第21話 エピローグ ~そしてスローライフ(仮)へ~
魔王ヴェルドラゴとの決戦から一ヶ月後。
世界は平和を取り戻していた。
元魔王ヴェルドラゴこと、ただの青年『ヴェル』は、王都のサイバー犯罪対策室(私が新設させた部署)で働くことになった。
「PCに触らせてくれるなら何でもする」と泣いて懇願されたので、そのハッキング能力を社会貢献に使わせることにしたのだ。今は毎日、徹夜でセキュリティの穴を塞ぐ仕事(ブラック労働)を楽しんでいるらしい。
元四天王たちはというと――。
「いらっしゃいませー! アリス商会のカキ氷はいかがですかー!」
王都の広場で、フリージアが元気よく呼び込みをしている。
彼女の氷魔法で作るカキ氷は「キーンとしない」と評判で、行列ができるほどの人気店になっていた。
ミラージュは大道芸人として、ハヤテは超速宅配便の配達員として、クラブロスは……まあ、相変わらず私のペット兼マスコットとして、それぞれ第二の人生を謳歌していた。
「アリスー、トマト収穫したよー」
私の屋敷の庭から、カイルが泥だらけで戻ってきた。
彼は私の家の居候……もとい、庭師として働いている。
「世界を救った英雄の相棒」という肩書きを捨て、土いじりに目覚めたらしい。
「ありがとう。じゃあ今日の夕飯はトマト鍋ね」
私は縁側でお茶を啜りながら答えた。
システムウィンドウを開くと、世界のバグ報告は驚くほど減っていた。
大きな脅威が去り、世界システム自体が安定期に入ったようだ。
『管理者権限』も、もう以前ほど使う必要はない。
たまに、美味しい料理を取り寄せたり、お風呂の温度を調整するくらいで十分だ。
「……平和だなぁ」
空を見上げると、どこまでも青い空が広がっている。
勇者パーティを追放され、魔王と戦い、世界を救ってしまったけれど。
結果的に、私は一番欲しかったものを手に入れた。
誰にも邪魔されない、自由で気ままなスローライフを。
「ねえアリス、今度みんなでピクニックに行かない?」
「いいね。お弁当は私が作るよ。……今度は爆弾抜きでね」
カイルと笑い合う。
私の冒険はこれで終わり。
でも、この賑やかで楽しい日常は、これからもずっと続いていく。
私はシステムウィンドウの『ログアウト』ボタンを押す代わりに、そっとウィンドウを閉じた。
――だって、この世界(現実)は、ゲームよりもずっと面白いから。
『「役立たずの荷物持ち」と勇者パーティを追放された幼女ですが、実は世界システムの「管理者」でした』
(完)




