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第7回小説家になろうラジオ大賞byごはん

C級ダンジョン産のホットケーキミックスは大先輩にとっておふくろの味






「── へえ〜。コレが昔、高級品だったんですか」


「んだ。とはゆぅても、うーんと昔の……お貴族様がいた時代の話じゃ」




 異世界の勇者が「ホットケーキミックス」と名づけた、小麦粉などがブレンドされた粉。


 C級ダンジョンとはいっても、浅い層からドロップするので、ここら辺ではポピュラーな品だった。


 水と混ぜて火を通すだけでも、ふわふわにふくらむ生地がほのかに甘く、昔は王侯貴族の甘味かんみとして楽しまれていたんだとか。


 時が進み、魔道具産業革命がおき。人類が使う道具の強さに比例して、ダンジョンの攻略も進む。

 

 

わしのかあちゃんも冒険者でな。串に刺したウィンナーにつけて、油で揚げたそばから兄弟達とあらそって食っとったわ」


「ほへぇ〜」



 このダンジョンを最初に攻略したのは大先輩のお母様がいたパーティーだったらしい。


 魔法の研究も進み。それに合わせ、地上で育てる動植物の品種改良も比例して進んだ。


 安定して食料がまかなえるようになると、人は「味」を求めるようになった。



 私が作った携帯食のシリアルバーを、大先輩が、話の合間にボリボリと食べる。


 ホットケーキミックスと地上産のナッツやドライフルーツなどを混ぜ込んで焼き固めた自慢の逸品いっぴん

 


 安全地帯でくつろぐ私達のあいだに、ズイッと影が差し込んだ。



「うっわ。最近の新人ってそんな小洒落こじゃれたもん食ってんの?」


「なんだお前さんこの街に帰っとったんか」



 自分が新人の頃は、装備代に有り金をついやし、ホットケーキばかり食べていたというS級冒険者の方。たまに無性むしょうに食べたくなるので、その時は街に帰って来るらしい。


 有名人にジーッと見つめられ、思わず腰が引ける。



「お、おひとついかがですか」


「ん。サンキュ」



 大先輩とS級冒険者が情報交換に入る。


 難関ダンジョンを攻略して来ただとか、ボスからドロップした「カレールー」が美味しいだとか。聞くだけのつもりが話を振られ、いつの間にか会話に参加していた。



「── へえ〜。そんなに美味しいんですか」


「興味あるなら今度食わせてやろうか?」



「そのカレールーもホットケーキミックスのよぉに、当たり前に食卓へ上がる日が来るかも知れんの〜。ガハハハッ!」



 大先輩はこの先の壮大そうだいな人類の進化の話をしているのかと、その時は思った。




 数年後。


 具沢山のカレーと共に、分厚く焼いたホットケーキの組み合わせが、我が家での定番となっていた。



 あの日の言葉をハッ! と思い出した私の脳内で、大先輩がいい笑顔でサムズアップをしていた。



 


 

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― 新着の感想 ―
ほのぼのナーロッパですねぃ♪  (´∀`)
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