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「役立たずの荷物持ち」と勇者パーティを追放された幼女(10歳)ですが、実は世界システムの「管理者(アドミニストレータ)」でした。  作者: NN


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第7話 才能検査(チート判定)と、魔法のアップルパイ

 王立魔導アカデミー。

 国内最高峰の魔法研究機関であり、未来の宮廷魔導師を育成するエリート校だ。

 そびえ立つ尖塔、空飛ぶ箒で行き交う生徒たち。まるでファンタジー映画そのものの光景に、私は少しだけテンションが上がった。


「さあ、ここが私の研究室だ。遠慮せず入りたまえ」

「わぁ、すごい本がいっぱい!」


 学長室に通された私は、出された紅茶と焼き菓子(高級クッキー)を頬張りながら、キョロキョロと部屋を見回した。

 部屋の中央には、巨大な水晶玉が鎮座している。


「さて、アリスちゃんと言ったね。早速だが、この水晶に手をかざしてくれないか?」

「これなあに?」

「『魔力測定器』だよ。君の中にどれくらいの魔力が眠っているか、数字で分かるんだ」


 学長は優しげに笑っているが、目は真剣だ。

 私の屋敷を浄化した力を測りたいのだろう。


(……まずいな。私のMPはシステム直結だから『無限(∞)』って出るはず。そんなの出たら実験動物コースだ)


 私はクッキーを飲み込みながら、脳内でコンソールを開いた。


『Target: Self / Action: Mask_Status (ステータス偽装)』

『MP_Value: 500 (一般人の50倍、天才レベルだが異常ではない範囲)』


 これくらいにしておけば、「有望な新人」として扱われるはず。

 私はおどおどと手を伸ばし、水晶に触れた。


 ――カッ!


 水晶が眩い光を放ち、内部に数字が浮かび上がる。


『測定不能(Error)』


「……え?」

「あ、あれ?」


 学長と私の声が重なった。

 しまった。偽装した数値じゃなくて、偽装する前の『システム権限の負荷』を水晶が検知しちゃった!?


 バチバチッ! と水晶に亀裂が入り、ボンッ! という音と共に砕け散った。


「あわわ……ご、ごめんなさい! 壊しちゃった!」

「そ、そんな……最高級ミスリル製の測定器が……容量オーバーだと!?」


 学長は腰を抜かしてへたり込んだ。

 まずい。やりすぎた。

 私は咄嗟に嘘をつく。


「あのね、おててがビリビリってして、怖くてギュッてしちゃったの!」

「物理的に……握り潰したとでも言うのか? 魔力圧だけで?」


 学長は青ざめた顔で私を見つめ、そして震える声で呟いた。


「……100年に一度、いや、建国以来の『逸材』だ」


 あ、違います。それ勘違いです。ただのエラーです。

 弁解しようとした私の前に、学長がガバッと食いついてきた。


「アリス君! 君、今日からここに通いなさい! いや、住みなさい! 学費も生活費も全額免除だ! 国家予算で君を育てる!」

「ええー……」


 面倒くさいことになった。

 でも、考えてみれば悪くない。アカデミーの生徒になれば『学生証』が貰えるし、図書館の禁書庫(レア情報の宝庫)にもアクセスできる。

 何より、勇者たちが手出しできない安全圏だ。


「……お菓子、毎日くれる?」

「約束しよう! 王室御用達のアップルパイを毎日だ!」

「じゃあ、なる!」


 私はニカっと笑った。

 こうして私は、勇者パーティの荷物持ちから、一足飛びで『王立アカデミーの特待生』へとジョブチェンジを果たしたのだった。


 ◇


 一方その頃。王都の検問所。


「止まれ! 身分証を見せろ!」


 街を出ようとしていたレオンとマリアは、槍を持った衛兵たちに囲まれていた。


「な、なんだよ。俺は勇者レオンだぞ。顔パスだろ」

「黙れ! 貴様らは『指名手配犯』だ!」

「はぁ!?」


 衛兵が突きつけた手配書には、レオンとマリアの顔がデカデカと描かれ、その下に『罪状:多額の詐欺、および夜逃げ未遂』と書かれていた。


「嘘だろ……!? なんで俺が!」

「捕まえろ! 賞金首だ!」


 衛兵たちが一斉に襲いかかってくる。

 レオンは反射的に剣を抜こうとしたが、手元にあるのは安物の鉄剣(昨日支給されたもの)だけ。聖剣はすでに借金のカタに取られている。


「くそっ、覚えてろよ!」


 レオンはマリアの手を引き、検問所を強行突破した。

 なんとか包囲網を抜けたものの、彼らは正規のルートを使えず、魔物がうごめく『裏街道』へと逃げ込むしかなかった。


「ハァ、ハァ……なんで……なんでこんな目に……」

「レオン様ぁ……もう歩けません……」

「ちくしょう! これも全部あいつのせいだ! アリス! 絶対に見つけ出して八つ裂きにしてやる!」


 薄暗い森の中で、レオンの呪詛のような叫びが木霊する。

 しかし、その声を聞いているのは、腹を空かせた野生のオークたちだけだった。


 ◇


「んっ、おいしー!」


 学長室で出された焼きたてのアップルパイを頬張りながら、私は幸せに浸っていた。

 システムウィンドウの端っこで、レオンたちの現在地が『危険地帯(Danger Zone)』に入ったことを知らせるアラートが点滅しているが、私はそっと『通知オフ』にした。


「おかわりもあるよ」

「ありがとう、おじちゃん!」


 美味しい紅茶と、優しい(チョロい)学長。

 私の新しいスクールライフは、波乱万丈ながらも甘く楽しいものになりそうだった。

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