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「役立たずの荷物持ち」と勇者パーティを追放された幼女(10歳)ですが、実は世界システムの「管理者(アドミニストレータ)」でした。  作者: NN


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第16話 ハッカー魔王と、強制ログアウト

「嘘でしょ……私のファイアウォールが突破されてる!?」


 私は砦の一室で、タブレット画面にかじりついていた。

 画面上では、真っ赤な警告ウィンドウが次々とポップアップし、私の防衛プログラムを食い荒らしている。


『Access Denied... Bypass Successful.(アクセス拒否... 迂回成功)』

『System Authority: Level 3 Cleared.(権限レベル3、突破)』


「おいおい、レベル3って『天候操作』クラスだぞ。これ以上行かれたらヤバいんじゃない?」

「分かってるわよ! くそっ、向こうの処理速度が速すぎる!」


 私は必死にカウンタープログラムを打ち込む。

 指先が残像になるほどの速度でキーを叩くが、敵の侵入速度はそれを上回っていた。

 まるで、私の思考パターンを完全に読んでいるかのような動き。


「アリス様! 外を見てください!」


 秘書(元四天王)フリージアが窓際で叫んだ。

 見ると、空の色がおかしい。

 さっきまで快晴だった空が、グリッチノイズのような不気味な紫色のモザイクに覆われ始めている。


「世界が……バグってる?」

「テクスチャの剥離現象だわ。向こうが環境データを書き換えようとしてる!」


 このままでは、世界全体が魔王の支配領域ダークゾーンに上書きされてしまう。

 私は決断した。


「カイル! 私とパスを繋いで! あんたの『解析アナライズ』能力をCPU代わりにする!」

「えっ、僕の脳みそ焼けるかもよ?」

「死ななきゃ安い! はい接続!」


 私はカイルの頭に手を置き、システム権限で強制同期シンクロした。


「うぐっ……!? 情報量が……!」

「我慢して! ……よし、処理速度向上。反撃開始!」


 カイルという外部演算装置を得て、私のタイピング速度は限界を超えた。


『Counter Program: "Holy_Firewall" Activate.(聖なる防火壁、起動)』

『Target: Unknown Hacker → Trace Route (逆探知)』


 私の放ったプログラムが、敵の侵入コードを焼き尽くし、その発信元へと遡っていく。

 電脳空間を駆け抜け、辿り着いた先は――魔王城の最深部。

 そこにある『玉座の間』のモニターに、一つの姿が映し出された。


 漆黒の鎧を纏った巨漢……ではない。

 そこに座っていたのは、眼鏡をかけ、ジャージ姿で多画面モニターに囲まれた、引きこもりのような青年だった。


『……ほう。ここまで辿り着くとはな』


 モニター越しの青年――魔王ヴェルドラゴが、ニヤリと笑った。


「あんたが魔王!? ……その格好、もしかして」

『察しがいいな。私もまた、異世界からの来訪者(転生者)だ』


 やっぱり。

 この世界をゲームかプログラムのように扱えるのは、現代知識を持つ者だけだ。


『私はこのクソゲー(理不尽な世界)のバランス調整に絶望した。だから私が運営(GM)になり、全てのルールを書き換えることにしたのだ』

「だからって、勝手にハッキングしないでよ! 迷惑メールも送ってくるし!」

『フッ、交渉決裂か。ならば……力尽くで権限(ID)を奪うまで』


 魔王がキーボードを叩く。

 瞬間、私のタブレットから強烈な魔力衝撃波が放たれた。


「きゃあっ!?」

「うわっ!」


 私とカイルは吹き飛ばされ、タブレットが火花を散らしてショートした。


『今日のところは挨拶だ。次は直接、私の城へ招待しよう。……最高の「ラストダンジョン」を用意して待っているぞ、管理者殿』


 プツン、と通信が切れる。

 空のノイズも消え、元の青空が戻ってきた。


「……はぁ、はぁ……死ぬかと思った」


 カイルが床で大の字になって荒い息を吐いている。

 私も手が震えていた。

 初めてだ。私と互角……いや、攻撃性においては私以上のスキルを持つ相手。


「アリス様、大丈夫ですか?」

「……うん。でも、もう逃げられないみたい」


 私は黒く焦げたタブレットを握りしめた。

 魔王は本気で世界を書き換える気だ。

 それを止められるのは、正規管理者アドミニストレータである私しかいない。


「行くわよ、魔王城へ。……私のスローライフを取り戻すために、あの引きこもり魔王を『BAN(永久追放)』してやる!」


 私は高らかに宣言した。

 もはやこれはファンタジーではない。

 世界を賭けた、システムエンジニア同士の仁義なき戦い(デスマーチ)の始まりだった。

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