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第三十話 優しさにあふれていて

「そうしてあたしは母と二人で暮らしてた。でも、転機があったの。ある冒険者から母を第二婦人として迎えたいって言われたの」

「第二婦人を迎えることが許可されたってことは相当すごい冒険者だったんだね」

 ウルクは原則として一夫一妻だが、前述のように理由があって聖娼を第二婦人として迎えたり、王族や偉業をなした人物は多数の妻や夫を迎え入れることがある。

「最高の階級は二級だそうよ。出会ったころには引退して商業を営んでいたけどね」

 冒険者は一から十までの階級に分けられている。最高位の一級はウルクでもほとんどいない。二級でもごくわずかだったはずだ。

「それは、やっぱりイシュタル神殿の口利きもあったのかな」

「多分そうでしょうね。そうでなければ唐突すぎるもの。その冒険者に息子がいなかったことも関係しているんでしょうね」

 様々な好意の結果としてミミエルと彼女の母は新たな家族を得た。しかしもともとの家族からしてみれば突然入り込んできた異物なのではないだろうか。そんな心配が顔に出ていたのだろうか。ミミエルの言葉は家族仲を説明するものだったが、予想とは違った。

「その冒険者の夫人も、その娘もとてもよくしてくれた。特に娘とはいつも一緒にいたわ。うん、あたしの一番の友達。一緒にイシュタル神殿に奉公したりもしたわね」

「つまり君は半分くらいお嬢様ってこと?」

「そうなるわね。意外だった?」

「いや……むしろ納得した」

 普段の態度はともかく今こうして話しているミミエルは確かに育ちの良さを感じさせる。

 しかしその反応はミミエルにとって不本意だったらしい。

「なんでよ。あたしそんな風に見える?」

「見えるっていうか……君、結構無理してそんな格好してない?」

「なあ!?」

 図星だったらしい。そしてばれるとも思っていなかったらしい。ミミエルは口をパクパクさせていた。

 ミミエルの服装はかなり扇情的で、態度も高圧的だ。一方で人に尽くすというか、情が深い面もある。どこかで無理をしていると考えるのは自然だろう。

「なんでそんなことしてるの?」

「あの子が……あたしが引き取られた家にいた女の子がね? 流行りのイシュタル信徒はこうだって言ってたまにくれるのよ」

 いくら何でも従順すぎるのでは? そんなことを思ったが、家を出た後も連絡を取り合っているあたり仲は良好なのだろう。

「まあでも、引き取られた家でもいい人ばかりで良かったよ」

 エタの何気ない一言に、今まで色彩鮮やかだったミミエルの表情は凍り付いた。

「ミミエル?」

「そうね。いい人ばっかりだった。一人を除けば」

 エタは、話の核心に近づいている気配を感じ取っていた。


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