大儀名分
数日後
枯れた木が生い茂る森の中で、その男は意外なほど簡単に見つかった
銀色の髪に鋭い眼光、背中には世界に1つの幻の名刀『響狼の剣』
デュートは確信して彼に近づいた
「おい」
銀髪の男は声のする方に向き直った
「ん?」
「いい剣を持っているな」
デュートは静かに話し始めた
「なんだ、お前?」
銀髪の男は警戒してデュートの全体像を確認した
「その剣は女の子を斬ったことがあるか?」
デュートは男の目を見たまま質問した
「女を切った事があったら」
「それがなんだ!」
男はにわかに殺気を帯び始めた
「なあ、試してみろよ」
「その剣は」
「男も斬れるのか!!」
いつもはやさしいデュートの声が、力強く森を震えさせた
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真剣勝負を経験した者どうしが、不意打ちではなく正面から戦う場合
2人の間では、太刀を交える前から勝敗はある程度想像がつくのだろう
また、実力が同程度ならば『大儀名分』は勝敗に影響を与えるのかもしれない
銀髪の男は、剣ではなく言葉で語り始めた
「お前、この剣の秘密が分かっているのか?」
「世界をいい方向へ導けるのだぞ」
「多くの人間の未来を救うためには、なにかの犠牲は必ず必要になる」
デュートの下まぶたに、わずかに涙が溜まった
「・・・」
「お前のようなヤツがいるから」
「自分の正義を貫きたければ」
「犠牲は自分で払え!」
デュートは銀髪の男を斬りつけた
そして『響狼の剣』はデュートに触れることなく地面に落ちた




