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エイプリルフール

作者: あをき

 ヨーロッパのとある国の王室。二百年前。

 王様の右腕である一人の大臣が泣きながら言う。

「本当に申し訳ありませんでした…。全責任は私にあります。どんな罰でも受けるつもりであります。」

 謝罪の先にはパレードを終えたばかりの「裸の王様」がいた。

 王様にとんでもない恥をかかせてしまったと、大臣はほぞを噛む思いで自らの愚行を振り返る。


 一週間前、王様の前に二人の商人が現れた。

 彼らは自らを「国一番の布織り職人」と名乗り、無類の洋服好きな王様のために特別な洋服を作らせてほしいと言った。

 その特別な服というのは、彼らいわく「バカな人には透明で見えない服」だという。

 今思えば、なぜそんなありえないことを信じてしまったんだろう。

 ただ、私はそんな服があれば見てみたいという好奇心と、私はバカではないからきっと見ることができるだろうという自信があった。


 パレード当日、二人の商人は完成品を王室に持ってきた。

 結論、私には見えなかった。それもそのはず、そんな服なんてそもそもなかったのだから。

 でも、その時の私は認めたくなかった。

 そして「見えない」と言って恥をかきたくなかった。

 その結果、ありもしない服の特徴やデザインを、商人の言葉通りに王様に説明してしまった。

 半信半疑な王様をその気にさせ、パンツ一丁のままパレードに出席させてしまった。

 私のくだらないプライドを守るためについた嘘で、王様にとんでもない恥をかかせてしまったのだ。


 あの時、「見えない」と正直に言っていれば…。

 そう、後悔していると、目の前の王様がニコリと笑った。

「顔を上げなさい。お主もワシもバカだったってことじゃ。これからは二人とも正直に生きようぞ。」

 王様はもっさりたくわえた自慢の髭を撫でながら続ける。

「それに、けらいや国民の嘘を許すのが王様の役目じゃろう。そうじゃ、いっそのこと今日だけは嘘をついてもいい日ってことにしてしまおうか?」

 そんな王様の優しさから生まれた「エイプリルフール」は、現在では世界中に広がり、今日も平和な嘘が各地で飛び交っている。


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