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第六十一話


「いい? リブラ、落ち着いて聞いて頂戴」

「……はい」

「……実は昨日、王城から手紙が来たのです」

「……手紙?」


 昨日、お父様とお母様が食事にいなかった理由……ですね。


「貴方の元婚約相手からでした」

「アトラス様から……?」

「えぇ……その内容は……」


 お母様は言葉がつっかえたのか、今一度お茶を飲んだ。


「おい、オヒュカス、母親らしくちゃんと言え」

「ごめんなさい……私、あの手紙はショックで……」

「……その内容は?」

「リブラ……」

「……もういい、オレが代わりに言ってやる」


 アブラム様はまっすぐ私を見て、こう言った。


「明日、人間の一部が迷宮の森に侵攻する……らしい」

「……え?」

「その人間の一部は……貴方の元婚約相手です」


 まさか……アトラス様が……?


「そんな……そんなことしたら里は……」

「……十中八九、発見されて……」

「滅びるでしょうね、未知の種族を見て恐怖に駆られた一部の人間によって……」

「……」


 そんな……。

 そんなことをしたら、あの美しい街も、景色も、人々も。

 そして何より……カグラ様も……。

 そんなこと……そんなこと……。


「絶対に許せません!」

「り、リブラ?」

「お、お前……」


 私は思わず立ち上がった。


「アブラム様! 何か考えはあるのですか!?」

「いや……今、里でも長老と盟主様、そして姫様も模索しているところだ……」

「……ベガも一生懸命どうするか考えていますよ」

「……」


 お父様も盟主様も真剣に考えていらっしゃる……。

それに対して私は……。


「アブラム様!」

「な、なんだ!?」

「私を里に連れて行くんですよね!?」

「あ、あぁ……確かにそう言ったが……」

「ならば早く連れて行ってください!」

「お……おう!」


 アブラム様は動揺されているようでしたが、言い出しっぺは貴方ですからね!


「私は屋敷でレオと待機しています」

「お母様は来ないのですか……?」

「私は……また今度行きます」

「その今度が来ないのかもしれないのですよ!?」

「……」


 お母様は黙ってしまった。


「……悪いが連れて行けるのは一人だ。さすがに人間の女を二人も運ぶのはオレでも難しい」

「そ、そうですか……」


 な、ならば仕方がないですね……。


「お、お母様……申し訳ございません……」

「……いいのですよ」

「さ、決めたからには行くぞ」

「……はい」


 私はアブラム様に引っ張られ、コテージから出た。

その前にお母様が立ち、屋敷の屋上まで誘導してくれた。


 屋上に着くと、私はアブラム様に抱えられた。

アブラム様は羽を広げ、飛び立つ準備をした。


「お母様、行ってきます」

「えぇ、気を付けて……それから、アブラム」

「なんだ?」

「……久々に会えて嬉しかったよ」

「……あぁ」


 そういうとアブラム様は羽をはばたかせ……飛び始めた。


「ちょ、ちょっと待ってください! 真っ昼間に空飛んだら領民の皆さんに見られませんか!?」

「今はそんなこと構ってられるか!」

「えぇ!?」


 私はアブラム様に抱えられた状態で……里へと飛んでいった



「着いたぞ」

「……」


 目を開けると、数日前に見た里の風景が、私の目に飛び込んできた。

昼の風景は恐らく初めて見る。

朝や夜と違い、陽の光が木陰越しに里を照らしている。

朝の時も人は少なかったが、昼は全くと言っていいほどいない。

やはり皆さん寝ていらっしゃるのでしょうか?


「見とれてないで、早く行くぞ! 姫様の様子がおかしいからお前を連れてきたことを忘れるな」

「は、はい!」


 そうでした!

 ……カグラ様に会える、それだけなのに何故これほどまでに嬉しいのでしょうか。

ですが、それを潰そうとあの人は森の木を伐採しようとしている……。

 何としてでも止めてみせます! 私はコーヴァス家令嬢のリブラ! 絶対にこの美しい里を救ってみせますよ!


 私はアブラム様に連れられ、城の中へと入っていった。

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