間は相容れないものだって・・・講義でやってたのを思い出してね。彼女が人間に対し良い感情を持てなかったのも仕方ないんじゃないかなって」
レンの言葉に、全員が黙りこんだ。精霊達でも自分の祖の話は聞き知っている。相容れず、一度は戦争まで起こしたことも。人は精霊を道具としてしか見なかったため、精霊は人を愚鈍な存在としてしか見なかったため。
「けど、今はこうやって相容れる存在になったんだ。・・・まぁ、今もまだ道具としか見ない人もいるけど・・・でも、一緒に暮らすパートナーとして生活したり・・・挙句には養子縁組しようとか言ってたりしてるし」
「・・・ああ、アッシュ・・・だったかしら?」
「そ」
「さすがにネフィはアッシュにぞっこんになりすぎだけどね」と付け加えたレンの顔には、笑顔があった。フィエルディアの顔は、そんなレンの笑顔を見て赤くなっていた。
「・・・だ、そうよ。・・・ってフィエルディア?」
「・・・な、なん、だ?」
「顔。どうしたのよ?赤いわよ?」
「な、あっ!?」
顔が真っ赤なことを指摘され、うろたえるフィエルディア。他の精霊達からも疑問の目を向けられる。
「・・・〜〜〜〜〜〜っ」
フィエルディアは俯いて口をもにょもにょとさせた後・・・意を決してレンの方を向いた。
「い、何れまた逢うだろう・・・そ、その時また・・・」
「・・・改めて、謝罪がしたい・・・」
フィエルディアは帰った。レン達からすればまた来るのかと思う者も、凄いと思う者もいた。レンはそんな少女達に囲まれながらも・・・
(・・・なんだろう、すぐに会いそうな気がしてきた)
と思っていた。
「・・・なん、で?」
翌朝・・・レンが眠るベッドの上に、レン以外の人間がいた。・・・正確には・・・精霊だ。
「・・・仕方、ない・・・だろう・・・」
その精霊・・・フィエルディアは今、レンのベッドにいた。レンに馬乗りで。しかも・・・
「・・・だ、だったら、なんで、裸・・・?」
「ぁ、ぅ・・・」
フィエルディアは全裸で馬乗りになっていたのだ。レンの目の前にはフィエルディアの顔が、視線を落とせば胸が見えた。
「・・・す・・・好き、だからじゃ・・・ダメ、なのか・・・?」
その言葉に、レンは固まった。更に言えば、頭が全く回らない。なんで好きになったのか。というより、いつ好きになったのか・・・それが、全く分からなかった。
「・・・れ、レンが望むなら・・・な、なんだって・・・する・・・ぞ・・・?」
顔を真っ赤にしながらフィエルディアは口を開く。このままでは本当にフィエルディアに「何か」をしてしまう可能性が出始めた・・・その時だった。
「・・・な、に・・・してるん、ですか・・・?」
この一言で全てが固まった。レンが声のした方を向いたその先には、シルディアがいた。
「・・・あ、あの、なんでここに・・・?」
シルディアの問いに、フィエルディアは少し迷った結果、口を開いた。
「・・・れ、レンに、私を伴侶にしてほしいと・・・」
「は、伴侶!?」
「伴侶って・・・お、お嫁さん!?」
レンもシルディアも一気に声を上げてしまった。瞬間、バタバタと音が聞こえ出す。
「伴侶ってどういうこと!?」
「そんなの絶対ダメなのーっ!!」
シエラ、リリティアを筆頭に、精霊少女がその部屋に揃い踏みとなった。
「・・・フィエルディア、事と次第によっては貴女を許さないわよ・・・」
「というかなんで全裸!?」
「・・・んー・・・?」
明らかな怒気を発するシンシアと一番の謎を口にしたナジャ。そして首を傾げたルナーリア。
「ルナーリア・・・?」
「あの人、精霊の力を感じないよ?」
『はぁっ!?』
ルナーリアの一言は周りを凍りつかせていた。
「フィエルディア、貴女まさか核を!?」
「核って・・・精霊核!?そんなことしたら最上位じゃなくなるんじゃ」
「そ、それより自分で核を抜くことってできるんですか!?」
「普通は無理だよ!核を抜かれただけでも結構苦しいし辛いんだよ!?それに動けなくなるし!」
ナジャがノエルの問いに実体験を踏まえながら説明。それに対しフィエルディアはレンに強く抱きついた状態で口を開いた。
「・・・人として生きる、そう決めたからな」
「無理よ、最上位が核を抜いた所で上位の力を持つのよ?」
「・・・シンシア、お前でも知らないことがあるとはな」
抱きついたまま口を開くフィエルディア。彼女の口からはあることが告げられた。
「自分の核に力の全てを詰め込んでしまえば普通の人になる。・・・それに私は・・・人から逃げるために核を何度も自力で抜いた」
「・・・だから力を感じなくて自分で核を抜いて、その上動けるんだ」
「すごい、です・・・」
納得したナジャとノエル。そして分かった事実は・・・
「この人、今は普通の人間で・・・レンが好きだってこと、だよね・・・」
リリティアが口にした事実は、全てを固まらせるのに十分だった。
「・・・待って、戻した所で力を取り戻すのに時間がかかるはず」
「シエラ、多分時間かからないと思うよ?」
「お姉ちゃん?」
シエラの疑問を答えたのはシエルだった。
「全部の力を詰め込んだーって言ってるから・・・核を戻せばすぐ力が戻ってくるんじゃないかな」
シエルが言った後、静寂が訪れる。その静寂を破ったのは、レンだった。
「・・・あの、フィエルディア・・・だっけ?」
「なんだ?」
「・・・ごめん、退いてくれない、かな・・・?その、胸が・・・当たってるから・・・」
「・・・当てて、るんだぞ・・・」
フィエルディアの答えを聞いた瞬間、真っ先に動いたのはリリティアだった。
「それ以上レンを誘惑するのダメーっ!!」
言葉を発するとともに服を脱ぎ捨て、全裸ダイブ。フィエルディアを突き飛ばさんとばかりに抱きつき、その身体を押し付けた。
「・・・リリティアぁっ!!」
リリティアの次に意識を戻したシンシアは、思わず手近にあったリリティアの羽を掴んでしまった。
「はきゃぁん!?」
『・・・え?』
突如上がるリリティアの艶めいた悲鳴。その悲鳴に周りが固まった。
「・・・まさかリリティアの弱点って・・・」
「この悪魔のような羽・・・?」
リリティアの弱点が白日のものとなった瞬間だった。その間シンシアはリリティアの羽を握っているため、リリティアはレンに抱きついたまま悶えている。
「ひゃめぇ・・・はね、ひゃめへぇ・・・」
『・・・』
悶え続けているリリティアと必死になって抱きついているフィエルディア以外の精霊少女達は沈黙していた。
「私が皆に指示を出すわ」
口を開いたのはシンシアだった。その指示は・・・リリティアにとって地獄となった・・・
「ノエルとナジャはリリティアの胸を盛大に揉み散らしなさい!リリティアはもうレンと真契約状態だから堕ちることは無いわ、遠慮なくやりなさい!残りは全員、羽を弄るのよ!!」
「分かったわ!」
「う、うん!」
「りょーかい!!」
嫉妬に駆られた+弱点知った精霊達の中でも、シエラとルナーリア、気迫に押されたシエルがすぐに反応。ノエルやナジャ、シルディアは引き気味だったが・・・
「・・・ナジャ、知ってる?」
「へ?」
「胸って揉むとしぼむのよ?」
瞬間、ナジャの目つきが変わったのをノエルは見逃さなかった。
「覚悟ぉっ!!」
そして、ナジャが先陣切って飛び込んでいき・・・
「はにゃぁぁあああああああっ!!やら、らめぇっ!!ふにゃぁああああああああっ!!」
リリティアの艶っぽい悲鳴が部屋中に響き渡ったのだった。シンシアの言う通り、最上位昇格と同時に果たしていた真契約のおかげで堕ちることはなかったが、ベッドのシーツに大きな染みができてしまったという大惨事が発生していた・・・
次回からちょい長編の「人造精霊編」スタートです。
その1話目は導入です。お楽しみに。




