第四十五話
「へぇ~そういうところが好きなんだ」
「は、はい……もういいですか?」
「まだあるでしょ?」
「も、もうないですよ~」
もう昼だろうか? ……いいや、まだそこまで時間は経っていないか。
私はカグラ様の好きなところを言った、それも数えきれないほど。
カグラ様が抱き着いているのもあるかもしれないが、部屋の中がとても暑く感じる。
「カグラ様……」
「なに? 私の好きなところ言ってくれるの?」
「そうじゃなくて……暑いですわ……」
「あ、そうだよね、ごめん……」
「でも……離れないでください……」
「え? わかった……」
暑いが、悪い感覚じゃなかった。
カグラ様との最後の思い出にしては、印象に残るだろう。
「カグラ様の……そういうところ……好きです……」
「どういうところ?」
「……優しく包み込んでくれる……ところです」
「そう? ありがとう」
カグラ様は、本当に優しく包み込んでくれる。
シーツよりも薄い、布のようであはあるが、体に触れると、まるで神殿の柱のような感触を覚える。
「そういえば……そろそろ帰らなきゃ……ダメだよね?」
「え、えぇ……」
「寂しい?」
「はい、それはもう……」
「私もだよ」
カグラ様の力がより一層強くなっているのが分かった。
「苦しい?」
「いえ……むしろ……心地いいです」
「リブラも……同じようにして」
「……はい」
私もカグラ様と同じように、抱く力を強くした。
「リブラ……約束して」
「な、何をですか……?」
「私の事……忘れないでね……」
「当たり前です、死ぬまで忘れません……」
「私も、リブラの事、一生忘れないよ」
カグラ様が力を緩めたことを感じ、私も同じようにした。
「リブラ……」
「カグラ様……」
カグラ様が顔を近づけ、私はそれを受け入れた。
お互いの唇が触れ、私たちは静止する。
息をすることが困難になるが、そんなことは構わなかった。
私たちはその静止の時間を楽しんだ。




