第23話 縦ロール聖女と、文字化け魔法合戦
「あら、あなたがこの国の管理者(笑)ですの?」
屋敷の門を開けるなり、金髪縦ロールの幼女――エレオノーラは、扇子で口元を隠しながら私を見下ろした(身長は私の方が2センチ高いけど)。
見た目は天使のように愛らしいが、その瞳の奥には「私が一番」という強烈な自意識が見える。
「初めまして。私がアリスよ。……人の敷地内で勝手にWi-Fi(魔力波)飛ばさないでくれる?」
「あらやだ、気づきました? この国のセキュリティがあまりにザルだったので、つい『同期』しちゃいましたわ」
エレオノーラは悪びれもせず、空中にピンク色のウィンドウを展開した。
私の青いウィンドウとはデザインが全く違う。なんかキラキラしてるし、フォントが可愛い。
「単刀直入に言いますわ。あなたの権限、わたくしに譲渡なさい。そうすれば、わたくしの『エンパイアOS』のサブアカウントとして雇ってあげてもよろしくてよ?」
「お断りよ。あんたのOS、余計な機能ばっかりで重そうだし」
「なんですってぇ!? この『自動キラキラ補正機能』の素晴らしさが分からないなんて、これだから田舎の管理者は!」
バチバチと火花が散る。
交渉決裂だ。
「わたくしのシステムの優秀さ、身体で教えてあげますわ! 『Execute: Shiny_Arrow (キラキラの矢)』!」
エレオノーラが指を鳴らす。
空中に無数の光の矢が出現した。……が、その全てに星形のパーティクルが舞い、無駄に回転している。
「うざっ! 処理落ちするわよそんなエフェクト!」
「黙りなさい! 行けっ!」
矢が飛んでくる。
私は迎撃コマンドを入力する。
「『Command: Shield (シールド)』!」
私の前に青い障壁が出るはずだった。
しかし――。
ボワンッ。
出現したのは、一枚の『板チョコ』だった。
「は?」
「あら?」
キラキラの矢が板チョコに突き刺さり、チョコが砕け散る。私はチョコまみれになりながら呆然とした。
「な、なによこれ! シールドって打ったのに!」
「おーっほっほ! わたくしのOS環境下では、あなたの古いコードは誤変換されるのですわ! 『Shield』は『Sweet(お菓子)』と競合してバグったようですわね!」
くそっ、環境依存文字かよ!
こちらのコマンドが正しく認識されない。これではまともに戦えない。
「カイル! フリージア! 援護して!」
「了解! ……うわっ、体が動かない!?」
後ろを見ると、カイルとフリージアがカクカクとした動きで固まっていた。
「あぁ、ごめんなさいねぇ。わたくしのシステム、高機能すぎて古いハードウェア(人間)だと『ラグ』が発生しちゃうんですの」
「こ、この高スペック厨がぁ……!」
私は歯ぎしりした。
このままでは、私の屋敷も、私のスローライフも、全てこのピンク色のキラキラOSに上書きされてしまう。
「ふふん、降伏するなら今のうちですわよ? わたくしの靴をお舐めになれば、ゲスト権限くらいはあげますわ」
「……舐めるもんですか」
私はタブレットの画面を睨みつけた。
正規の方法が通じないなら、裏技を使うしかない。
OSが違うなら、無理やり『エミュレータ(仮想環境)』を噛ませてやる!
「後悔させてあげるわ、縦ロール! ……『System Command: Boot_Safe_Mode (セーフモード起動)』!」
私の瞳が怪しく輝いた。
キラキラvs青色、泥沼の互換性戦争(泥仕合)が本格化する。




