第六話
「それじゃ、里まで案内するから」
「え、ちょっと……」
少女はまたも、私の後ろに回り、抱き着いた。
「さ、しっかり掴まってね!」
「え、一体何を……」
この少女の部下と思われる方に目をやると、背中から鳥とは違う翼が生えていた。
と、いうことは私……
「空を飛ぶんですか!?」
「当たり前じゃん」
少女はそれ以外方法がないと言いたげな顔をして言った。
「さ、行くよ!」
「うわぁぁぁ!?」
私の足が大地を離れ、木の枝を搔い潜って、気が付くと空高く飛び上がっていた。
……空から見た森は圧巻だった。
広さは王都の面積とさほど変わりはなく、平地は遥か遠い場所にあった。
木々は高さが疎らで、月明かりがそれを照らし、まるで黒い海のような光景だった。
私は今、里というところへ向かっているらしい……今のところ、木しか見えないんですけど。
「さ、降下するよ! 怖かったら目瞑ってもいいから!」
「降下!? ちょ、ちょっと……きゃぁ!?」
どんどん高度が下がっていき、お姫様(?)は黒い海の中へ突っ込もうとしていた。
「こ、殺す気ですかぁぁぁ!?」
「大丈夫! すぐ着くから!」
「きゃあああああ!」
馬とは比べ物にならないくらいの速さだった。
私は目を瞑り、私は1秒でも早く地上についてくれることを祈った。
枝に当たって怪我をすることも考えたが、お姫様が私を抱えてくれたおかげで枝には当たらなかったようだった。
そして、感じていた風が止み、どこか賑やかな人々の声が聞こえてきた。