13.応援部隊
「おはよう……!」
「……おはようございます」
俺は鼻歌を歌いながら席に着く。
今日は朝からどうしてもテンションが上がってしまう。
「うーん、今日もご飯が美味しいなぁ……!」
「……あの、何かあるんですか?」
「そう、ちょっと楽しみな用事があって」
「…………………………」
相変わらず俺を疑うような目で見てくるヒーコ。
だが、別にやましいことをしているわけではない俺はそんな彼女にある提案をしてみる。
「どうする、ヒーコも来る?」
「え、私が行ってもいいやつなんですか?」
「それは勿論、別に普通の趣味で隠してないもん」
というわけで、ヒーコを連れてやってきたのは街に最近できた大きなステージ。
まさしく、ライブやパフォーマンスをするには最適な場所である。
「あ、いたいた!
おーい、1さん2さん!」
「おお、来たな3くん。
どうじゃ、わしの建てたステージは?」
「めちゃくちゃいい!これならメメメちゃんのステージがよく見えますね!」
「え…………え…………あ……」
ん……ああ、ヒーコがとんでも無く驚いているがそれも無理はないだろう。
俺が話している1さんというのは、この町の町長であり2さんというのは、ギルドの受付嬢だ。
立場も年齢も違う俺たちがこうして仲良くなっているのは不思議な体験だろう。
「ていうか知ってる?
メメメちゃん、今日は新曲だすらしいよ?」
「マジか!?……老人にまた新しい歌詞覚えさせるなんて厳しいのー!はっはっは!」
「俺なんかまだまだ新入りだから、これまでの曲覚えるのに必死だっていうのに!」
ベルーラはグイグイ、と俺の服の裾を引いてこちらに来いと少し遠いところへ誘導する。
「あの……これって結局何の集まりなんですか?」
「ああそうだよね……これは、メメメちゃんって言うアイドルを応援するために集まったんだよ」
「メメメちゃん……アイドル……?」
そうか、この世界は異世界転移の影響である程度娯楽は伝わっているものの、そこまで浸透していない。
アイドルについても、知らない人が多数なのか。
「要は、歌とかダンスとか……そういうパフォーマンスを見て楽しむって感じ。
俺たちは俺たちで、色んな楽しみ方するけどとりあえずベルーラは自分なりに楽しめば良いんだよ」
「わ、わかりました!
ちょっとまだよく分かっていない部分も多いですけど私も参加してみます!」
というわけで、俺たちも準備を始める。
ペンライトを両手に握りしめて、メメメちゃんの登場を待つ……ああ、この始まる数分前の空気は堪らない……!
「みんなぁ!今日も来てくれてありがとー!!
このおっきなステージでの初ライブ……楽しい思い出にるように沢山盛り上げてねー!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
メメメちゃんは今日もめちゃくちゃ凄いパフォーマンスを見せている。
俺たちもどんどんと熱量が上がっていく。
「それじゃ聞いてください……今日の新曲!
キャットダンス!」
まさかの一発目から新曲。
俺たちの留められない熱量を解き放つようにメメメちゃんにコール&レスポンスを返す。
ふと、ベルーラを見てみるとただじっくりとステージを眺めていて、楽しめているか心配になった。
「……ここまで付き合ってくれてありがとー!
この後は、交流会するから最後まで付き合ってね!」
俺が最初行った時には、それこそ俺が一番の新参者でありその時ライブを見ていたのは3人くらいだったが、今日は十数人くらいは集まっていたらしい。
その中でも、交流会に行きたいと思っている人も少なくないようだ。
「いやぁ、新曲もめっちゃ良かったですね……。
人だって増えてきてるし、ギルド内でちょっとずつ布教しといて良かったなぁ……」
「いやぁ、本当に良かった……昇天しそうな気分じゃ」
「1さん……洒落になんないですそれ」
と、メメメちゃんはすぐにステージから降りてきて皆に向かって手を振る。
「それじゃ1人5分くらいで……良ければお話ししたい人お願いしまーす!」
それじゃ行こうか……そう思って頷き合ったその瞬間、誰よりも早くベルーラがメメメちゃんの元へ向かう。
「……あの、私こういうの分かってなくて!
けど、なんていうか……凄い良かったです!
…………これからも、応援してます!」
「んふふ、ありがとう!
めっちゃ可愛いじゃーん、ぎゅってさせて!」
良かった、思ったよりベルーラは楽しんでいたようだ。
嬉しそうな俺のことを見た2人が、ニヤニヤと俺の肩を叩く。
その後は俺たちもそれぞれメメメちゃんと色んな話をして今日のステージは大成功で終わることになった。
「おお、そうだ。
せっかくだし、今日は酒場で打ち上げするか!
わしが奢ってやるぞ!」
「良いですね……あ、そうだ。
ベルーラちゃんも良かったらくる?」
「はい、行きたいです!
先輩方に、色んなこと教わりたいです!」
酒場でご飯を食べながら、色んな話をする。
共通の趣味だ、あっという間に時間が過ぎていく。
「そういえば、皆さんは何で番号で呼び合ってるんですか?」
「あー……完全な身内ノリなんだけど。
仲良くなった中で、メメメちゃんのファン何号!……みたいな」
「えー!じゃあ私も番号欲しいです!」
もうお酒を飲みまくってテンションが上がっている1さんが声を上げた。
「よし、じゃあベルーラちゃんが5番な!」
「5番……ですか?」
その瞬間、ガチャリと扉が開いてアリビアが顔を覗かせる。
俺たちであることを確認した瞬間、勢いよく隣に座ってくる。
「ちょっとちょっと!外から声が聞こえると思ったらやっぱり颯太たちじゃん!
あー……このメンツ……明日のライブに向けて決起集会ってやつ!?」
そう、俺たちメメメちゃんファンクラブのNO4であるベルコ。
そんな彼女とは何度も予定を確認したはずだ。
何なら昨日会って、明日楽しみだね……なんて話をしたことさえ記憶に残っている。
「「…………………………」」
まあ、そうだよな。
全員一応、確認したもんな。
俺たちの伝達ミスじゃ……ないはずだよな。
「……次は、私がお家に迎えに行きますよ。
この中だと一番後輩なので」
陽気にメメメちゃんの歌を歌っているアリビア。
気まずそうにお互いの顔を見合わせて喋らない俺たち。
結局、真実を伝えるのに30分の時間を要した。
「もう終わったぁ!?
そんなああああああああああああああ!!」




