故郷、舞い戻りて天女との出逢いを思い出す
この作品は仙道アリマサ様主催企画「仙道企画その3」です。
その参加作品の一つです。
故郷の浜辺の松林
懐かしみ感慨に耽る
この大地と海に見守られ
私は生きてきた
今、久々に戻りて
物思いに囚われる
それは、遠い過去
私がまだ随分と若かった
青年時代のこと
この浜辺で私は
天女に出会った
春の中頃
風吹く浜辺の松林にて
海を眺めていた私
穏やかな波が唄っていた
爽やかな風にふと呼ばれて
海を眺めていた私は顔を上げた
太鼓と笛の音が天から聞こえてきた
光が眩しく目に射し込んだ
瞑った眼を開くと
目の前には
数人の女性が宙で舞っていた
天女だった
在るはずの無い
海辺の舞台にうえで
楽人たちが楽器を奏でる中
天女たちは舞を舞っていた
一人の天女がこちらを見て
手を招いた
涼し気な目元の年端もいかないような
その数人の天女の中で最も若い少女だった
一目で心奪われた
海辺の舞台の上で
私たちは一緒に舞いを踊る
楽しい一時は
あっという間だった
気付くと
私は松林の木に寄りかかって
うたた寝をしていた様だった
手には確かに
あの天女の少女の手のひらの感触
私の思い出となった……
何十年経った今でも
鮮明に覚えている
あの手のひらの感触……
海辺の松林には
故郷に戻った今でも
穏やかな風が吹いていた
お読み下さり、本当にありがとうございます。