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2話. 炎よ燃えろ!目指せクラスの普通枠(目立ちたくないのに目立つ件)

炎魔法の授業は順調……じゃなかった!しょぼい火しか出せないあたしとリンダは、目立たず平穏に過ごすはずが、推し(アレク先生)パワーでやる気スイッチがON!?ところがその後、学園のエリート・ジョン様の登場で、不穏な記憶が蘇り……?モブを目指す少女の波乱の日常、開幕!

「むむむっ!炎の精霊よ、我が手に宿るがよい!」


 気分だけは一人前の魔法使い。けれど現実は、ボフッと煙がモクモク……教室の空気をちょっと焦がしただけ。


 ここはヴァレンシア魔法学園・初級クラスの教室。大きな窓から光が差し込み、木製の机がきれいに並んでいる。壁には簡単な魔法陣の見本や、「呪文コンクール金賞!」なんて貼り紙もあって、見るたびに「いやいや、レベル違うんですけど」と心の中でツッコミを入れたくなる。


「あーあ、炎の精霊さん、せめてもう少し気合い入れてくれないかなぁ?」


 文句を言いながら手をかざすと、ちょろっと出てきたのは豆粒サイズの火。隣を見ると、リンダも指先にちょこんと小さな火の玉を乗せて苦笑いしていた。


 教室中を見渡せば、ほとんどの生徒がボッボボッと大きな炎を軽々と操っている。その光景にリンダと顔を見合わせ、「わはは……」と乾いた笑いが漏れた。


「まぁ、うちらにはうちらのペースがあるよね!」

「豆粒から目指せ焼きマシュマロ!」


 自分たちのショボい火力をネタにして、無理やりテンションを上げていると、突然背後から優しい声がかかった。


「アリアナさん、リンダさん。努力する姿勢はとても素敵ですよ」


 振り向けば、そこには担任のアレクサンダー・ブラックウッド先生。

 四十代前半の長身スラリ、黒髪のアイビーカットがトレードマーク。いつも穏やかで、柔らかい笑顔が似合う人だ。生徒たちからは親しみを込めて「アレク先生」と呼ばれていて、あたしにとっては癒し枠、そして推し枠でもある。


「うぅ……センセ~、ありがとうございます~!」

 感激しながらペコリと頭を下げると、なんと先生があたしの豪快ボブとリンダのふわふわツインテールを交互になでなでしてくれた。


「きゃ~~っ!?推しに頭なでられた!これもう実質イベントSSR演出でしょ!」

 心の中で意味不明なガチャ演出が爆裂して、あたしのHPは一瞬で全回復した。


「よしっ、今日から自習強化週間、始めるわ!」

「え、マジで?」

「推しにいいとこ見せたいじゃん!それがモブの意地よ!」


 そんなノリで放課後の教室に居残り、自習開始。チョークまみれになりながら魔法陣を何度も描き直し、呪文を唱えるたびに失敗を繰り返した。あたしとリンダ、二人で励まし合いながら、地道に火花を散らす努力を重ねる。


「アリアナ、もうこんな時間!早くエントランスに行かないと、上級生の出待ちに間に合わないよ!」

「あ、やば!すっかり忘れてた!」


 リンダの推し活イベントに巻き込まれ、あたしたちはドタバタとエントランスホールへ向かった。


 ヴァレンシア魔法学園のエントランスホールは、天井が高く、シャンデリア型の魔法灯が優しい光を放っている。大きなガラス窓からは美しい園庭が見え、噴水の水がキラキラ反射して壁に映り込む。階段には貴族たちの執事がズラッと並んで、ご令息やご令嬢を出迎える姿があった。


 そんな格式高い空間に、ひときわ甲高い声が響き渡る。


「きゃー!ジョン様~~っ!」


 そこに姿を現したのは、学園の風紀委員長にして魔法学園首席のジョン・ウィリアムズ様。由緒正しき公爵家の御曹司でありながら、王家の事情により次期王太子候補として名を馳せる存在なのだ。

 グレージュ系の髪をマッシュウルフにまとめ、淡褐色の瞳に涼しげな表情。鍛え抜かれた体は、軽い歩みですら優雅さを纏っている。


 生徒たちが「ジョン様~!」と手を振ると、彼はほんのわずかに手を上げただけ。それだけで女子たちは悲鳴&失神寸前だ。


 うん、やっぱり苦手なタイプ。


 あたしは特にファンでもないので、リンダの横で適当に拍手してモブらしく溶け込む。

 なのに、その瞬間──。


 頭に走る、見覚えのない光景。

 磔にされた自分。

 冷たく見下ろすジョン様の瞳。

 銀髪の騎士が剣を振り上げる。


「なにこれ、ホラー?」


 背筋がゾワッと冷たくなった。


「アリアナ?どうしたの?」

「いや、なんでもない……たぶん気のせい」


 リンダは推しを追うのに夢中で、こっちの違和感には気づいていない。

 だけど、胸の奥にくすぶる不安は消えそうもない。


 モブとして平穏に生きるはずだったのに──なんか、思い出しちゃったっぽいんですけど。




炎魔法より推しのなでなでが強化バフになった回でした!でも最後に思い出したのは、まさかの処刑フラグ!?果たしてあたしはモブとして生き残れるのか……次回もお楽しみに!

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