01 再会~8年積もり続けた想い~
第1話です。なんかもう、色々とプロローグ台無しな気がしました。
少年と少女が再会した時、一体どうなるのか?お楽しみにということで。
「本日は、先日行った属性適性の結果を基にこの精霊の森にて契約執行を行う」
精霊の森の入り口にて、学生服に身を包んだ複数の人間がいた。目的は一つ、精霊との契約。
「諸君らに予め告げておく。この森には準最上位の闇精霊が生息している。それと思うものに遭遇した場合、無理に対話を行うな。ベテランでも使役の難易度が高い、諸君らじゃ死ぬぞ」
『はい!』
生徒たちの前に立つ男が生徒に指示を飛ばす。それに対して生徒は声を揃えて返事をした。
「準最上位の闇精霊かよ、やべぇ、どんなのか見てみてぇ!」
「止めとけ、お前みたいなへなちょこじゃ契約執行どころか返り討ちでバラバラだぜ?」
「どんな子なのかな?」
「可愛いといいんだけどねー」
生徒達がざわめく中、一人の生徒は何も言わず精霊の森を見ていた。
(・・・リリティア・・・遅くなってごめん。やっと・・・やっと迎えに来たから・・・)
精霊の森の中に入り、生徒達は各自自由行動となった。あくまで精霊探しの名目で、最終的には全員の前で契約することになるが、少しでも成功しやすくするために『対話』することを目的としていた。
「レン、お前あてあんのかよ?」
「大丈夫だよ、そういうアッシュは?」
レンと呼ばれた少年とアッシュと呼ばれた少年が森の中を喋りながら歩いていた。
「ここ来ることが分かった時のお前ってさ、すっげぇ嬉しそうな顔してたけどよ、なんでだよ?」
「そ、それは内緒だよ!」
レンは友人のアッシュにすら言えないことがあった。それは・・・
(精霊の女の子に、絶対に迎えに来るっていっちゃったなんてこと・・・言えないからね・・・)
ということだった。
「じゃあよ、俺も精霊探してこなきゃなんねぇから行ってくるわ」
「あ、うん。気をつけてね」
一言言ってアッシュは森の中に消えていった。残ったレンは自分の記憶を頼りにある場所へと向かった。
「・・・また来た」
とある場所にて、一人の精霊が嫌そうに呟いた。彼女の視界には木だけしか映っておらず、耳には風が草木を撫でる音だけ。殆ど気配だけで感じたのだ。
「どうせまた、私の同胞を道具にするために来ただけ・・・だから人間は嫌い・・・・」
過去、自分を「ただの下級精霊だ」と侮って戦いを挑み、返り討ちにした人間は数知れず、ただ誰一人も殺すことなく返したため、精霊の森における畏怖の存在となっていた彼女は、人を避け、ある場所へと向かった。
「・・・でも人が来たってことは・・・もしかしたら・・・」
自分が思う、ある一つの可能性を信じて。
レンは途中誰かと会うこともなくある場所に着いた。
(8年前と変わらないんだね、ここも・・・)
彼が来たのは、精霊の森でよく遊んでいた大きな木。精霊と仲の良かった彼は、よくこの場所に来て精霊達と遊んでいた。
「・・・あれ、石碑?こんなの前はなかったのに」
すぐに気付いた石碑。そこにはこう書かれていた。
「『私は待つ。悠久の時を越えようと、例え私の身が朽ちようと。愛する者の約束ある限り、「私は彼を想い待つ』」・・・え・・・?」
石碑を読んでいた時に、不意に聞こえた声。レンにとって忘れることのできない、約束を交わし、待たせてしまった者の声。
「リリ・・・ティア・・・?」
振り向いた先には、一人の女性がいた。レンと同じくらいの年の女性が。
「レン・・・会いたかった!!」
その女性、リリティアはレンが体ごと振り向き斬った途端、突然抱きついた。
「わわっ!?」
「ずっと・・・ずっと待ってたよ!もう・・・もう二度と離さない!!」
その言葉通り、力強くレンの体を抱きしめるリリティア。そんなリリティアを見て
(・・・どうすればいいのかなぁ・・・。さすがに戻らないとまずいし、リリティアにとって今の僕は敵視すべき存在だからなぁ・・・)
その後たっぷり3分、リリティアに抱きつかれ続けるレンであった。
その後、そろそろ戻らないといけなくなったレンはリリティアをどうにかして引き剥がそうとするが、リリティアは梃子でも動かない。
「ごめん、リリティア!僕、リリティアにとって敵視すべき存在になっちゃったから!」
「敵視すべき・・・精霊使役者になった、ってこと?」
「そ、そう!強制だから仕方ないけど、敵視すべき存在なのに変わりないから!」
リリティアは少し考えるように唸った後、レンの目をじっと見つめ、
「レンが私を使役するならいいもん!でも他の子は絶対ダメ!!」
と言った。同時にレンは
(・・・8年で変わったね・・・リリティア・・・)
と思っていた。背丈はレンよりちょっと小さいくらいで、体つきは女の子のものから女性のものへと変わっていた。特にある部分は。
性格は・・・独占的になっていた。その上、甘えたがりになっている気もするというダブルパンチ。
「と、とりあえず戻らなきゃ・・・」
しがみつくように抱きつくリリティアを半ば引き摺るように集合場所へ向かうことにしたレンであった。
戻ってきたレンを待っていたのは、教師からの叱責だった。僅か5秒ほど遅れただけでである。・・・が、教師も5秒ほどで何も言えなくなった。レンに抱きついていたリリティアからの殺気が凄く、物言うことが出来なくなっていたのだ。
ちなみにそののち、教師からリリティアが準最上位の闇精霊だということが告げられ、レンは一躍英雄扱いされた。
次回は翌日の話になります。リリティアが早速問題を起こし、レンは何度も気絶することに。
リリティア崩壊録と別名できるこの話、どこまでリリティアが壊れていくのかをお楽しみあれ。