第22話 隣国からの「アップデート通知」
魔王騒動から半年。
私のスローライフは、盤石なものになっていた。
……はずだった。
「な、なによこれぇえええ!?」
ある朝、私の悲鳴が屋敷に響き渡った。
リビングに駆け込んできたカイルとフリージアが見たのは、頭を抱えてタブレット端末を凝視する私の姿だった。
「どうしたの? また魔王のスパムメール?」
「違う! 見てこれ!」
私が画面を見せる。
そこには、見たことのない真っ赤な警告ウィンドウが表示されていた。
『System Alert: New OS "Empire_v1.0" Detected.(新OS「エンパイア」を検知)』
『互換性の問題により、あなたの管理者権限の一部が制限されています』
「制限……? えっ、アリスの魔法が使えないってこと?」
「試してみるわよ! 『Create: Apple (リンゴ生成)』!」
私がコマンドを打つ。
いつもなら真っ赤なリンゴが出るはずだ。
しかし――。
ポンッ。
出てきたのは、ドロドロに溶けた紫色の物体(ピクセルが欠けた謎のオブジェ)だった。
「うわぁ!? なにこれ気持ち悪い!」
「文字化けしてる……! データの型が合ってないのよ!」
私は戦慄した。
この世界には私以外の「管理者」がいる。しかも、そいつが自分のルール(OS)をこの国にまで侵食させ始めているのだ。
その時、屋敷のチャイムが鳴った。
モニターを見ると、門の前に豪華絢爛な馬車が止まっている。
降りてきたのは、金髪縦ロールのいかにも高飛車な幼女と、屈強な騎士たちだった。
「ごめんくださーい! わたくし、東の大帝国『ガレリア』から参りました、聖女エレオノーラと申しますわ!」
マイクでも使っているのか、よく通る甲高い声だ。
「この国のシステムが古くて『ダサい』ので、わたくしが最新の『エンパイアOS』に統合して差し上げに来ましたの! 感謝なさい!」
……は?
ダサい? 私のシステムが?
私のこめかみに青筋が浮かんだ。
魔王よりもタチが悪い。これは「宗教戦争」ならぬ「OS戦争」の勃発だ。
「カイル、フリージア! 戦闘準備よ!」
「えっ、いきなり戦うの?」
「当たり前でしょ! 私の快適なシステム環境を荒らすウイルスは……即時駆除よ!!」
私はタブレットを鷲掴みにして、玄関へとダッシュした。
新たな敵は、高飛車縦ロール聖女(同業者)。
私の「最強」の座を賭けた、仁義なきマウント合戦が幕を開ける!




