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番外編 家臣とメイドの過去 合流

「コキク」

「はい、盟主様」

「貴方の働きぶりには大変感銘を受けました、よく頑張りましたね」

「ありがたきお言葉……」

「よって、貴方を私の家臣に任命します」

「ありがとうございます、盟主様」


 数年の月日が経った。

 あれから私は色んな事をマスターした。

 お茶の淹れ方、庭の手入れ、城の外の人々との交流、他の使用人を統率するスキル……。

 私に勝る使用人はいないということを、証明するものが今、できた。


「何か欲しい物はありますか?」

「……え?」

「せっかく家臣に昇格したのです、ご褒美をあげましょう、何でも言いなさい」

「な、何でも……」


 何でも。

 アブラムも言った言葉だ。

 今の私に欲しい物……それは……。


「でしたら……」

「……本当にそれでいいのですか?」

「……はい!」


 私は望みのものを口にした。



「……悔しい」


 家臣の席を、まさかあいつに奪われるとは……。

 あんな腑抜けた女を任命するなんて、盟主様は何を考えていらっしゃるのだ?

……だが、最近の奴の活躍は耳にしている。

 妥当ともいえるか……納得できないが。


「しかし……これで奴とも別部屋か」


 家臣に任命された以上、奴とは必然的に部屋が別になる。

 当たり前だ、この時点で身分差ができてしまった。

 だがこれでせいせいする、あんな女狐と顔を合わせずに……。


「……」


 何故だろう、凄く……胸の奥に穴が開いたような感覚がする。

 ええい! きっと違う生活になるから不安なだけだ! 不安な……。


「アブラム!」

「……」


 あいつが帰還してきた。

 恐らく、オレの事を笑いに来たんだろう……適当に労いの言葉を掛けておいてやるか。


「……おめでとう、オレの負けだ、笑いたけりゃ笑うがいい」

「負け? 何を言ってるんだ?」

「……は?」


 なんだこいつ……オレを嘲笑うために来たわけじゃないのか?


「実はな伝えなきゃいけないことがある」

「おう……」


 伝えなきゃいけないこと? なんだ?


「……またお前と相部屋になることになった!」

「……は?」


 ……ん? どういうことだ?


「それもこんな狭苦しい部屋じゃない! もっと豪勢な部屋だ! 2人で使おう!」

「おい……どういう風の吹き回しだ?」

「いやいや、あんな広い部屋、一人じゃ使えないからな……どうせなら、アブラムにも使って欲しくて……」

「……」


 オレはなぜか腹が立って……奴の服を掴んだ。


「お前……ふざけているのか?」

「ふざけてないが?」

「あんまり変なこと言ってると……殺すぞ?」

「おいおい、物騒なこと言うんじゃないよ……愛しのコウモリちゃん?」

「は?」


 何言っているんだ? い、愛しの……コウモリ?


「お前……馬鹿にしているのか!」

「馬鹿になんかしてないさ……私はお前の事、愛しているからな」

「……は?」


 こいつ……調子に乗っているのか?


「さぁ早く荷物をまとめろ! これは家臣命令だ!」

「ちょっと待て! 盟主様の許可は……」

「取ってある、即ち拒否すれば盟主様に逆らったことになるぞ? いいのかな?」

「……」


 クソ……この女……。


「……わかった、だが勘違いするな、これは盟主様のご命令だから従うだけだからな」

「はいはい、それじゃあ、荷物は私が持つから、先に部屋に行っていてくれたまえよ」

「家臣に持たせる使用人がいるか! この間抜け!」

「家臣に間抜け呼ばわりとは失礼だね……まぁ、私は君を愛しているから許してやろう、愛しのコウモリちゃん」

「お前……本当に殺すぞ」

「ははは! いいねぇ、そういう顔! まぁ、確かに君の言い分ももっともだ! 先に行っているよ! じゃあねー!」

「……」


 全く……あの女……嫌いだ!

 ……荷物をまとめよう、仮にも家臣の命令だ。


「……全く」


 口角が上がったような気がしたが、きっと気のせいだろう。

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