第28話 猫耳メイドの襲撃と、強制カワイイ化
「にゃーん! 侵入者はお仕置きにゃ!」
猫耳をつけた金属製のゴーレムたちが、包丁やフライパンを振り回して襲いかかってくる。
見た目はシュールだが、その動きは軍事用ロボット並みに洗練されていた。
「くっ、数が多い!」
カイルが剣で応戦するが、硬い装甲に弾かれる。
「アリス! こいつらの制御を奪えないのか!?」
「無理よ! このエリア全体が『カワイイ領域(Kawaii_Field)』でプロテクトされてるの!」
私のシステムウィンドウには、エラーメッセージが表示され続けていた。
『Access Denied Your Cuteness is too low.(アクセス拒否:あなたの可愛さが足りません)』
「なによそれ! 私が可愛くないって言うの!?」
「いや、そういうシステム的な意味じゃなくて……」
ヴェルがPCを叩きながら叫ぶ。
「この空間では『可愛い言動』や『可愛い見た目』がバフ(強化)され、それ以外はデバフ(弱体化)を受けるルールになっている! だから無骨なゴーレムが無駄に強いんだ!」
なんてふざけたルールだ。
つまり、私たちが勝つには……。
「……やるしかないの?」
私は覚悟を決めた。
プライドを捨てなければ、この包囲網は突破できない。
「フリージア! あんた元四天王でしょ! 一番可愛く鳴いて敵をひきつけて!」
「はぁ!? わ、私がですか!?」
「命令よ! 早く!」
フリージアは顔を真っ赤にして、震えながら口を開いた。
「……にゃ、にゃ~ん……?」
――ピタリ。
ゴーレムたちの動きが止まった。
センサーがフリージアを『カワイイ判定:B+』と認識し、敵対行動にラグが生じたのだ。
「いける! ヴェル、あんたも!」
「死んでも嫌だ!! 私の尊厳に関わる!」
「じゃあ死ね!」
私が蹴り飛ばすと、ヴェルは涙目で叫んだ。
「……う、うさぴょーん!!」
ゴーレムたちがガタガタと震えた。
『判定不能:キモカワイイ?』というエラーを起こしている。
「今よ! 『System Command Force_Cute (強制カワイイ化)』!」
私はその隙に、自分自身に管理者権限で『究極の愛らしさ』を付与した。
私の全身がピンク色のオーラに包まれ、背景に花が咲く。
「どいてくださる? 子猫ちゃんたち♪」
私がウインクしながら指鉄砲を撃つ(バーン☆)。
ドガァアアンッ!!
放たれたのはピンク色のハート型ビームだが、その威力は戦略級魔法並みだ。
ゴーレムたちは「カワイイイイッ!」と絶叫しながら爆散した。
「……勝った」
「……何か大事なものを失った気がする」
私たちはボロボロになりながら厨房を突破した。
精神的疲労が半端ない。
しかし、最上階への階段を登りきった先。
玉座の間で待っていたエレオノーラは、さらにとんでもないものを準備していた。
「あら、よく来ましたわね。でも、ここから先は『可愛さ』だけでは通れませんわよ」
彼女の背後にそびえ立っていたのは、巨大なピンク色のロボット。
リボンとフリルで装飾された、全高20メートルの『聖女専用機動兵器・プリティ・ガーディアン』だった。
「さあ、わたくしの『美意識』の前にひれ伏しなさい!」
ロボットが起動し、目がハート型に光る。
OS戦争、最終局面。
もはやファンタジーの欠片もない、巨大ロボットバトルが始まろうとしていた。




