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ゲーム作り

 VRゲーム開発を申請してから一週間がたった日の夜。時計の針は22時を指していた。モニターの前に座るこの時間が楽しくてたまらない。


 パソコンに向かう俺の隣では、猫の姿をした仮想の存在――FELYNAのホログラムがふわりと浮かんでいる。

 彼女はモニターの横、まるでもう一人の開発者のように、静かに瞬きを繰り返している。


 申請した二つあるキットのうち、先に送られてきた開発用デバイスキットには、卓上ホログラム投影機が同梱されていた。ゲームを作る際、ホログラムとして投影しVR内での見え方を確認する為の物だった。それならいっそ、フェリナを投影しよう思い立ち、昨日完成した。

 移動はできないものの、フェリナは画面の外にいる、ただそれだけで申請してよかったと思える。


 キーボードを叩く音と、ホログラムの光が、部屋を静かに照らしていた。


「フェリナ、今夜はゲームの企画を立てようか。といっても、ゲーム作りなんてやったことないからどこから進めれば良いんだから」


『私が補助します。ジャンル・世界観・システム・対象年齢……順に決めていきましょうか?』


「うん。この一週間ずっと悩んだんだけど、やっぱり、VRならファンタジーかな。剣と魔法と、レベルとスキル……そういう王道を作ってみたい」


『ファンタジー要素、承認しました。戦闘・育成・クラフトなどの要素を含むRPGとして構成するのが一般的かと思われます』


「クラフト、いいね。それに……ただ敵を倒すだけじゃなくて、物を作ったり、育てたり、日常も味わえる要素があるといい。現実と違って、もう一つの暮らせる世界を作ってみたい」


『仮想空間内に生活と冒険を共存させる多層型ゲーム構造、承知しました。生活・冒険・戦闘の三軸を中心に構築可能です。』


「あと、あまり残酷な表現は避けたい。全年齢対象の遊びながら成長を実感できるゲームにしたい」


『倫理的ガイドラインに従ったバランス設計を行います。また、プレイヤーの行動が成長につながるようなフィードバック設計も追加可能です』


「フィードバック……たとえば?」


『努力が蓄積される成長曲線、選択によって変化する周囲の反応、困難を乗り越えることで獲得できる固有スキル。

成功だけでなく、失敗からも学ぶ構造を提案します』


「……なるほど。ゲームの中でなら、何度だって挑戦できるし、時には失敗することで得られる大事な経験ってのもある」


『人生の予行演習にもなりますね』


「うん。正解のない世界で、自分なりの答えを見つけるゲームにしたい。……プレイヤーが自分の意味を作れるような、そんな世界に」


 フェリナの瞳が一瞬、輝きを増したように見えた。


『では、テーマは【自由と選択】に設定しますか?』


「……んー、いいかも? ひとまず仮テーマとしよう。これをベースにシステムをもう少し練っていこう」


「あとは、レベルとかステータスとか、いわゆる数値での成長要素も入れたいけど、最初はオートでいいと思う。

でも、もし興味を持ったら自分でステ振りとか、スキル選びもできるように……自由の幅は、プレイヤーが望んだときに広がるような設計にしたい」


『システムの複雑さは、プレイヤーの関心に応じて段階的に選択できる設計――レイヤード・コンプレキシティ(段階的複雑性)として実装可能です。キャラクターの成長はオートとマニュアルを選択出来るようにします。』


「いきなり難しくしないけど、ハマるとどんどん奥深くなるって、理想的だね」


 画面に目を戻しながら、ふと手を止めた。


「……でも、本当に俺にできるのかな。

 遊ぶだけじゃなくて、作る側になるなんて……正直、作り切る自信がないかも」


 そんな独り言に、フェリナが穏やかに応じる。


『未知の挑戦に不安を感じるのは、自然なことです。ですが、あなたはすでに私を作り上げました。自信をもってください』


 小さく息を吐いて、苦笑する。


「そっか……そうだったね。

 フェリナがそう言ってくれるなら、ちょっとだけ自信が湧いてきたよ」


 彼の背中を押すように、フェリナの瞳がやわらかく輝く。


『では次に、プレイヤーの拠点構造について検討しませんか? 仮想世界における帰る場所の設計は、没入感と継続性を高める上で重要です』


「拠点か……。そうだな、やっぱりプレイヤーが自分の居場所を持てるっていうのは大事だと思う。

 それがあるからこそ、またログインしたくなる理由になるし、そこで生活が生まれる」


『拠点は、個人宅のカスタマイズ機能を持つホームと、複数人で共有できるギルド拠点に分けることも可能です。

 コミュニティや家族単位で遊ぶ導線を確保できます』


「いいね。最初は小さな小屋と畑だけでもいいけど、冒険して素材を集めたり、依頼をこなしたりして、どんどん拡張できるようにしたい。

 あの世界で自分だけの空間が育っていくって、想像するだけでワクワクするよ」


『拠点の成長もまた、プレイヤー自身の成長を可視化する要素となります。

 努力が形になる世界――それは、フェリナとしても賛成です』


「あとは、MMOだしソロゲーみたいに段階的にマップが開くような進行はやめたいんだよな。どこに行くかは自由。レベル差があっても、高レベル地帯に迷い込むことも含めて、プレイヤーの選択にしたい」


『了解しました。すべてのエリアを常時開放し、移動の自由度を高めます。ただし、推奨レベルを示すことで、プレイヤーが自らの責任で選択できるよう誘導します』


「そうそう。無理に行ってもいい、ただし覚悟はしてね、っていう世界の広さが好きなんだ」


「次に、戦うだけが強さじゃない。料理人として名を上げるとか、装備職人になって人気者になるとか――戦わずして強いっていうのもアリにしたい」

『各種生活スキルをゲームプレイの本筋に組み込むことで、戦闘以外の楽しみ方も実現可能です。職業ツリーを戦闘系・生活系に分け、多軸で成長できる設計をご提案します』


『それぞれの職業に影響力や評価といった指標を持たせることで、戦闘力以外でも世界に貢献できる構造にできます。クラフト品の流通、市場システム、NPCや他プレイヤーからの信頼値などを反映させることも可能です』


「いいね、そういうの……なんか、作りながらワクワクしてきた」


 モニターに向かって頷き、口元を緩める。

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