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11.第二形態

俺の筋肉はまだまだ留まるところを知らないぜー!!

 ふおおおおおおお!マッスル!!」


 まさかの第二形態になったマッスル(ハニワ)。

 その迫力は凄まじく、少なくとも第一形態よりは強力になっているのだ。

 つたる冷や汗をふいて、息を整える。


「大丈夫、まだやりようある!

 今はハニワじゃなくて普通に筋肉ムキムキのモンスターだ。だったら、状態異常も入る。

 さっきのトランプの技で毒さえ引ければ……!」

「すまない、さっきのは対象一人につき一回までしか使えないんだ……」

「ああ、大丈夫……大丈夫…………」


 マジか、毒は絶対いい作戦だと思ったんだけど……。


「いや、安心して!

 今の私たちは多分自分たちが思っているよりずっと強い!

 なんせヒーコの回復で死ぬことはないし、私と颯太の攻撃だって今なら蓄積されるはず!

 とりゃああああああああああ!」


 そうだ、あのハニワを倒した一撃……!

 あれなら致命傷と言わずともダメージが蓄積されていくはず。


「ohh……!

 これはめちゃめちゃ良いね〜!

 筋肉のツボを押してくれたのかな?パンプアップ!」


 マッスルポーズを決めた瞬間、衝撃波に吹き飛ばされる。

 自分の全力が軽くあしらわれたことに困惑するアリビア。そこで俺も絶望感に吐き気すら覚える。


「ここまできたのはお前らが初めてだ!

 ……その実力は、褒めてやってもいいぜ!」


 相変わらずウザったらしい教鞭を垂れてくるマッスルは追撃のように言う。


「ただし……?俺に挑む適正レベルは99!

 …………ちょっと舐めすぎなんだYO!」


 ああくそ、ふざけんな。

 クリア後の二週目みたいな難易度にレベル1の状態で送りやがって。

 どんなにプレイが上手くても、どんなに頭が良くても。

 そもそも1……それどころか1もダメージが入んないんじゃ勝てるわけがない。

 これは鬼畜なんてもんじゃない、無理ゲーだ。


「……おい、そんな諦めたような顔をするのは辞めてくれよ。まだ、私たちには勝つ手段があるじゃないか……」

「ギャンブルさん……ごめん、もう心折れた。

 手段があるなら、見せてほしい……な」

「良いだろう、私たち格下が圧倒的な格上を倒す方法。

 それは、運だ……!」


 ギャンブルさんの手にはコインが握られている。

 そのコインをピンっと上に上げ、手の甲に落とす。

 表……それを繰り返して三回連続で表を出した。


「2……4……8……三回連続か。

 ただまあ、これならいけるだろ?」


 瞬間、ギャンブルさんの手には大きなハンマーが握られていた。

 その表面には大きく8と書かれている。


「残念だったね、筋肉くん……。

 私はこういうギリギリで勝機を掴み取るから、ギャンブラーなんだ。

 いくぞ!8倍、クリティカルハンマー!」


 とんでもない轟音とともに振り下ろされるハンマーの一撃。

 ハンマーがマッスルに直撃した瞬間、とんでもない衝撃と共に、大きな砂埃が上がる。

 数秒後……そこには倒れるギャンブルさんの姿があった。


「いや、今の勝つ流れじゃないんですか!?」

「……ふふ、ふははははははは!」


 俺が上げた、笑い声。

 こんな絶望的な状況でおかしくなったのかとヒーコは怪訝そうな目を向けてくる。


「いや、違うんだよ。

 なんだ、あるんじゃん……勝つ方法!

 まだ立てるよね、ギャンブルさん!」

「……オーライ!」

「はぁ……こんな状況でもコントできるなら安心しました。スーパーヒール!

 そして、スタミナヒール……多分ギャンブルさんが何とかするってことですよね!」


 ギャンブルさんはもう一回コイントスを投げる。

 2倍……4倍……終わり……。

 今度は、4と書かれたハンマーが手元に来る。


「おい、俺より脳筋じゃないかお前ら!

 少しは学習しろよ!!マッスル!!!」

「そうだね……少しは頭使えって話だ。

 けど、今は脳筋にもなりたいくらい終わってる状況なんだよ!」


 俺は思いっきりマッスルを殴る。

 相変わらず効いてなさそうなマッスルは高らかに笑い声を上げた。


「はっはっは!!

 だから、俺にはダメージは入らないんだって!

 マ……うん?……何だ……身体が」

「くらっとけ俺の新スキル、スタントラップ」


 まあ、勿論俺も動けなくなるんだが。

 そんな俺のことを軽量化で持ち上げて、一気に引き離す

アリビア。

 俺はがむしゃらに声をあげる。


「ギャンブルさん!

 本物のギャンブラーは絶対負けないんだよね!」

「ああ、そうさ……」


 ギャンブルさんは身体が麻痺して動かないマッスルから視線を外さないようにしながら、コイントスを続ける。


「ギャンブルさんが失敗したら、またスタンかけてあいつのこと麻痺らせるから!」

「ギャンブルさんが殴られてもまた体力とスタミナは回復します!」

「ギャンブルさんが反撃を受けそうになったら、私が全力で助けに行くよ!」


 そんな言葉の中でも、まだギャンブルさんのコイントスは終わらない。


「ああ、そうさ……そうなんだよ。

 私は負けない必勝法を編み出したんだよ……」


 彼女の手には、ようやくハンマーが握られる。

 その表面にはこう書かれている、1024。


「私は絶対に負けない、何故なら……勝つまで戦うことを辞めないからだ!

 1024倍、クリティカルハンマー!!!」


 マッスルは思いっきり吹っ飛ばされた。

 遺跡の最奥地まで吹き飛ばされた彼の身体は壁を突き破り、そこでようやく勢いを止める。

 遺跡の地面がまた、大きく割れてエクセアの姿が現れる。

 寝たままの彼女を抱え上げ、息があるのを確認したところで俺たちは勝利を確信した。


「「よっしゃあああああああああ!!」」


 俺はそのまま、ギャンブルさんに握手を求める。


「今回は、ギャンブルさんに助けられた」

「……そんなことはないだろう、皆の協力があってのものなんだから。

 ただまあ、確かに一番活躍したのは私だからね……」


 ギャンブルさんは嬉しそうに自分のことを指差した。


「是非とも、パーティメンバーに入れてくれ。

 職業ギャンブラーの32レベル、ミダンだ」


 トラッパーに聖職者に騎士にギャンブラー。

 タンクもいなければ魔法攻撃ができる人もいない。

 なんなら、安定して火力を出せるアタッカーもいやしない。

 ようやく、揃った4人パーティはあまりにパーティバランスが悪すぎる。

 それでも俺はこのパーティが、どうしても気に入ってしまったのだ。


「今の俺たちならギャンブル行っても勝てるかな?」

「当たり前だ、負けを考えることなど無粋だよ」

「いや、そういえば名言みたいに言ってましたけど勝つまで辞めないから勝つって、相当酷い理論ですよ……」

「ねぇ、そんなことよりミダンがパーティ入ったことを祝してご飯食べ行こうよ!」

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