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第三十五話 生き餌

 エタが生き物の気配が少なくなった森を案内するとそこには大白蟻が綱などで拘束されていた。

「なんだよ、こいつ」

「捕えてもらった大白蟻です」

「見ればわかるわよ。こいつをどうするつもり?」

「こいつを使って蟻の巣を見つけます。蟻は一匹の女王蟻から産まれるそうです。そして蟻には何かあった時自分の巣に戻る習性があるみたいです。それを追跡します」

「蟻の巣はこの森にいくらでもあるはずだ。そこが本命の巣であるかなんでわかんだ?」

「実はこの大白蟻は大黒蟻が出ない場所で捕獲されました」

「そんな場所あんのかよ」

「あるわよ。灰の巨人はずっと前からそれを知ってた。それでも普段はものすごい数の大白蟻が守ってるからわざわざ踏み込まないけどね。それに何の意味があるのかもわかってなかったわ」

「僕はこれを迷宮の核の意志だと推測します。核を守る大白蟻を大黒蟻が襲わない工夫でしょう」

「核は大黒蟻の女王が守ってるんじゃないのかよ?」

 単純な強さだけで考えれば大黒蟻が核を守っている可能性はある。しかし核は掟に従っているはず。強さや合理性だけで活動しているわけではないはずだ。

「多分その可能性は低いはずです。この迷宮の掟はわかりませんが、おそらく食物連鎖に従って成り立っていると考えられます。つまり迷宮の核は植物を成長させてから、大白蟻、大黒蟻の順で創造したはずです。大黒蟻と大白蟻の女王を同居させるわけにはいきませんので、大白蟻の女王のもとに核があるはずです」

「もしなかったらどうすんだ」

「大黒蟻を捕えて同じことをするしかありませんね。それでも見つからなければ僕が何とかします」

「理屈はわかったけどよう。ついていけんのか? 蟻は森の中じゃかなり早く歩けるぞ」

 それに答えるようにエタは蟻の腕に巻き付けてある一本のベルトを外した。

「このベルトは僕の掟です。いなくなった家畜の行方を知る掟です」

 修練用の迷宮を踏破した時に授かった掟だ。当然二十日もたっていないのだが、もう数年は前のように思えた。

「いや、蟻は家畜じゃねえだろ」

「どうもベルトを巻いた相手に何度か食べ物をあげると家畜として認識されるようですね。多分、人間相手でもできるはずですよ」

 相も変わらず物騒なことをさらりと言ってのけるエタに三人は内心で驚いていたが、エタ自身は気づいた様子もない。

「大白蟻は巣に戻るはずです。そこに大白蟻の女王、ひいては迷宮の核があるはずです」

 蟻は女王蟻を頂点とする集団であり、女王蟻のみが産卵しているらしい。これもミミエルから教えてもらったことだ。そのミミエルが覚悟を決めた顔になった。

「いいわ。早くやりましょう。さすがにハマームも怪しんでいたから、今日中にけりをつけないとまずいわよ」

 全員で素早く大白蟻の拘束をほどくと、蟻は一目散に逃げだした。


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