第五十一話
「レオ! 待ってください!」
レオは私の声を聴いて振り向いた。
私は唾を飲み込んで、里であったことを話した。
「あの……質問の答えですが! 彼らにとって私たちは……恐らく、無関心です!」
「……無関心?」
レオは唖然としていた。
「えぇ! 皆私たちの事は気にせず、家族や恋人と優雅に暮らしていて、私たちと同じように食べ物を食べたり、働いたり、喜び合ったり……」
「……」
レオは淡々と私の言葉を聞いていた。
「確かに、私たちの事を嫌っている人もいましたが……でも! だからといって私たちを殺したいとか、そんな考えは無いです! えぇ!」
私は胸を張って、ありのままのことを話した。
全て事実だ、男児の生誕を祝う祭りでは、家族や恋人と過ごして、屋台には食べ物がたくさん……城の人や屋台の人は一生懸命働いていて、皆幸せそうな笑顔を見せていた。
「……なるほど」
レオは笑顔を見せた。
「姉さんがそこまで熱く語るということは、きっと素晴らしいところなんでしょうね」
「え、えぇ! それはもちろん!」
私はつい、熱く語ってしまったようだ。
少し恥ずかしくなってしまった。
「里の方に良くしていただいたのですか?」
「それはもう! 皆さんとてもいい人でしたよ!」
「……そうですか」
レオは先ほどまでいた席に戻った。
「姉さんがそこまで言うなら……わかりました、僕も彼らの事を信用することにします」
「……そうですか」
私も元居た席に戻った。
「すみません、一旦この話はやめて、普段の話をしましょう」
「え、えぇ……そうですね!」
私たちはお茶を飲み、最近あったことを話し始めた。
「そういえば僕、そろそろ婚約者を探さないといけないのですが……女心が……分からなくて……」
「女心……ですか……」
◇
「あぁ! 忌々しい! また迂回をしなければいけないのか!」
アトラスは馬を走らせていた。
アントリア子爵家で「用事」を済ませ、迷宮の森を迂回し、王都へと戻っている途中なのだ。
「あの森……アレを全て木材や木炭にすれば……」
アトラスは迂回ついでに、森について調査しようと、近づいた。
馬を途中で降り、至近距離の位置まで来た。
アトラスは木に触れようと近づいた……その時。
森の奥から猛獣のような唸り声が聞こえたのだ。
それを聞いたアトラスは……。
「ひ、ひぃぃぃ!?」
……馬に再び乗り、その場を後にした。
「だ、だが! あの森が消えればあの声も消える筈……戻ったら態勢を整えよう……」
アトラスは王城へと再び出発した。




