第七話
「さ、着いたよ! 目開けて!」
「は、はい……」
目を開け、そこに広がっている光景を見て、私はつい唖然としてしまった。
私は高い建物に立っていて、『里』と呼ばれる場所の風景が一望できたのだ。
大木をそのまま切り抜いてできた建物が立ち並び、先ほどのお姫様と部下の方と同じように空を飛んで行き来する人がたくさんいた。
地上に目をやると、人魂のように浮かぶランタンが街を照らし、屋台が林立し、人々が談笑をしながら、あるいは食べ歩きながら通りを歩き、和気あいあいとしていた。
「美しい……」
あまりに素晴らしい光景に、私はそう呟いてしまった。
こんな光景は、王都でも経験したことが無かった。
「凄いでしょ? 私も好きなんだ、この街」
お姫様が私を抱きながらそう言った。
降り立った場所は、屋根の造形などから、お城の屋上であると推測した。
やはりお姫様なだけあって、立派なお屋敷に住んでいらっしゃる……。
「姫様、客が来たことを『盟主様』に伝えてまいります」
「うん、ありがとう」
部下の方は中へ繋がっているであろう扉を開け、その『盟主様』と呼ばれる方に私が来たことを伝えに行くそうだ……。
え? この方が吸血鬼の中心人物じゃないんですか?
「さ、私たちも中に入ろうか」
お姫様はそう言うと、私の体から離れ……お互いの手を繋ぎ合わせるように私の手を握った。
この感触は感じたことがあった……そう、あの人と同じ……。
「どうしたの? なんか表情暗くなったけど」
「あ、いえ! 何でもありませんわ!」
「そう? それならいいけど……とりあえず部屋まで案内するから」
お姫様はそう言って、私を中へ連れて行った。
引っ張られる感触はなく、お姫様は私と歩幅を合わせるように歩いてくれた。
気を使わせてしまったかしら? 私は申し訳ない気持ちになってしまった。