エピローグ
「リブラ」
「なんですか? お父様」
「……たまには、家に帰ってくるんだぞ」
「もう何度も聞きましたよ」
「そ、そうかい? すまん……」
私は今、部屋の入り口の前で待機している。
黒いドレスに身を包み、この後、お父様にエスコートされる
「こんな時に申し訳ないが……お前の元婚約者だが……」
「……えぇ」
今朝、既にお母様から聞いていた。
アトラス様は、ブラキウム公爵家のご令嬢に殺害されたらしい。
……一応は元婚約相手、15年共にした人だ、ショックは大きかった。
カグラ様は「延期したほうが良いんじゃない?」と仰っていましたが、長老の皆さんが「今やってほしい」と盛んに仰り、盟主様もそれに賛同した。
「あの人の為にも、今日は盛大にやりますわ」
「……そうか、逞しくなったな、リブラ」
「……」
アトラス様、私は貴方の分も、幸せになって見せます。
私を裏切った貴方ですが……私は貴方を恨んだりはしません。
貴方のように言うならば……用済みです。
だから……。
「……さようなら」
私がそう呟くと、式場の扉が開き、私たちは中へ入場した。
奥まで歩くと、白いドレスを着たカグラ様が待っていた。
お父様が私を奥まで誘導すると、お父様が自らの席に着いた。
カグラ様は、私を見て笑っている。
「とても綺麗だよ、リブラ」
「カグラ様も……とても素敵です」
「……ありがと」
お互いに誓いの言葉を述べ、最後の口づけをする。
「ん」
「んん……」
ここに、人間と吸血鬼の夫婦……といっても夫はいませんが、パートナーが成立した。
口づけをする私たちの後ろでは、大衆が私たちに祝福の拍手を送っていた。
私は、カグラ様に尽くします……その命が燃え尽きるまで。
カグラ様……。
「愛してます」
「私も……愛してるよ」
ここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
本編はこれで終了ですが、番外編も執筆予定でございます。
また、別作品「無能な鍵使いの現代無双」も併せて読んで頂けると、とても嬉しいです(百合でも恋愛でもないローファンタジーですが……)
色々と拙いところもございましたが、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




