閑話 考案
「オヒュカス、今戻った」
「おかえりなさい、あなた」
コーヴァス家の書斎、オヒュカスは策を考えるため、お茶を飲みながら頭を抱えていた。
「本当に……困ったなぁ」
「……えぇ」
ベガは何とかして里を守ろうと考えてはいるものの、打つ手がなかった。
明日の昼にはアトラスが来る。
今日はもう既に日が暮れようとしている、明日、陽が昇ればその時だ。
「……そういえば、私がいない間に、客が来たそうだな」
「……」
オヒュカスは、アブラムの事を思い出し、顔が赤くなってしまった。
「オヒュカス? どうかしたのか?」
ベガはいつもと違う妻に困惑した。
「……貴方がいない間に、里の方が一人来ましたわ」
「えぇ!? 使用人には見られてないだろうね?」
「……一応、それらしい理由を付けて使用人は待機させましたが……」
「……そうか」
ベガは書斎の椅子に腰を掛け、ぐったりとした。
「……それで、貴方」
「なんだい?」
「……リブラがその里の方に招かれて、再び里に行きましたわ」
「なんだって!?」
「安心してください、盟主様の関係者の方です」
「あぁ……ならよかった……」
「別に里の皆様は全員人間を襲わないでしょう! 疑っているのですか!?」
「いや、そういうわけじゃないんだよ……」
ベガは、今日の里での出来事もあり、若干恐怖心があった。
吸血鬼が人間に敵意がないのは分かってはいるものの、里で首を絞められ、脅しを掛けられたため、そういう感情になったのだ。
「リブラも、里を守ろうと考えてくれているんですよ、里に行ったのもそれが理由です」
「……あぁ、そうなのか……」
ベガは冷静になり、アトラスの対策を考え始めた。
必死に考えて、編み出した策は……。
「いっそのこと、領民を煽って無理矢理追い返すってのは……」
「ダメに決まっているでしょう! 反乱だと思われて下手をすれば全員粛清されますよ!」
「……だよね」
どうしようもないものだった。




