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閑話 突き放した者 4

「ど、どういうことですか! アトラス様」

「言葉通りの意味だが?」


 ハイドラ・ブラキウムは、アトラスの言ったことに驚愕した。

 アトラスは、話があると言って、ブラキウム公爵家のハイドラの部屋に訪れたのだった。

一応、密会ということなので、部屋には二人しかいない。


「そんな……今になって婚約が無かったことにするとは……一体どういうことですか!」

「いいか? 俺が君と婚約したのは、君が公爵家の人間だったからだ、伯爵家のあの女は俺のタイプだったが、君と結婚した方がお父様にいい顔ができるからね」

「……酷いですわ」


 ハイドラはその場で泣き崩れた。


「迷宮の森が消えれば、きっとお父様も喜んでくださる、言わば、君は用済みだ」

「……」

「なぁに、君意外に女はたくさんいる、ほら、慰謝料だ」


 アトラスは金の入った袋をハイドラの前に投げつけた。

ハイドラは拳を握りしめ……笑い出した。


「あは、あははははは、あはははははははははは!」

「……なんだ?」


 アトラスはハイドラの奇怪な姿に、少しばかり恐怖を覚えた。


「アトラス様……私は貴方を愛していますわ……」

「……」


 アトラスは距離を取り始め、後ろ向きのまま、扉のノブに手を掛けた。


「アトラス様は……私の事、愛していますよね?」

「……」

「私はアトラス様の事が大好きですよ……ずっとずっとずっとずっとずっとずっと……」

「……」


 アトラスはノブを回し、外に出ようとした。

……が、扉が開かなかった。

 アトラスは密会の為に自分で鍵を掛けたことを忘れていたのだった。

アトラスはそれに気づかず、ノブを回し続けた。


「アトラス様……何をしているのですか?」

「あ、いや……少し……」

「……少し?」


 ハイドラはまっすぐアトラスを見つめている。

アトラスは目線を合わせず、ノブを回し続けた。


「アトラス様は……私の事……嫌いなのですか……?」

「……」


 アトラスは鍵を掛けていたことを思い出し、鍵を開け、逃げる準備をした。

……が。


「逃げるのですか……? 私はアトラス様の事……愛していますのに……?」

「あ、いや……」

「……逃がしませんわよ、アトラス様」

「ひ、ひぃ……」


 アトラスは恐怖のあまり、その場に膝を落とした。


「アトラス様……」

「な、なんだ!?」


 ハイドラはスカートの裾から刃物を取り出し、アトラスに向けた。

アトラスは震えが止まらず、その場で失禁した。


「アトラス様……好き、好き、好き、好き……」


 ハイドラは刃先を舐め、アトラスに襲い掛かろうとした。

 アトラスは咄嗟に避け、部屋を出た。

 アトラスはすぐに馬に乗り、屋敷を後にした。


「逃がしませんわよ……アトラス様……」

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