13 激戦~闇対水対氷 三竦みのレン取り合い合戦~
シンシアがレンと契約し、さらに激化した争奪戦。音速を超えるレベルで積み重なるレンの心労。報われるのは何時になるのか?それは誰にも分からないのです。
そんな争奪戦の一日、どうぞ。
霊峰マリュートにおける課外授業が終わり、無事(とは言い難い者が1名いたが)戻ってきた。そしてその翌日のことである。
当然の如く部屋を増築したレンは(寮長の使役する精霊の力で空間を捩じって膨張させての増築)、シンシアをルームメイトに加えて部屋に入っていた。ちなみにナジャは精核を一度抜かれた、ということもあり現在治療室にて集中治療を受けていた。
それから数日経ったある日の朝、レンの部屋では・・・
その時現在、レンは眠っていた。まだ肩が痛むということで上半身は肩を出す為に半裸。そして仰向け・・・なのだが。
「・・・ん・・・ん~・・・」
何故かうなされていた。・・・その理由が・・・
「すぅ・・・すぅ・・・」
「・・・ふにゅぅ・・・」
彼に抱きついて眠っているリリティアとシンシアだ。ただ抱きついているだけ、ならばまだマシだが、二人は離さないと言わんばかりに抱きついているため、二人の柔らかいものがむにむにと当たっているのだ。
ちなみにシルディアは調理場に立ち、朝食を作っていた。レンに命令されたからではない。自分の意思でだ。
(ご、ご主人様に少しでも愛してもらうために・・・で、できることをやらなきゃ・・・!)
リリティアやシンシアのようなわがままボディを持たないシルディアにとって、唯一対抗できる分野は家事、特に料理である。帰ってきた夜、夕食は各自とるように言われたため、シンシアが腕を振るう、と豪語していたが、できたのは謎の物質だった(本人は卵焼きだ、サケの塩焼きだ、などと断言していたが)。リリティアが料理できないことは知っていたが、シンシアも壊滅的な腕だったため、料理はシルディアにとって唯一のアピールポイントになったのだ。
「今日は・・・和食にしよっと。えーっと、お料理の本のページは・・・あ、あった」
和食の作り方が書かれたページを開き、折り目をつけてよく見やすくする。そして書かれていた材料を用意して作り始めるシルディアであった。
余談だが、本のタイトルは「意中の相手を絶対堕とす!恋愛必勝レシピ 朝食編」だった。
その後、全員が起きてきて朝食をとる。その時リリティアもシンシアもシルディアに嫉妬の視線をぶつけていた。絶対にお株を奪ってやる、という熱意もこもっていた。なお、当のシルディアは主であるレンが「美味しい」と言ってくれたことにほにゃ、と顔を綻ばせていたため気付いていなかった・・・
「レンー、暇だからトランプやろうぜー」
「トランプ?いいけど、何やるの?」
「大富豪」
トランプをずらりと並べるアッシュ。
「・・・ところでアッシュ、1つ聞いていい?」
「なんだよ」
「ネフィ、どうしたの?」
いつもならアッシュにべったりなネフィがいないので思わず聞いてしまった。
「ネフィ?ああ、今子育て中だよ」
「こここ子育てってどういうこと!?」
「く、詳しく教えなさい!」
「子育ては言葉のあやだよ言葉のあや!!フィアの面倒見てるだけ!!」
『面倒?』
その言葉の意味が理解できない面々が首を傾げた。
その頃。
「ままー、おやつたべたーい」
「パパが戻ってきたらお昼にするからねー」
アッシュの住む部屋では、まさに親子のようなネフィとフィアがいた。
「おなかすいたー」
「うーん・・・」
昼も近いから、と宥めるが、催促するフィアに困り果てるネフィであった。
「・・・なんだー・・・」
「・・・養子だったのね・・・」
「なんでお前らそんなに落ち込んでいるんだよ」
アッシュが怪訝そうな顔をしたが、意に介さない勢いで溜息を吐いたリリティアとシンシアだった。
「実子だったら色々聞こうと思ってたのに・・・」
「・・・がっかり・・・」
「・・・お前らなぁ・・・さすがにそれは傷つくぞ・・・」
呆れ顔で突っ込むアッシュに、レンも苦笑いで返すしかなかった。
「ところでアッシュ、こんなこと話しているうちにお昼なんだけど・・・」
「やべっ、早く戻らねぇとネフィにまた殴られる!」
言うや否や脱兎の如く部屋を出るアッシュに、レンはアッシュが将来恐妻家にならないことを祈るばかりであった。
「あ、あの、お昼ご飯・・・出来ました・・・よ?」
ひょこっとキッチンの蔭から顔を出すシルディア。
しかしそこで戦争が起こるのであった・・・
「レンの隣は私なの!それだけは絶対に譲らない!!」
「私よ?貴女じゃレンとは不釣り合いなの」
当然と言っていいほどのレンの隣の席の取り合いが起きた。レンはなんとなく分かりきった感じではいたが、さすがに止めようと動く。・・・が、そこでちゃっかり動くものが。
「・・・」
立ち上がろうとした時、二人を差し置いてレンの隣に座ったのはシルディアだった。座ったはいいがやっぱり恥ずかしい所があるのか俯いてもじもじしていた。
「あーっ!?」
「私達を差し置いて・・・!」
当然シルディアは二人に睨まれる。だがシルディアはその無言の重圧に耐えていた。少々びくびくしていたが。
「・・・そこは皆交代すればいいと思うんだけどなぁ・・・」
レンの呟きは虚空へ消えるだけだった・・・
昼食終わって。そこでもまた乱戦が起きた。
「リリティア、退きなさい!貴女の時間は終わったのよ!!」
「やだぁっ!!そういうあなたこそ退きなさいよ!むしろそっちがレンを独占してる!!」
「~~~~~~~っ!!!」
「・・・何でこうなるわけ?」
元々は一人でベッドに寝転がっていたレンだったが、やることを無くしたリリティアが(元々はシルディアの手伝いをしていたが、もう大丈夫だと言われたため)戻ってきて抱きついていた所にシンシアも戻ってきて開戦のゴングが鳴る。さらにシルディアも戻ってきたことで余計混迷を極めていた。
「一番!私が!レンに!相応しいの!!」
「わぷっ!?」
シルディア・シンシアから強奪する形で自分の方へ引き込むリリティア。横向きに引き摺りこんだため、レンの顔は当然リリティアの胸の間に埋まる。
「独占は禁止よ!」
「むぐぅ・・・」
さらにシンシアが自分の方へ引き込むが、リリティアが離さず一緒に引っ張られたため、レンの顔は完全に二人の胸の間へと埋まる
「~~~~~~~~~っ!!」
そして前からはシルディアがぎゅうぎゅうと必死になってしがみついている。結果、レンは完全に窒息状態になっていた。それはレンががくりと項垂れるまでのカウントダウンが始まったことであり・・・
「・・・」
そのカウントダウンも10数えないうちに終わった。
「・・・なんか胸の所がひやっとするような・・・?」
リリティアの一言で全員がレンから離れたところ、レンはそのままつんのめるようにベッドから転げ落ち、倒れこんでしまった。おまけに顔は真っ青、鼻血を流したまま。
「きゃああっ!?れ、レン!?」
「お、落ち着きなさい、こういう時は止血と人工呼吸が優先よ!」
「し、心臓マッサージは要らないんですか!?」
シルディアの一言にリリティアがすぐにレンの心臓部に耳を当てた。
「・・・心臓マッサージもいるー!!」
「・・・仕方ないわね、私が人工呼吸するからどちらか止血と心臓マッサージお願い!」
「私が人工呼吸するの!!」
「私よ!!」
再びリリティアとシンシアが対立を始める中、シルディアは必死に心臓マッサージを始めていた。既に鼻には止血用の紙が突っ込まれていた。
「い、言い、争って、る、暇が、ある、なら、んしょ、じゃ、じゃんけんで、決めて、くださいっ!!」
『あっ』
心臓マッサージをしているシルディアに一喝され、じゃんけんという方法を思い出した二人はすぐにじゃんけんを始めた。
レンの復活はシルディアのお蔭でそこまで時間がかからなかったうえ、脳にもダメージなく済んだ・・・
次回は精霊増えちゃいます。・・・が、何処かへ行く、というわけではありません。
じゃあどう増えるのか?それは次回のタイトルで大体分かると思います。
次回お楽しみに!




