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22 激戦~沼地の戦争5~禁忌の呪文、闇の最上位は数多の眷属従えて~

大変お待たせしました(2回目)!ジャド沼終盤、タイトルでも粗方分かる仕様!つかネタバレしてる感満載です!



ということで22話、お楽しみください!

レンが目覚め、シルディアが謎の急成長を遂げた。その事実は周囲にいた全員が把握するのに時間はかからなかった。



「あ、貴女・・・本当にシルディアなの・・・!?」

「はい。何が起きたのかはよく分からないんですけど、今は・・・体の奥から力が湧き出てくる感じがしますし、もう足手纏いなんて言わせません」



シルディアは目の前の男女をキッと睨みつける。その目には今まで感じられなかった決意や闘志が満ちていた。



「・・・なら、貴女を頭数として数えてもいいのね」

「はい!・・・ご主人様は・・・ナジャさん、お願いします。あれだけ大きなダメージを受け、急に蘇生したので・・・今はまた眠ってしまったと思うので」

「え、あ、うん!」



レンをナジャに託し、シルディアも前線に立った。これでレン側の戦える精霊は7人となった。・・・未だ立ち直ることのできないリリティアを除いて。












































「・・・」



リリティアは未だ茫然としていた。目の前で倒れる想い人。何もできずただただ立ち尽くすことしかできなかった自分。レンが死んでしまうのではないか、という思いと何もできない自分への嫌悪が、彼女を茫然とさせてしまっていた。



「・・・レン・・・私・・・」



どうしたらいいの、と思ったその時。



『汝、愛しき者を護りし剣に為らんと願うか』



リリティアの耳に突如として何かが聞こえてきた。



「・・・だ、誰・・・?」



辺りを見回すものの、誰一人として聞こえてきた声とは違う。そこへまた、声が聞こえた。



『汝、愛しき者を護りし剣に為らんと願うか』

「・・・私は・・・」



そこで一度言葉が途切れた。


レンを護る剣になりたいとは思う。だが、身近にいながらレンを守れなかった。そんな自分に、剣に為り得る資格などないのではないか。


そう思っていた時、三度声が聞こえた。



『汝には、我が力、我が眷属を継ぐに相応しき力があると見た。我が望むは汝の覚悟、只其れのみ』

「私の・・・覚悟・・・」



問われたのは、自分が剣に為りたいかを望んでいるのかでなく、剣に為る覚悟だった。



「・・・私は・・・私は・・・」



一瞬の戸惑い。しかし直後には目に力が入った。



「・・・私は、レンを護る剣になる!」

『・・・その覚悟、永久に誓うか』

「・・・永久なんてものじゃない・・・レンの命も私の命も一緒になって消えるまでずっと!!」



リリティアは叫んだ。その直後に自分の周りを黒い光が包んだことすら知らずに。



『ならば、我が眷属を呼び従えしその文言、其の全てを、しかと汝に伝えよう』



その言葉が終わるとともに、リリティアの頭に浮かぶ言葉。今まで知らなかった、しかし突然分かったその言葉は、謎の声の主の眷属を呼び、使役するための文言だということは瞬時に理解できた。



「あなたは・・・あなたは・・・!」



全ての文言を理解し終えた後、リリティアは謎の声に聞いた。



『我は・・・の・・・闇の・・・。再び・・・し時・・・だろう』



所々雑音が入ったように聞こえなくなる声。その声の主が自分と同じ闇属性の精霊であること以外、分からないままだった。



「・・・ありがとう・・・闇の精霊さん・・・」



言葉少なに呟き、光が爆ぜたそこには、シルディアと同じように成長し、体の各所に刺青のような文様を体に浮かべた少女が立っていたのだった。


そしてその少女・・・リリティアはそこにいる精霊少女たち全員に告げたのだった。



「・・・そこの2人は・・・私が倒す!私が・・・私がレンを護る!!」












































「さ、最上位が・・・3人・・・!?」



リリティアの「倒す」宣告の直後、アイヴィーは恐れを表わすように一歩足を下げた。最初から最上位のシンシアに加え、2人も最上位が増えたのだから仕方がないと言えば仕方がない。



「おもしろいじゃなぁい・・・やってみなさいよぉ!!」



アイヴィーは無詠唱で腕に木刀(刃物と変わりない切味)を生成し、リリティアに突撃した。リリティアはただ前に手を突き出し・・・口を開いた。



「世に眠りし数多なる闇の眷属よ、我が声の元に集い、その姿を具現せよ!『闇の傀儡ブラック・パペット』!!」



リリティアが唱え切った直後、リリティアの影を起点としてその周囲に黒い人型の塊が姿を現した。その塊からは黒い何かがどろどろと垂れ落ち、見るからに不快感を与えていた。



「リリ・・・ティア・・・?」



その声がきっかけとなってか、眠っていたレンが目を覚ました。レンの目の先には、見慣れた色の髪なのに、長さが非常に長い髪となった少女が、自分達を護るように立っているのと、気味の悪い何かが自分達を護るように蠢いているのが映った。



「・・・レン、ごめんね。私・・・ずっとレンの近くにいて、レンのこと大好きだって言ってたのに・・・レンを護ることができなくって。・・・私、レンが死んでもずっと・・・私が死ぬまでずっと・・・ずっとレンのことを護るから!」



レンの声を聞いて、リリティアは自分の思いを全て告げた。「ただレンを好いているだけじゃなく、護りながら想い続ける」と。そして下ろしていた手を上げ・・・



「行って!!」



塊たちに命令を下した。単純に、『行け』・・・つまり、攻撃しろ、と。塊たちはその声を聞いてすぐ、目の前の敵へと躍りかかった。



「これが・・・闇の力・・・」



そのあまりに異様な様を見て、思わずシンシアは呟いた。



「・・・リリ、ティア」



塊軍団の指揮をしているリリティアに、不意に声がかかる。その声の主はレンだった。



「2つ・・・お願いがあるんだ。・・・いいかな?」

「・・・うん、いいよ」



レンの方を向いて縦に首を振る。それを見たレンは口を開いた。



「1つ目は・・・あの鎖に繋がれた女の子・・・あの子を解放してあげてほしいんだ。・・・おそらく、奴隷契約されてると思う・・・」

「おそらくでもなんでもないわ」



口を挟んだのはシエラだった。塊軍団がアイヴィーを攻めているため、手を出す必要がなくなったためである。



「それに・・・あの子はかなり体を改造されてる。それこそ力の貯蔵庫として体に力を溜めこめるように」

「・・・だったら・・・尚更だね。あの子を救ってほしいんだ、せめて契約破棄できればそれで」

「・・・やってみる。2つ目は?」



リリティアはレンに顔を向けて聞いた。そのレンからは重々しく口が開いた。



「悔しいことになるかもしれないけど・・・あの2人を殺さないでほしいんだ」

「なんで!?生かしておいたらまた他の精霊が!!」

「違うんだ!2人にまた精霊を殺させたいから生かすんじゃなくて、然るべき罰を受けてもらうために生かす、ただそれだけなんだよ!」



リリティアはその発言を聞いてふとマリュートのことを思い出した。それこそ本物の奴隷の如く精霊を扱い、使えないと判断したら核を抜いて心身共に殺そうとした男。その男を殺さず、精霊を救ったことを。



「・・・うん。どっちもやってみる」



リリティアは突き出していただけの手を鎖に繋がれた少女に向けた。



「世に広がりし闇の力よ、戒め持つ縛られし者、其の戒めの権を我が元に移し、嘗ての主に刃向かいし術と為れ・・・『反逆の糸繰人形リベリオン・オブ・マリオネット』!」



唱えられた『反逆の糸繰人形』は、対象となった少女の首輪、そこから伸びる鎖を木っ端微塵に砕き・・・



「なっ・・・ぼ、僕の奴隷が!?奴隷紋が消えた!?どういうことだ!」



少女を隷属させていたゼノからその権利を完全に奪い去った。リリティアにその紋は浮かばず、完全に解放されたのだ。



「来よ眷属、その身を長き槍へと変えろ!」



リリティアの元に集まった塊たちはその身を一斉に槍へと変えた。全ての塊が集まったわけでなく、一部の塊は未だ戦闘中。



「仇為す者の周囲へ降り、その身を牢獄へと変えよ!」



リリティアの声に従い、槍はゼノ・アイヴィーに当たらぬよう刺さった。決して抜けないよう深く。そして槍は牢獄へと変わる。



「・・・その2人を捕らえし者が現れた時、再び地へと潜り、安らかに眠れ」



リリティアのその言葉を以て、牢獄は絶対に抜けだせぬ頑強なものへとなった。












































双子の2・3属持ちの精霊少女達をめぐる戦いは、リリティア・シルディアの昇格を理由の大半として終結した。












































(・・・この人、本当に精霊のことを想ってるんだ・・・)



戦いの後、戻る際にリリティアに担がれているレンを見て、シエラはそう思った。精霊のことを考え、殺さずに罰を受けさせる。繋がれた少女が自分の仇であろうと、解放してあげる。そんな優しい少年に、シエラはレン限定で考えを改めていた。



(ただ精霊が好きだから・・・ってわけじゃないんだ・・・。普通は精霊を道具にして扱うのがあたりまえって感じなのに・・・。この人だったら・・・私のこともお姉ちゃんと一緒に考えてくれるかも・・・)



自分達のような野良でも大切にしてくれるし考えてくれる。人の奴隷となった精霊も考える。そんなレンに、シエラはいつしか心を惹かれていた。


姉と同じく、恋する少女となっていることに、シエラは一切気付かないでいたのだった。

次回はジャド沼最後、シエラはどうするのか、レンはどこまで大変なことになるのか、教師陣の反応は?







最後のはどうでもいいかもしれませんが、とりあえずお楽しみに。

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