楽しいレベル上げ
さて、まずはこの広場から山側に向かうか……。
滝の周りだけは生き生きとした草が生えている。ただ、少しでも離れるとすぐに枯れてしまうらしく、逞しい雑草ですら生きていくには難しいようだ。
見上げてみれば色とりどりの樹の葉が覗く。
きっとここより山頂へ向かえばまたフィールドとして切り替わり、違った環境になるのかもしれない。
とりあえず、ここでレベル上げするためにも、この枯れ木フィールドを制圧していこう。
そんな事を考えているうち、フェリナが俺たちにバフを掛け、移動を開始した。
俺たちも急いで反対方向へと移動を開始する。
「先頭は俺、その後ろにエーヴェルさんとクーライズさん。後方はロブさんお願いします」
「はいよ、んじゃ不意打ち喰らわないように見とくぜ」
簡単な隊列を組み、そのまま斜面を登る
そして、先ほどとは違い敵が集まってくるようになった。
「もしかして、オレらの数が減ったのを感じて寄ってくるようになったのかね」
そうロブが判断する。
「ありえそうですね、モンスターもただ襲ってきていた訳じゃないのかもしれません」
ゲームシステムでも簡易的な学習AIを積んでいたはず。それなら勝算が上がるタイミングを待ち構えていたのかもしれないな。
「みなさん、ここはひとつ、このあたりの敵を誘い出しましょう。距離を取る事を優先に、山頂側に撤退するように偽装しながら移動します」
「なんとも危険そうな作戦じゃねぇか、大丈夫なんだろうな?」
囲まれたら一番耐えられそうにないエーヴェルが眉を寄せて問いただすが口元は笑ってる。クーライズにいたって普段通り何考えてるか分からない笑みを浮かべてる。
「ええ、これぐらいの敵なら余裕です。むしろ、掻き集めて一気に処理した方が手間も少ないですし、なにより……楽しいですよ?」
「ははっ、楽しいか! そりゃいい、やってみるか!」
「仕方ないですね。お願いですから、ヘマだけはしないでくださいよ」
「皆さんにお任せしますー」
そうと決まればさっそく掻き集めてよう。
――スキル発動。
《咆哮》
「うぉぉぉおお!!!!」
空気を震わせるように声を叩きつける。俺の叫びが響き渡る。挑発スキルを使ったので、当然聞こえた敵はすぐさま動き出す。
「よし、このまま行きましょう!」
「お前! スキル使って集めるなんて聞いてねぇぞ!!」
「やばいやばいよ! そこら中の気配がこっちに向かってきてるってば!!」
慌てる二人の顔が可笑しくて笑いを堪えながら走り出す。
「ほらほら、急がないと近くの群れに囲まれますよ! 走って!」
「こんちくしょうがっ!」
前を走る二人は悪態を止めないせいで息も絶え絶え、必死に山道を駆け上がる。
隣を見ると案外二人よりもクーライズの方が余裕ありそうだった。
「いきなり走らせてごめんね?」
「いえ、この程度なら大丈夫です。でも、お昼ご飯には美味しいお米を所望します」
「あー、吉川屋の牛丼食べる?」
「是非」
走りながらも器用にこっちを見れるだけの余力もありそうだ。思ってるよりももっと強いのかな?
慌ただしく駆け上がりながらもちょうど良さそうに開けた場所を発見。ここで処理しようかな。
「みなさん止まって! ここで減らします!」
もうすぐそばまで来ている。
すぐさまアイテムボックスからマジックアイテムを取り出す。
パンパカパーン!
《マジックボム》 6個 を取り出した。
三人に配り、俺は一人、敵がくる方へと歩いていく。
「俺の事は気にせずモンスターが固まっている場所に投げつけてください! あとは勝手に爆破します!」
サクッと説明し、敵を待ち構える。
――来たきた。
わらわらと木々の奥から出てくる。
見えている範囲だけでもざっと二、三十体といったところか。
散らばりながら突き進むモンスターを俺に向ける為、再度叫ぶ。
《咆哮》
「うぉぉぉおお!!!!」
視線が、一斉にこっちを向く。
魔剣を構え――衝突した。
《斬り上げ》
目の前で爆発するかのように霧散したイノシシ型のモンスター。
足元から鎌首を射出したように飛び出すヘビ型のモンスターの頭を左手で握り潰す。
上からの影。
頭上高くジャンプし、前足の蹄に落下の勢いを乗せ、槍のように突き刺そうと目論むシカ型の大型モンスター。
二つに割れた蹄の間に魔剣を差し込み衝撃をなんとか吸収する。それでも足元、地面が重みに負け陥没し体勢を崩しかける。
すぐさま蹄を起伝に刃をすべらせ、抜刀術の要領で加速させる。
一閃、シカ型を両断した。
直後、前方で爆発。
続けてもう二発。
いいタイミングだ。
密集していた群れが一気に削れる。
さらに魔法。エーヴェルの放ったファイアーボールが残った敵を吹き飛ばす。
みんなナイスー、そう心の中で歓声を上げる。
エーヴェルも魔法を惜しみなく放っているし、ロブも後衛二人を守るように近づくモンスターを倒している。
そしてこの後も敵の群れは何度か襲ってきたが、スムーズに処理することが出来た。




