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初恋  作者: ふしきの
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未来の世界

「名前は斎藤利政、多部高三年生。七年に一度の御開帳のある近所の豊穣祭にて友人と待ち合わせ中に行方不明、同日、家族より捜索願いが届けられる、と」


「トシ」

 友達らしいグループで呼ばれていた。

 けれども、なぜだろうか自分の名前すら聞き覚えの無いような遠い感覚になっていた。アツシに「親御さんに連絡を取ったので君は帰っていいよ」と言われてもロビーの長椅子に深夜迎えが来るまで待っていた。

 迎えは次の日、警察がれんらくをいれても来なかった。

 老夫婦は口を揃えて「警察の詐欺」と言いはなって取り合おうとしなかったせいだ。


 アツシの車でトシの家の住所に車で向かった。

 そして、車を止めて二度後ろ姿を見つめた後、発車しようとしたら助手席を叩かれた。

「無理みたい」

「はい? 」

「ま、あれじゃ無理だわ」

 沈黙後「どこにいきましょうか? 」と、訪ねたのでひとつふたつ住所の近くまでナビで車を走らせてみた。同じように外に出て玄関のチャイムをならして少し話したら即、走って車に戻ってきた。

「無理だわな」


「うち、来ますか。僕ももうへとへとですし」

 その言葉に「いいの? いいの? 」と、輝くような目で言われても、最後まで車の中で会話を両者しなかった。




「レンタルの紋付きはハンガーでいい? お父さん、和装のハンガーどこにしまったっけ」

「風呂沸いているぞ、体温めてこい」

 アツシが和装で帰ってきて見知らぬけれども、見たような顔の高校生が夏の格好でいるのを、苦の顔もせず家の中に入れ玄関の鍵をロックした。徘徊のようにご近所が出てきているのでカーテンを閉じて照明を全部屋付けて、見もしないテレビのコンセントを挿す始末。チャンネルがわからないのでテンションの高い子ども番組がずっと映っていた。


 風呂から上がって新調された下着やパジャマがあてがわれ居たたまれないような顔をして、

「お電話お借りしてもいいでしょうか」

 と、言ってきたので子機と電話帳を渡して「ここの部屋はエアコンが入っているので暖かい」と父親が促した。

 明るい声で「俺俺」とか言っていたが「あ、そっか、そうだな、全然」と、どんどんくぐもっていき、泣きそうな裏声が出たと思ったら「どうもありがとう」と部屋から出てきた。母親が受け取った子機は濡れてしっとりとしていた。


「煙草ある」

「ないよ」

「買ってくる」

「証明書提示がないと買えないよ」見た目が、未成年という言葉をアツシはぐっとこらえた。

「煙草屋でもか」

「煙草屋なんかほとんどが潰れた」

「マジか」

「本当だよ」

「飯食って腹一杯になって温い布団で寝たら、朝起きたら夢だったなんてな」

「だといいね、お互い」



 次の日も普通に来たし、アツシには婚約解消の大きな進物の荷物も来た。

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