第六十三話
「それで……森の木の伐採の話ですが……」
「うん……」
積もる話を終えたところで、私は真剣な話を切り出した。
「一体どうすればいいんだろう……ママや長老も考えてはいるんだけど……」
「うーん……吸血鬼の皆様を救うためにはどうすれば……」
このまま伐採が始まると、この里の存在が知れ渡り、危険にさらされてしまう。
吸血鬼の皆様は大変な事に……ん?
「そういえば……アトラス様は吸血鬼の皆様の事、存じてませんよね?」
「アトラスってこの森を侵攻しようとしてる人だよね? ……そりゃ、知らないんじゃない?」
「なら……」
私はパッと考えたことをカグラ様に伝えた。
するとカグラ様は、驚いた表情で私を見た。
「リブラ! あなた正気!?」
「……正気ですよ?」
「ダメだよ! 私は反対! あなたを危険な目にさらしちゃうし、それに……」
「……私は大丈夫です、それに、もはやこうするしか方法が無いように考えます」
「でも……」
「カグラ様……」
私は心の奥で考えている事を、まっすぐカグラ様に伝えた。
「……私は、カグラ様に一生を捧げたいと存じます」
「……」
「私は、カグラ様に尽くしたいのです、そして……里の事をもっと知りたいです、そのためにも……この方法が一番良いと考えます」
「……本当にいいの?」
「……はい」
「……わかった」
カグラ様は立ち上がり、扉に向かって歩き出した。
「……ママにこの事を伝えてくる」
私は立ち上がり、カグラ様の手を掴んだ。
「わ、私も行きます! ……盟主様に、伝えなきゃいけないこともありますし……」
「……そうだね、行こうか! 一緒に!」
「はい!」
カグラ様は私の手を掴んだ。
私たちは部屋の外に出て、「作戦」を伝えるために盟主様の元へと向かった。
◇
「はぁはぁ……」
アトラスは王城に到着するや否や、体を清め、自分の部屋に急行した。
「あんな女……付き合うんじゃなかった……」
アトラスは、ハイドラと婚約したことを後悔した。
「ったく……これなら、リブラとの婚約を解消するんじゃなかった……」
アトラスは、長年付き合っていた女を都合よく思い出した。
その女を考えたアトラスは……笑い出した。
「そうだ……あの森はリブラのいる領地……あそこを解放すれば……再びリブラは俺に振り向いてくれるはずだ……ふふふ……あはははははは!」
アトラスは、公爵家令嬢に殺されかけたことで、混乱しているようだった。
「待っていろ! リブラ! お前の男はただ一人! 俺だ! あははははははは!!」
アトラスは、高らかに笑い、明日の計画を完璧なものにすると誓ったのだった。




