12.第一回定例会議
俺たちが最初のボスキャラを倒してから街は変化をし始めた。まず一つ目が、ワープゾーンの出現。
どうやら、ボスを倒して新しくいける場所が増えたのだが、そこに即座にいけるワープゾーンが出現したらしい。
つくづく、前の勇者がゲーム感覚でこの世界の難易度を上げたのだと思って腹が立つ。
二つ目に、マッスルの遺跡がダンジョン化した。
そこにはどうやら特別強い敵は存在せず、あのボスキャラはいわば早い者勝ちだったということらしい。
それで手に入れた素材もあったし、エクセアを助けるついでだったとはいえラッキーだった。
そして三つ目、それは月毎の定例会議が始まるということだ。
これから、どんどんと世界は進んでいくし広がった地域にも生活圏が存在する。
そんな時に、方針を決めておく必要があるということからこの会議の発足が決まったらしい。
今日はそんな会議の第一回というわけだ。
「えー……それでは。
これより第一回、ディアル町方針会議を始めさせていただきます。
えー投票の結果、私シャラスが議事進行を務めさせていただくことになりました。
毎月、よろしくお願いいたします……」
パチパチパチパチ……まあ、元々少人数精鋭の会議だ。
まばらに拍手が鳴り響く中、話は続く。
「えーそれではですね、まずは自己紹介ということで。
町長から順にお願いします」
「この町の町長であるグランパじゃ。
えーまあ、ここにいる方々は非常にわしの中でも信頼している。実りのある会議になると思っておるぞ」
「えーディアル町商工会のまとめ役で、普段は酒場の経営をしてますミードです!颯太くん、後でね〜」
「冒険者のダクスです。
街が良くなっていくような話し合いができることを願っております」
……うわぁ、街の会議で選ばれた偉い人たちのことほとんど知ってるんだ俺。
完全にこの街に溶け込んでしまったな。
「……颯太さん?」
「あ、俺か……えーと同じく冒険者の颯太です。
てか、1さんってこの町の町長だったんですね。
めっちゃびっくりしました!」
「ちょっと、颯太くんその呼び方やめてよ!
わし、趣味とプライベートは完全分けるタイプなんじゃから!」
「……え、何すかこのだるいノリ。
こほん、とにかくまあ……色々と有識者の方に集まっていただいたので早速話し合いを始めます。
それでは、最初の議題……これは颯太さん含めた冒険者方の話になるんですが……。
今度どうやって、第二のボス攻略を目指しますか?」
とんとんとダクスさんが俺の肩を叩く。
え、どうやら俺が答えないといけないらしい。
急いで立ち上がって自分の意見を話し始める。
「えと、勿論パーティそれぞれの考えを尊重します。
その上で、俺たちのパーティはとりあえずこの街から離れないかな?」
「え!!……こほん、続きをお願いします」
まあ一応は、ボスを倒した初めてのパーティだしな。
それだけ、向上心のある奴らだと思われたのかもしれない。
「とりあえずエクセアが起きるのも待ちたいし。
これから、結構大きなイベントもあるし。
それにレベルもまだまだ全然足りていないと感じるし。
とにかく、色々とまだやり残したことがあるので」
皆が大きくうんうんと頷いている。
どうやら、納得してもらえたということらしい。
「まあ、とりあえず町の方針としては行くのもモンスターと戦うことも自由ということで進めさせてもらう。
ワープゾーンも危なくないことを確認したから行くなら自己判断じゃな」
「それじゃ、先に僕らが先遣隊として見てきます。
颯太くんはいけると思うタイミングできて貰えば」
と、そんな感じで色々な話が進んでいく。
さっきの話以外は、特に颯太が踏み入れる場面もなさそうなまま、会議は終盤まで行った。
「あ、そうだ。
颯太さん、あなた達のパーティの方々からも意見を集めていただきましたか?」
そういえば、3人に意見があればメモをするように言っておいたのだった。
昨日の夜のうちに集めた3枚のメモを見てみる。
「今日は、私の得意料理であるビーフシチューで出来立てを食べてもらいたいので、寄り道をせずに帰ってきてください」
「何か、楽しいことして〜」
「とりあえずは颯太の意見に従うけど一つだけ……。
あの、山奥でやってるドラゴンレースは確実に不正を働いている。お金返せ」
メモの内容を一通り確認して、すぐにポケットに戻す。
「んー……特になさそう……かな?
楽しければOK……的な」
ということで今月の会議は終了したのだった。
何だか気が抜けて、大きく背伸びをした後欠伸が溢れてしまった。
「お疲れじゃないか、颯太」
「あミードさん、お疲れ様です。
エクセアの調子はどうですか?」
「……まあ、寝たままだね。
実際、本人に聞いた時にも死ぬことはないと言っていたから大丈夫だとは思うんだけど……そういえば、出来上がったけど見にくるかい?」
「マジですか!?」
そう、酒場の主人であるミードさん。
そんな彼女には裏の顔がある。
酒場の裏にある部屋は、沢山の剣やそれを加工するハンマーにペンチに……よく分からない専門用具色々。
「さぁ、私が丹精込めて作った一品だ……受けとんな!」
そう、彼女は鍛治氏という顔も持つのだ。
そして俺は、あのマッスルから素材を集めそれで防具を作ることを彼女にお願いしていた。
「まあ、これで恐らく爆発するトラップのダメージは防げる。
流石に状態異常のトラップはキツイだろうけどね」
黒を基調とした軽装アーマー……普通にめちゃくちゃ格好いい。
それにこれを装備しておけば、爆発トラップのダメージを抑えられるため、最悪一人でも冒険にいけるわけだ。
早速、着ようとすると彼女に止められる。
「ちょっと待ちな!
そのムキムキアーマーは呪いの装備なんだよ」
呪いの装備?……急いで俺はその装備を手から離す。
後、普通に変な名前つけられてるな。
でも今はとにかく、呪いの方が気になってしょうがない。
「えー、これで装備したら外れないとか嫌ですよ……。
お風呂とか入れなくなるじゃないですか」
「いや、そんな呪いじゃないよ……その装備をつけるとね たまにめちゃくちゃ腹筋が揺らされて、強制的にシックスパックにしようとしてくるんだ」
……なんか、サッカー選手が頭に浮かんだ。
それ……やっぱキツイのかな……地味に嫌だな。




