第四話「情」
起、カノンとの交流を通し、司隊本部へ馴染んでいくナオト
翌日。ナオトはサヤに、カノンとの交流が楽しかった事を話していた。
「カノンは本当に優しいな。だから僕、もっと司隊本部に馴染んでいきたいんだ。」
「そう。ならよかったわね。じゃあ、この司隊の隊員たちを、紹介していきましょうか。」
「やったあ!」
これまで、カノンとの交流を通し、心を拓いたナオトは、司隊の隊員たちと仲良くなり、司隊に馴染んでいきたいと言った。そして、サヤはナオトを隊員たちの集まる司令室へ連れていく。司令室では僧服の男性隊員、巫女服の女性隊員が集まっている。緊張ながらも、隊員たちに挨拶するナオト。すると、個性豊かな3人の隊員がナオトに挨拶した。
「阿修羅ユイです。よろしくお願いします。」
「摩利シンイチだ!よろしくっ!」
「不動アキトだ。よろしくな。」
冷静沈着な女性隊員の阿修羅ユイ、お調子者で、図々しい面が目立つムードメーカーの摩利シンイチ、やや堅苦しい性格の不動アキト。彼らは司隊の隊員の中でも最も優秀であり、分析のプロであるというのだ。ナオトはそんな彼らを尊敬した。すると、3人は言う。
「分からない事があったら、何でも私たちに聞いてくださいね。」
「ああ!俺たちがついてる!俺たちは仲間だ!いつでも頼れよ!」
「俺たちはいつでも相談に乗る。」
「ありがとうございます!」
ナオトは、親切で個性的な司隊隊員と話し合った。そこでナオトは、巨大妖怪群に家族を殺された事等、辛かった事を話した。続けて、巨大妖怪群に打ち勝ち、神仏郷をはじめとした仏界の和を取り戻すにはどうすればいいかなどと相談する。すると、ユイ達はナオトに親切に相談に乗った。ナオトは、司隊の隊員に相談していくうちに、司隊に着々と馴染んでいくのであった。
承、敗北、カノンの諭し
ナオトが司隊本部に馴染んでいく最中、神仏郷に懐中時計のような姿をした巨大妖怪群ノロイドケイが出現した。司隊本部は、ノロイドケイを倒すべく、アミーダ初ノ型ブッダリアの出撃準備を急ぐ。ナオトはハクシから「ノロイドケイは、指した時刻により攻撃方法が変わる」という忠告を受けた後に、サヤの指示でブッダリアに乗り込む。
ゴウの掛け声とともに、ブッダリアは司隊本部から発射し、ノロイドケイの元へと飛んでいく。余裕の笑みを浮かべるナオト。
「よし。一撃で片付けてやるぞ。」
拳を構えるブッダリア。すると、ノロイドケイは時刻ごとに、様々な攻撃を繰り出してくる。ブッダリアは攻撃を交わし交わしし、ノロイドケイに攻め込もうとするも、なかなか攻撃の余地がない。すると、その次の瞬間だった。ノロイドケイの時刻が正午を指した。焦る司隊本部。
「まずい!ナオト!よけて!」
「えっ…?!」
ノロイドケイの体内に高エネルギー反応が起きていた。次の瞬間、ノロイドケイはかなり危険かつ強力な光線を放ってきた。
バアアアアーーーーーーーーッ!
ノロイドケイの「正午」は一番危険な攻撃なのだ。ブッダリアはその攻撃により、装甲を炙られていき、更には阿弥陀ノ座内のナオトは凄まじい熱線に晒された。
「うわああああああーーーーっ!」
ブッダリア内で絶叫するナオト。司隊本部は直ちに作戦を中止し、ブッダリアを強制回収、ナオトの応急処置を急いだ。そして、ハクシと隊員たちは大掛かりで、ブッダリアの大規模な修復作業を急ぐのであった。
ーーー寝室で横たわるナオト。自身の傷を眺めながら、「せっかく司隊に馴染んだのに」と悲観した。すると、そこへカノンが入ってくる。ナオトを心配しにやってきたのだ。
「仏くん。大丈夫?」
「…僕は駄目なんだ。仏界で価値がない存在なんだ。」
カノンは励ますも、ナオトは否定的な事を言う。「どんなに修行を重ねても、隊員に馴染んでも、自身には弱いという欠点があり、そのせいで敗北した」と。カノンはそんなナオトを説得するも、ひたすらに否定する。すると、カノンはナオトに泣くそぶりを見せた。そんなカノンを見つめ、思いとどまったナオト。
「そうか。僕は、頑張らなければいけないの?」
すると、カノンはナオトの胸に手を当てた。カノンは「仏くんの中には、今、数え切れないほどの不安と畏れが満ちている」と言う。そして、自身の霊力で「不安と畏れを取り除く」と言った。次の瞬間、部屋の周りに淡い緑色の光が浮かび上がる。ナオトは、次第に安静になっていく。自身の否定的な感情が取り除かれていき、本来の勇気を取り戻していくのであった。カノンは言う。
「もう大丈夫ね。私も一緒に行くわ。ノロイドケイを倒しましょう。」
カノンの手を握るナオト。カノンのアミーダとともに、ナオトは再びノロイドケイに立ち向かう覚悟を決めた。
転、ナオト、カノンとともに出撃
ーーー格納庫。ハクシが緑色の機体アミーダ弐ノ型カンゼノンの整備を進めていた。このカンゼノンを、本作戦より実戦運用を開始するというのだ。
「よし。今回よりこのアミーダ弐ノ型カンゼノンを実戦運用する。」
ーーーそして、隊長室。ナオトとカノンはゴウとサヤから、互いに協力し合いながら、ブッダリアとカンゼノンで力を合わせ、ノロイトケイを殲滅するように指令を出した。
「よし。これより任務を与える。今回より、ナオトとカノン。君たちが互いに協力し、ブッダリアと新機体カンゼノンで力を合わせ、ノロイドケイを殲滅するのだ。釈迦如来の孫と、観音菩薩の孫娘。君たち仏教の神の絆の力を見せてもらおう。」
「現在、カノン搭乗機体のカンゼノンはハクシが整備中よ。それに、ブッダリアはじきに修復作業が完了するわ。あなた達はスーツに着替え、待機していて。」
「はい。」
ーーーそして、ナオトとカノンはゴウとサヤの指示を仰ぎ、パイロットスーツに着替える。ナオトは、カノンの可愛らしいパイロットスーツに思わず見とれた。互いに二人で向き合い、意思を団結させた。
「仏くん。行きましょう。運命のリベンジマッチへ。」
「ああ。さっきの辛い感情も消えた。頑張ろう。仏界を守る、真の戦いを。」
「ええ。釈迦如来の孫と観音菩薩の孫娘の絆の力を。あの巨大妖怪群に、思い知らせてあげましょう。」
ギュッ
「釈迦如来の孫と観音菩薩の孫娘の絆の力」を発揮すると、互いに意思を団結させ、握手を交わすナオトとカノン。二人は、それぞれのアミーダに乗り込む準備をした。
ーーー司隊本部より、ナオトのブッダリア、カノンのカンゼノンが発射する。夜、幻想的に光り輝く神仏郷で、戦闘を展開するのであった。
「よし。行きましょう。仏くん。」
「ああ。」
「大丈夫よ。私が必ず守るから。」
シュパパパパッ!!
様々な時刻を指しながら、先制攻撃を仕掛けてくるノロイドケイ。ブッダリアは咄嗟に身構えするも、カンゼノンが懸命にそれを防ぎ掛かる。カンゼノンの屈強な装甲が、ノロイドケイの攻撃を跳ね返したのだ。そして、次の瞬間、ノロイドケイはブッダリアを大破させ、ナオトを窮地に追い込んだ即死光線を放ってくる。
バアアアアーーーーーーーーッ!シュパーーーーーーーッ!
又しても自機を盾にブッダリアを守るカンゼノン。屈強な装甲で、ノロイドケイの即死光線を跳ね返していく。次の瞬間、カンゼノンの機体全体が緑色の強力な光を発する。そして、ノロイドケイは自身に即死光線を受ける。よって、ノロイドケイの攻撃手段である長針と短針が折れる。攻撃手段を失ったノロイドケイにブッダリアとカンゼノンが攻め込んだ。
「よし!針が折れたわ!もう攻撃はできない!行くわよ!仏くん!」
「おうよ!」
攻撃の手段を失ったノロイドケイに攻め込むブッダリアとカンゼノン。2機は連携し、ノロイドケイを翻弄していく。ナオトにとって、ノロイドケイは最早敵ではなかったのだ。余裕の素振りを見せるナオト。そして、カノンのカンゼノンと連携しながら、逃げ惑うノロイドケイを追い討ちし、そのまま投げ飛ばした。そして、抵抗できなくなったノロイドケイに、ブッダリアとカンゼノンはとどめを刺すのであった。
「よし!行くわよ!」
「「ああ!合体霊力、清浄光!!!」」
バアアアアーーーーーーッ!!
ブッダリアとカンゼノンは2機、力を合わせると、青緑色の眩い光線を放つ合体霊力、「清浄光」を豪快に放った。よって、ノロイドケイは消滅し、司隊本部は歓声を上げるのであった。
「よし!やったあ!」
「やった!さすがはあの二人ね!」
機体内。二人は勝利に喜んだ。
「やったあ!勝った!」
「そうね!今日という日ほど嬉しい日はないわ!」
「ああ!勝利の握手だ!!」
勝利に喜ぶ二人。そして、ブッダリアとカンゼノンはぎゅっと握手を交わすのであった。握手を交わしたのちに、2機は司隊本部へと帰っていくのであった。
結、幻想的な夜の旅
ーーー司隊本部へ帰還したナオトたち。ナオトは自身の部屋でゆったりと寛いでいた。そこへ、カノンがやってくる。
「仏くん。お願い。」
「うん?月泉?」
「私、あなたの事を、もっと知りたいの。お願い。一緒にいいかな?」
どうやら、カノンは外でナオトともっと話がしたいという。ナオトは「疲れているから」と言うも、カノンは「一生のお願い」と言い、ナオトは仕方なくカノンの願いを聞き入れた。そして、カノンは赤い花柄に彩られた着物に着込んで、ナオトの前にやってきた。ナオトとカノンは、手を繋ぎ、司隊本部を出ていく。
ーーー夜の神仏郷。木々や花々は色とりどりに幻想的に光り輝き、辺りに光る蝶が舞っている。その道を歩いているナオトとカノン。すると、カノンは言う。
「仏くん。あなたにはいい所があるんだわ。敗北しても、意思を曲げない所が。思いやりの心を持つところが、あなたの釈迦如来の孫とていい所だもの。」
「そう。僕も。君の優しさに触れる事が出来た。僕の事をもっと知りたい。君の気持ちを受け入れるよ。」
「何より、神は優しさが第一だものね。あなたの優しさも、いいわ。」
互いの優しさについてを話し合うナオトとカノン。カノンはナオトのくじけない心、ナオトはカノンの優しい心についてを互いに尊重し合った。幻想的に光り輝く神仏郷を進んでいく二人。そして、二人は浮遊の力で、ふわりと宙へ舞うのだった。
空には、美しい色とりどりの光が輝いている。その光の道を歩んでいくナオトとカノン。光を手に取ったりしながら、その場を楽しんだ。ひたすら光の道を歩んでいく二人。そして、虹色の美しい月までたどり着くと、互いに目と目を合わせた。
「仏くん。私の一生の願いを聞いてくれてありがとう。」
「ああ。君も。あの時僕を助けてくれて、ありがとう。礼を言うよ。」
互いに互いの礼を言うナオトとカノン。そして二人は顔に手を当て、幻想的に光り輝く月を前に、口付けを交わすのであった。これが、「釈迦如来の孫と観音菩薩の孫娘の絆」なのであった。二人は、その想いを心に刻んだ。
ーーーつづく