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9.神vs一般男性

 とある日、いつも通り何体かモンスターを討伐し帰ってきた時のこと。

 エクセアが街の門から少し身体をはみ出して、そのまま気絶するように寝ていた。


「エクセア、エクセア起きて!」

「ん、むにゃ?……あれ、私こんなところで」

「……また酔っ払って記憶飛ばしてるじゃん。

 ほら、酒場まで戻るよ」


 エクセアは最近、酒場の2階に寝泊まりしているらしい。

 勿論、天界に帰れば家はあるらしいが相変わらず天界での生活は息苦しいらしい。

 とりあえず、報酬を貰って分けるのとかは二人に任せて俺は酒場までエクセアを送り届けることにした。


「……は、そうだ!

 私は今から、ボスモンスターを討伐してくるんだ!」

「え、どうしたの急に。

 こういうのってエクセアが行っても良いの?」

「分かんないけどとにかく行く!」


 どうやら、このまま酒場に預けてもまた勝手に出ていって危険な目に遭いそうな勢いだったため話を聞くことにした。

 酒場に行くとギャンブルさんが迎えにきてくれる。


「おやおや、これはだいぶ酔ってるね。

 大丈夫かー、エクセアー」


 期待の席に着くと、やっぱり不満があったのだろうエクセアは滝のように言葉が溢れて止まらない。


「皆、私のことなめすぎなんだよ!

 ……ったく、これでも一応女神なんだぞー!」

「まあまあ、俺は普通に接しやすくて良いと思ってるよ。

 なんだかんだ、この世界も楽しいしね」

「でもでも……やっぱり颯太……お前は舐めてるだろ!」


 酔っ払いの対応ってこんな気持ちなのか。

 普段も酔っ払ってるが、それもまだまだ本領じゃなかったことがこうしてみるとよく分かる。

 今日は特に荒れている、天界で小言でも言われたのだろうか。


「よし分かった、こうなったら私もやけだ。

 颯太、これから私と勝負してもらおうか!

 ……ちなみに、手抜いたりしたら分かるからな!?」

「えーと、悪いんだけど付き合ってあげてくれないか?」


 まあ、ギャンブルさんにはお世話になったしな。

 それにエクセアがこんなに荒れているのは初めて見た。

 相当ストレスが溜まっているのだろう。

 仕方ない……受けて立つとするか。


「それじゃまず、一番最初!

 我慢強さと、器用さ……更には運まで様々な要素が交差する!釣り対決だ!」


 川に向かって、思いっきり浮きを投げ時間を待つ。

 正直、俺もエクセアさんの様子なんか気にすることができないほど初心者だ。

 そもそも魚が釣れるのかどうかすら半信半疑だ。


「……こねぇ、全然」


 やばいやばい、制限時間は1時間だが既にもう50分の時間が経過してしまっている。

 釣り餌を変えてみたり、何度も投げ直してみたり誰か教えてくれる人がいるわけでもないため、自分なりに試行錯誤してみたが、やはり厳しいのか。


 ……ぐぐっ!


 何だ?……もしかして、来るのか?

 突然感じた竿の重みを確かめながら、思いっきりリールを巻く。

 きた、きた……大物かもしれない。

 せめて一匹、でかいの釣ってやれ〜!


 ……竿の先には、あまりにもミニマムな小魚がかかっている。

 餌はとっくに他の魚に取られていたようで、奇跡的に引っかかってくれたようだ。

 結果的に、つけていた餌より小さいためマイナスとすら言えるかもしれない。


「そこまで!」


 ギャンブルさんの掛け声で、釣り竿を置く。

 ……まあ、初心者の割には頑張った方だろう。


「勝者、颯太!」


 え?……驚きのあまり、エクセアの方を見てみる。

 …………うん、めっちゃくちゃ寝てる。

 勝負は0対1近年類をみないしょぼい勝利だ。


「ああ!もうじゃあ寝ない競技にする!

 100m走!……これで決着をつける!」


 モンスター討伐して介抱して釣りして……今度は全力ダッシュか。

 正直、運動も得意な方ではなかったが最近は冒険者として運動能力も鍛えられているはずだ。

 この酒飲み相手なら、流石に勝てるだろう。


「よーい……」


 そこまで聞こえたところで、エクセアに急に抱きつかれる。

 へ……なんて声が出て、ドキドキと鳴り響く心臓のまま彼女の顔を見ると明らかに青い。

 いや……まさかな。


「ご、ごめん……うええええええええ!」


 ……もう最悪だ。

 この勝負は不戦勝だったが、その分色々なものを失った気がする。


「とりあえずエクセアは寝たようだ。

 本当に申し訳ないね、迷惑をかけた」

「……本当……まあいいや。

 エクセアにも色々、思うところもあるんだろうし」


 次やったら許さないが、まあ今回くらいは許すとしよう。

 ギャンブルさんが服を洗濯してくれたし、負った傷はそう多くない。


「そうだね、まあ今度会った時にでもエクセアのこと褒めてあげてほしい」

「まあ、明日とか会えれば……」


 そんなわけで、ようやく解放された俺は自宅に帰って落ち着く時間を与えられたのだった。

 よし、明日もモンスター討伐頑張るとするか!


 そんなわけで次の日、いつも通り準備を進めていると扉を強く叩かれる。


「はーい、すいません。

 うちは勧誘とかお断りさせていただいてるですけど。

 あれ……確か……颯太の友達のギャンブルさん?」

「……ふわぁ、ギャンブルさんこんな朝早くからどうしたのさ?」


 ギャンブルさんは明らかに焦った表情で言う。


「私も、今朝酒場の主人から聞いたことなんだけど。

 エクセアが行方をくらましたらしい……」

「「え?」」


 エクセアがいない……昨日と同じことを考えてるとするなら、ボスを倒しに……。

 この世界には当たり前に死があって、エクセアはボスと戦って勝てるとは、到底思えない。


「……どうかこの通り、ボスの討伐を手伝ってくれ」


 少し戸惑う俺たち、ギャンブルさんの背中から顔を出したアリビアが言う。


「迷ったって、どうせすぐ行くんでしょ!

 ほら、早く早く!」


 ……まあ、そうだな。

 エクセアがいなくなったら、ただでさえ趣味がなくて暇を持て余している俺の人生が更につまらなくなる。

 ボス戦、どんなやつがいるのかは分からないが強いことは確か。

 けど、こうしてギャンブルさんがわざわざ俺たちの元にやってきたのは変すぎる俺たちのパーティならワンチャンがあると思ったからかもしれない。

 ダクスさんたちは一度負けてたし。

 

「ふぅ……多分ボコボコにされるけど。

 せめて、エクセア連れ帰ってみんなで説教しよう」


 絶対に身の丈に合わないほどの強敵なのにも関わらず、俺たちは迷いなく家を飛び出す。

 初めてのボス戦、ミッションはこの世界の女神様救出だ。

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